髪結い伊三次捕物余話、読み返し。
文庫あとがきに、
伊三次で作家になった、
最後まで伊三次を書き続けたい、
というような一文があった。
その言葉通り、ギリギリまで書き続けてくれた。
別の文庫あとがきには、
一応、捕物帳ということになっているが、
私自身には捕物帳を書いている意識がないし、
いわゆる時代臭を払拭しようと努めている、
とも、あった。
たまたま単行本がなくて文庫を借りたのだが、
あとがきを読めて良かった♪
とりあえず、第一作から順に
「幻の声」
「紫紺のつばめ」
「さらば深川」
木戸番の古女房おつるの言葉。
『あたしは不幸に見舞われて、どんどん落ち込む人よりも、それならそれで仕方がないと、さっさと別の道を歩いて行く人の方が好きですよ』
「さんだらぼっち」
「黒くぬれ」
文吉が言う。
『普段は女房の愚痴をこぼしているくせに、結局最後は女房の所へ戻って行くのさ。それがいっち丸く収まる方法だと男は知っているんだ。たまに曲げて女房の所を飛び出す奴もいるが、誰も一途な男だと褒めはしない。馬鹿者と笑われるだけさ』
この5作目で、難産の末に伊与太が生まれた。
さて、「黒くぬれ」は、
矢沢永吉の「黒くぬりつぶせ」と
ストーンズの「paint it black」から、だって。
個人的に親しみが湧く。
文吉の話し言葉が、めっぽういい。
しっかり調べた上での言葉遣いたろうな。