「ノースライト」 横山秀夫 新潮社 2019.2.18
久しぶりの横山秀夫さん。
途中から引き込まれ、グイグイ一気読み。
一級建築士の青瀬は、信濃追分へ車を走らせていた。
望まれて設計した新築の家。
〈あなた自身が住みたい家を建てて下さい〉
という不思議な依頼だった……
差し込むでもなく、降り注ぐでもなく、どこか遠慮がちに部屋を包み込む北からの光。
東の馬どの聡明さとも南の窓の陽気さとも趣の異なる、悟りを開いたかのように物静かなノースライトを
思う存分取り込んだ、浅間山を望む「木の家」を建てたのだった。
施主の一家も、新しい自宅を前人気、あんなによろこんでいたのに……
Y邸は無人だった。
そこに越してきたはずの家族の姿はなく、電話機以外に家具もない。
ただ一つ、浅間山を望むように置かれた「タウトの椅子」を除けば……。
このY邸でいったい何が起きたのかーー。
所謂ミステリーとは一線を画している。
淡々としているようで、しっとりとした趣を感じた。