ま、いいか

日々の徒然を思いつくままに。

「JR上野駅公園口」

2022-01-23 15:06:58 | 

 

「JR上野駅公園口」 柳美里 河出書房新社 2017.2.20

 

単行本初出は2014年3月。

全米図書賞「翻訳文学部門/モーガン・ジャイルズ訳」受賞。

2020年「TIMEが選ぶ今年の100冊」

 

1933年、私は「天皇」と同じ日に生まれたーー

東京オリンピックの前年、男は出稼ぎのたPに上野駅に降り立った。

そして男は彷徨い続ける、生者と死者が共存するこの国を。

 

高度成長期の中、その象徴ともいえる「上野」を舞台に、福島県相馬郡(現南相馬市)出身の一人の男の生涯を通じて描かれる死者への祈り、そして日本の光と闇……

 

上野【恩賜】公園はもともと皇室のご料地で、明治から大正にかけては国家的イベントがしばしば行われ、天皇が行幸した。

ところが1923(大正12)年の関東大震災時は、最大50万人の罹災民を収容した。

宮内省から東京市に下賜され、恩賜公園となったのは、その翌年。

現在でも上野公園の博物館や美術館、日本学士院などに、天皇や皇族が訪れることが多く、そのたびに「山狩り」と呼ばれる特別清掃、すなわちホームレスの排除が行われてきた。

 

本書の最後には、3.11の津波に呑み込まれる故郷が描かれる。

常磐線は不通となり、男は帰るべき故郷を失う。

震災直後から被災した各県を回った天皇と皇后も、放射線量の高い主人公の故郷を訪れることはなかったーー

 

フクシマをはじめ、忘れてはならない様々を改めて考えさせられる。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「兵諫」 | トップ | 「噂を売る男」 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

」カテゴリの最新記事