「ぐるくん」のひとりごと

大好きな海のこと、沖縄のこと。 また今関心を持っている韓国語の学習、韓ドラ・レビューなど気ままな雑記

<773>『朱蒙』考察  ③鉄製武器

2009年04月16日 | 韓国ドラマ
 チュモンが率いる「多勿(タムル)軍」が精鋭ぞろいとは、少ない兵で「漢」の軍勢を全滅させたのは、奇襲などの優れた戦略の他に、それまで無敵を誇る漢の「鉄騎軍」の武器に劣らない強い剣、「鋼鉄剣」を得た事にある。

  ←正に歯が立たない「漢」の鉄騎兵だった

 扶余王クムワも、長年、漢の剣に負けない剣を得るため、「鉄器工房」を設け、モパルモ親方に研究をさせていた。
 

 チュモンも思いは同じで、「鋼鉄剣」の技術開発を支援した。

 ドラマでは、見事「鋼鉄剣」を作り上げ、更には鎧を打ち抜く矢じりや、矢をも防ぐ鉄製でありながら軽い鎧の開発を果たしている。

 チュモンの信頼も厚く、「高句麗」建国後は、「軍器博士(クンギバクサ)」の任に就いていた。


 果たして、紀元前のチュモンの時代に、これほど見事な鉄製武器、武具が、史実として存在したのだろうか? 

 チュモンのあまりにかっこいい甲冑姿に、逆に疑いの目を向けるぐるくんw

 

  

 古代から西洋とは全く違う製鉄法が、中国を中心に行われていたそうだ。

 青銅器製作の技術や陶器の製作が高度に発達していたから中国では、優れた炉の技術を持っており、紀元前からすでに鉄を液体、銑鉄とする事が出来たからだそうだ。

 「木炭」と「鉄鉱石」を炉の中で加熱し、酸化鉄を還元させ鉄に変える訳だが、炉内温度が1200度以上になると、炭素の一部が鉄中に侵入するそうだ。

 すると鉄の融点が下がり、鉄は融解を始める。

 炭素含有量が3~5%程度まで上昇すると、鉄は完全に液体となる。(この溶けた鉄が銑鉄)

 この銑鉄は、炭素含有量が高い「鋳鉄」となる。

 このように、鉄に過剰な炭素を与えて「鋳鉄」とする製鉄法を「間接製鉄法」と呼ぶそうだ。

 この製鉄法は、現在における鉄生産の大部分を占める高炉製鉄と原理的には一緒だそうで、古代中国の製鉄技術の優秀さを物語っていると言う。

 古代中国ではこうして大量生産された「鋳鉄」によって、鋳造(鋳型に鉄を流し込んで冷やし固め、金属を成型する)による武器の大量生産を行っていた。

 紀元前5世紀頃には、鋳鉄(銑鉄)の脆さを克服する為、焼き鈍(なま)し技術も発見された。

 紀元前3~-2世紀頃より、皮鞴に替わり手押しor足踏フイゴが登場して、炉内温度を更に高温とする事ができるようになり、品質が上がった。

 しかし、「鋳鉄」はとても脆く,焼入れ焼き戻しによって硬度を上げる事も出来ない為、武器の材料としては問題が多かった。

 この点を解決する事こそが、扶余やチュモンが求めた「鋼鉄剣」だったんだなぁ~。

 
 この「鋳鉄」から「鋼」を造る為の工程、秘法が、「炒鋼(チョガン)法」だった。

 つまり、再溶融で銑鉄中の炭素を酸化脱炭して、鍛冶加工の可能な硬くて粘い低炭素「鋼(はがね)」を作る方法だ。

 こうして、鋳造製の硬いが脆いと言う弱点は、刃部を脱炭する事によって克服された。

 この「間接製鋼法」が、前漢中期以降の優秀な鉄製武器を生み出し、また実用農工具などにも鉄器が使われ始めるようになった歴史がある。

 つまり、「漢」時代に製鉄技術は、完成の域に達していたと言えるそうだ。

 更に後漢時代になると、「百錬鋼」と言われる反復鍛打の鋼、つまり鍛えた鋼が出現するようになる。

 この「炒鋼法」と同様の原理による製鋼が、西洋で始まるのは18世紀を待つ事になる。
 
 史実から見ると、チュモンの時代に「鋼」の剣が戦闘で使われたと言うのは、少々疑わしいが・・・モパルモ親方が、「炒鋼(チョガン)法」の先駆者だったと・・・敬意を表して思っておく事にするw


 『太王四神記』でも高句麗鍛治屋(デジャンカン)村はその舞台の一つだった。

 中国遠征において、なくてはならない重要な武器開発や生産を担当してた点は、「鉄器工房」と同じだ。

 この「高句麗」の製鉄技術は、その後、日本にも影響をもたらす。

 「韓鐵(からてつ)」と言う言葉が物語るように、『古事記』にも、渡来系製鉄工人の事を「韓鍛(からかぬち)」と呼んでる記述がある。

 つまり彼らが、当時、大陸最新の技術を持っていたのだろう。


 さて、もう一つ、ぐるくんが( →_→)ジロ!と疑っている物がある。

 それは「消炭」。

 そもそも「消炭」は、ヘモスが率いるタムル軍が暖をとる時に、焚き火の中に投げ入れ、火勢をあげる為に作っていたものだった。

 チュモンたちは、それを作戦に利用したり、改良して威力を増していく。

 戦場で、兵士たちのおしっこを急遽集めて、「消炭」を急造するシーンがあったが、おしっこから黒色火薬の原料である硝石(硝酸カリウム)が必要なのだと言う事は理解したが、すぐにはできないよね?

 「この箱以外で放尿する事を禁止し、掟を破った者には厳罰に処する」と訓示され、キョトン顔で、順番に並ぶ兵士の姿にうけながら、またまたドラマのストーリーから外れていたw

 史実では、「火薬」は中国で6世紀~7世紀ごろに発明されたと言われているから・・・この「消炭」の存在は、ドラマだけのものと思われる。

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