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2010年12月20日(月)
幕切れは1月13日の党大会
総理になって、何かを成し遂げたかったわけではない。ただ単に、「総理になりたかった」だけの男の短い夢が、まもなく終焉を迎える。
首相に対し、公然と"宣戦布告"したのは、まもなく強制起訴されるはずの小沢一郎元幹事長だ。
「このままだと、地方が火を噴いて民主党政権は崩壊する。党執行部に対し、年内の両院議員総会開催を求めるべきだ」
小沢氏は12月7日、東京・赤坂の中華料理店で開かれた中堅議員らとの会合で、そう警告した。
いま民主党の議員たちは、「怖くて地元へ帰れない」(新人議員)などと、頭を抱えている。内政・外交、あらゆる面で無為無策な菅政権に、一般有権者のみならず、民主党の支持者たちまでが怒り始めたからだ。
それを見て取った小沢氏は、とうとう倒閣へと動き始めた。会合で小沢氏は、こうも語ったという。
「政権交代は、オレと鳩山(由紀夫前首相)、輿石(東・参院議員会長)でやった。オレたちは力を貸すと言っているのに、いま党の執行部にいるのは輿石だけ。しかも、実際には排除されている。(12月12日の)茨城県議選は惨敗するだろう。これは完全に菅政権のせいだ。1月13日の党大会で大騒ぎになる前に、年内の両院議員総会で"総括"したほうがいい」
ここで言う「総括」とは、すなわち「菅首相への退陣勧告」に他ならない。小沢氏は近しい議員らの口を通し、「自分たち(小沢一派)の処遇を考え直せ。でなければ、すぐにでも倒閣運動を起こす」と、菅首相に対して強烈な"脅し"をかけたということである。
本来、刑事被告人になる寸前の政治家が何を言おうと、それが影響力を持つことなどあり得ない。
「負け犬の遠吠えか」
普通の首相なら、嘲笑うところだ。しかし、菅政権は違う。先の国会での法案成立率が史上最低レベル、という不名誉な結果が示す通り、「この政権は何もできない」という空気が日本中に蔓延している。そんな求心力を失った首相では、小沢氏のような"猛獣"を屈服させることはできない。
こうして、あるシナリオがいよいよ現実味を帯びてきた。菅首相の「年明け退陣」である。民主党幹部の一人がこう語る。
「菅首相は半ばヤケになっていて、『追い詰められて辞任するくらいなら、解散して総選挙をやる』と周囲に言い放っている。しかし、それは無理。菅首相にほとんど選択肢は残されていない。身内の議員にも国民にも見放されているのだから、辞める以外に道がない」
小沢を切る度胸もなく
〔PHOTO〕gettyimages
菅首相には当初、か細いながらも、辛うじて選べる「3つの道」があった。
まずは、参院で問責決議を受けた仙谷由人官房長官、馬淵澄夫国交相らのクビを切り、「内閣改造」を目指すという道である。
菅政権のウィークポイントは、参院の「ねじれ」により、まともにやったら国会で法案がほとんど通らないこと。仙谷氏らを更迭すれば、野党が軟化して国会の審議に応じる可能性が出てくる。政権の安定化にとっては、もっとも有効な選択肢と言える。
だが、首相にはそれすらできない。
「当の仙谷氏や、その影響下にある前原誠司外相のグループが、改造に猛反発しています。それに菅首相は実務に自信がないので、仙谷氏を切っても代わりがいない。結局、仙谷氏と心中するしかない」(前出・民主党幹部)
仙谷氏のクビ切りができないというなら、野党が求めるもう一つの懸案、小沢氏の国会招致を強行する「第2の道」もある。しかし、これも実現は難しい。
「頑強に招致に応じない小沢氏を、仙谷氏などは最終的に党から除名する気でいた。ところが、菅首相がこれを躊躇っている。小沢氏を除名すれば、党が真っ二つに割れて収拾がつかなくなる。小沢派議員らが『その時は民主党が崩壊する時だ』と恫喝していることもあり、菅首相がすっかりビビってしまっているのです」(民主党ベテラン議員)
仙谷氏のクビも切れない、小沢氏も追放できない・・・迷路に入り込んだ首相が縋る「第3の道」は、いわゆる「大連立」だ。
首相は11月中旬に、与謝野馨元財務相と会談。その際、自民党など野党との連携に向け、与謝野氏に対して橋渡し役を求めた。
12月8日には、自民党の長老・森喜朗元首相とも面談。同日には、政界フィクサーの渡辺恒雄・読売新聞グループ本社会長が、自民の谷垣禎一総裁と極秘会談し、「民主党との連立の道はないか」と打診している。
菅首相にしてみれば、政権延命のため、もはや藁にも縋りたい気持ちだろう。だがそれもどうやら、無駄骨に終わりそうだ。民主党中堅代議士がこう語る。
「実現の可能性ゼロです。私は自民党の議員たちともよく話していますが、『菅はウソをついてすぐ裏切る。まったく信用できない。大連立なんて話に乗るのは、自民党でも居場所がない、森氏らロートルだけだ。連立などあり得ない』と、全否定されてしまいました」
よほど焦っているのか、菅首相は"離婚"したはずの社民党との連立復活まで仄めかし、周囲を呆れさせた。仮に社民党と再連立しても、鳩山政権がそれで行き詰まったように、普天間基地の移転など安全保障問題で、米国との関係悪化は必至。もちろん、首相が楽しみにしているという来年5月の訪米もパーになる。
気付いていないのは本人だけ
改造、小沢追放、大連立、すべて不可能・・・打つ手がなくなった以上、首相自身が言い放っているように、衆院を解散し、国民に信を問うべきなのか? だが、それもやはり無理なのだ。
「解散という伝家の宝刀は、かつての小泉純一郎元首相のように、本当に実力のある総理にしかできません。20年前、私は当時の海部俊樹首相から、『解散をしたい』と相談されましたが、『本当にあなたにできるんですか?』と思わず聞き返したことがあります。その頃の自民党は小沢氏らの旧経世会が完全に牛耳っていて、結局、海部さんは解散することができず、身内によって引き摺り下ろされました。菅首相も、同じような状況に見えますね」(政治評論家・三宅久之氏)
つまり、どう足掻いても"出口なし"。論理的な帰結として、菅首相はどのみち、退陣する以外に選択肢はなくなっているのである。
「最終的なトドメとなるのは、1月13日の民主党大会でしょう。この日、全国から上京してくる地方の党幹部らから、『辞めてくれ』コールが一斉に沸き起こり、否応なく、退陣を余儀なくされる。地方の流れは『菅を続投させたのは間違いだった』と、3ヵ月前とはまったく逆になっている。気付いていないのは本人だけです」(前出・民主党幹部)
ついこの間まで身内だと思っていた者たちが、敵陣に回って自分の城を取り囲んでいる・・・。菅首相の気分は、ちょうど「四面楚歌」を嘆いた項羽のようなものかもしれない。
ただ、「虞や虞や、汝を如何せん」と、愛妾の行く末を嘆いた項羽と違い、菅首相の周辺に、表向きそういう可憐な存在は見当たらない。いるのは、「アンタが決断すればいいの!」と、尻を叩き続けているという猛妻の伸子夫人だけだ。
そういう意味で菅首相の結末は、「史記」に残るような劇的ドラマも特になく、ごく淡々とした、あっけない幕切れになるだろう。
いずれにしても、菅政権の崩壊がすでに明らかな以上、焦点となるのは「次が誰か」ということだ。
民主党内でいま、名前が挙がるのはこの二人だ。前原誠司外相と、岡田克也幹事長である。
前原、岡田両氏はともに民主党の代表経験者。民主党の長老・渡部恒三最高顧問が、「(たとえ鳩山・菅・小沢が倒れても)民主党には岡田や前原がいる」と誇らしげに語っていたこともある。総じて政界での経験不足が目立つ民主党の中では、間違いなく、総理候補と言える存在だ。
前原氏の強みは、いまでは民主党政権の最高権力者と言って過言ではない、仙谷氏のイチオシ候補だということである。
「菅政権が倒れた後は前原氏に後を継がせ、自分の影響力を残す、というのが仙谷氏のシナリオ。彼らは、枝野幸男幹事長代理らと同じグループ(凌雲会)に属していますが、最近、毎週木曜日にグループの定例会を開くようになり、あらためて結束を確認しあっています」(全国紙政治部記者)
さらに前原氏には、京セラの稲盛和夫名誉会長という強力な後ろ盾がある。稲盛氏は民主党のパトロンとして知られるが、京都選出の前原氏は特にお気に入りで、先月、京都で小沢氏、鳩山氏と会談した際には、「菅の次は前原でどうか」と、小沢氏に打診したとも言われている。
また、菅政権の大きな悩みは、菅・仙谷のツートップが公明党の支持母体・創価学会から毛嫌いされていることだったが、前原氏は夫人が創価女子短大卒とされ、学会との関係は比較的良好。「ねじれ国会」解消に向けた公明党との連携がしやすくなる・・・という。
この二人の他にいないんだから
一方、その対抗馬と目される岡田氏は、渡部恒三氏ら長老の間で、「次は岡田君に」という声が多い。
「渡部氏はずっと前原氏も推していましたが、その後見役の仙谷氏が尖閣問題でミソをつけ、前原氏自身も外相としての対応に疑問符がついたため、『彼らは1回お休みだろう。やっぱり岡田君ではないか』などと話しています。仙谷氏が更迭された場合、次の官房長官に彼を推す声もあって、最終的には岡田氏で来年の統一地方選を戦うしかない、という声が増えています」(別の民主党中堅代議士)
岡田氏の売りは、「原理主義者」と揶揄されるほど、カネや不正に対して厳格であることと、そこから来る安定感だ。ちなみに'04年に当時の菅代表が、年金未納問題で引責辞任した後、リリーフで登板したのも岡田氏だった。
そして岡田氏と前原氏の違いは、現政権を牛耳っている仙谷大官房長官との距離感だ。
「尖閣ビデオの公開の件で、岡田氏には官邸からまったく情報が入らず、『なんで公開できないんだ?』と不満を漏らしていたというのは周知の事実。岡田氏は『なんでもかんでも面倒事を押し付けてくる。情報も何も渡さないのに、どういうことだ』と、仙谷官邸に不信感を抱いています」(民主党副幹事長の一人)
岡田氏は幹事長として、小沢氏の国会招致を進めるべき立場にあったが、ロクに小沢氏と交渉もせず、事態が進展しないため、「岡田のサボタージュでは」という見方も党内で出ていた。そうしたことから、小沢系の一部議員からは、こんな声も上がっている。
「かつて岡田氏が旧通産省から政界入りした時、そのお膳立てをしたのは小沢氏です。だから岡田氏は、もともとは"小沢派"の一人でもあり、実際には頭が上がりません。したがって、あくまで『岡田氏が頭を下げるなら』という条件付きですが、小沢グループが彼を次期総理として推すこともあり得ます」(小沢派中堅)
前述のように、いまや民主党政権を取り巻く環境は、菅首相が小沢氏を代表選で破った3ヵ月前とは激変した。当時、合い言葉だった「脱小沢」はすっかり風化し、いまでは「反菅・反仙谷」の空気が蔓延している。
こうした中では、仙谷氏直系の前原氏より、どこの党派にも属さないニュートラルな岡田氏のほうがやや有利、と見る向きもある。
果たして、前原か、岡田か---。民主党はどちらかを押し立て、出直しをして国民からの信頼回復を図るしかない。ただし、組織の崩壊過程に差し掛かっている民主党にとっては、この菅首相からの権力移譲が、果たしてスムーズにいくのかどうかという大きな関門が待ち受けている。
というのも、前原、岡田という選択肢は、あくまで、「他にもうめぼしい人間がいないから」であり、民主党の国会議員ですら、この二人のどちらかなら、政権を立て直せるとは思っていないからだ。
「鳩・菅が倒れたから、次は前原か岡田か、などという代表経験者のたらい回しでは、どうにもならない。国民もウンザリしているでしょうし、約410人の党所属国会議員も『これじゃまた同じことになる』と思っている。前原、岡田では、結局何も変わらない」(奥村展三代議士)
また小沢にやられる
前原、岡田両氏が次期総理の有力候補なのは、あくまで消去法的選択に過ぎない。だから、党内では誰もが「次は彼ら」だと認めながら、誰一人、期待してもいないのである。
「前原さんは、口だけの人です。八ッ場ダムでもJAL再建でも、尖閣事件の対応でも、最初はカッコつけて威勢のいいことを言いますが、事態がややこしくなると、保身を考えてすぐ逃げる。後先のことを考えずに暴走する姿は、2・26事件の青年将校みたいです。『この人についていったら、オレら全滅するな』と、下の人間はみんな思っていますよ」(民主党若手議員)
一方で、岡田氏の評判も決して芳しくない。というより、最悪かもしれない。菅グループ所属の若手議員がこう語る。
「最近、岡田氏と新人議員の懇談会があったのですが、ガッカリしました。新人が『党への逆風が強過ぎて辛い』と言うと、『そんなの、君らが頑張らなきゃ』と一言。他に、いろいろと執行部に対する意見が出たのですが、『オレはちゃんとやってる』だとか、『オレがマニフェストに書いたわけじゃない』とか、何でも他人事でした。こういう人に、トップは無理でしょう」
この有り様では、菅首相が退陣しても、民主党政権はますます混乱するのが目に見えている。民主党が潰れるのは勝手だが、それはすなわち、日本という国家の低迷に繋がる。いったい、どうすればいいのか。
世論の一部で、復活の待望論が囁かれ始めた小沢氏は、前述の会合において、「オレはすぐに動けない。だからお前らが頑張れ」と、自身が強制起訴によって手足を縛られていることを認めつつ、
「決して望ましい選択肢ではないが、"非常手段"もないではない」と話したという。
この「非常手段」とは何なのか。小沢グループ幹部の一人がこう話す。
「民主党の問題は、すべてにおいて経験不足なこと。海江田万里経財相や、原口一博前総務相を推す声もありますが、やはり経験不足は否めない。だったら、外に人材を求めるしかない。たとえば、みんなの党の渡辺喜美代表や、たちあがれ日本の与謝野氏です」
12月8日、永田町近くの寿司店で唐突に開かれた会合が、物議を醸した。この夜、小沢氏は鳩山前首相と会食したが、その場には前首相の弟で、いまは無所属の鳩山邦夫元総務相と、新党改革の舛添要一氏が同席していたからだ。
「小沢一郎という政治家の特色は、政権や政党に愛着がなく、あくまで"道具"として見ていることです。仮に小沢氏が党を追放されたり、解散総選挙になって小沢チルドレンが壊滅したりすれば、小沢氏は終わり。その前に動かざるを得ない。その時には、別の道具、皆が『えっ』と思うような"ダミー"を担いで、復権を狙いに来るでしょう」(政治アナリスト・伊藤惇夫氏)
すべては「菅のその後」に向けて動き出した。少なくともこの流れが、止まることがないことだけは確かだ。
立身出世を願う貧乏な青年が、ある日、出会った一人の道士に枕を借りて眠ったところ、夢の中で、世の栄華と富貴、そして裏切りや失脚といった、人生のすべてを経験した。青年が目覚めた時、眠る前に炊いていたアワは、炊き上がってもいなかった。青年は栄枯盛衰の儚さを知り、納得して故郷に帰っていく。いわゆる「邯鄲の夢」である。
政界進出以来、ひたすら総理になることだけを目指し、それ以外は何もなかった男の「菅さんの夢」はこれで終わりを迎える。次期総理には、そんな一人よがりで身勝手な夢ではなく、きちんと国民とともに夢を見ることができる、まともな人物を望みたい
2010年12月20日(月)
幕切れは1月13日の党大会
総理になって、何かを成し遂げたかったわけではない。ただ単に、「総理になりたかった」だけの男の短い夢が、まもなく終焉を迎える。
首相に対し、公然と"宣戦布告"したのは、まもなく強制起訴されるはずの小沢一郎元幹事長だ。
「このままだと、地方が火を噴いて民主党政権は崩壊する。党執行部に対し、年内の両院議員総会開催を求めるべきだ」
小沢氏は12月7日、東京・赤坂の中華料理店で開かれた中堅議員らとの会合で、そう警告した。
いま民主党の議員たちは、「怖くて地元へ帰れない」(新人議員)などと、頭を抱えている。内政・外交、あらゆる面で無為無策な菅政権に、一般有権者のみならず、民主党の支持者たちまでが怒り始めたからだ。
それを見て取った小沢氏は、とうとう倒閣へと動き始めた。会合で小沢氏は、こうも語ったという。
「政権交代は、オレと鳩山(由紀夫前首相)、輿石(東・参院議員会長)でやった。オレたちは力を貸すと言っているのに、いま党の執行部にいるのは輿石だけ。しかも、実際には排除されている。(12月12日の)茨城県議選は惨敗するだろう。これは完全に菅政権のせいだ。1月13日の党大会で大騒ぎになる前に、年内の両院議員総会で"総括"したほうがいい」
ここで言う「総括」とは、すなわち「菅首相への退陣勧告」に他ならない。小沢氏は近しい議員らの口を通し、「自分たち(小沢一派)の処遇を考え直せ。でなければ、すぐにでも倒閣運動を起こす」と、菅首相に対して強烈な"脅し"をかけたということである。
本来、刑事被告人になる寸前の政治家が何を言おうと、それが影響力を持つことなどあり得ない。
「負け犬の遠吠えか」
普通の首相なら、嘲笑うところだ。しかし、菅政権は違う。先の国会での法案成立率が史上最低レベル、という不名誉な結果が示す通り、「この政権は何もできない」という空気が日本中に蔓延している。そんな求心力を失った首相では、小沢氏のような"猛獣"を屈服させることはできない。
こうして、あるシナリオがいよいよ現実味を帯びてきた。菅首相の「年明け退陣」である。民主党幹部の一人がこう語る。
「菅首相は半ばヤケになっていて、『追い詰められて辞任するくらいなら、解散して総選挙をやる』と周囲に言い放っている。しかし、それは無理。菅首相にほとんど選択肢は残されていない。身内の議員にも国民にも見放されているのだから、辞める以外に道がない」
小沢を切る度胸もなく
〔PHOTO〕gettyimages
菅首相には当初、か細いながらも、辛うじて選べる「3つの道」があった。
まずは、参院で問責決議を受けた仙谷由人官房長官、馬淵澄夫国交相らのクビを切り、「内閣改造」を目指すという道である。
菅政権のウィークポイントは、参院の「ねじれ」により、まともにやったら国会で法案がほとんど通らないこと。仙谷氏らを更迭すれば、野党が軟化して国会の審議に応じる可能性が出てくる。政権の安定化にとっては、もっとも有効な選択肢と言える。
だが、首相にはそれすらできない。
「当の仙谷氏や、その影響下にある前原誠司外相のグループが、改造に猛反発しています。それに菅首相は実務に自信がないので、仙谷氏を切っても代わりがいない。結局、仙谷氏と心中するしかない」(前出・民主党幹部)
仙谷氏のクビ切りができないというなら、野党が求めるもう一つの懸案、小沢氏の国会招致を強行する「第2の道」もある。しかし、これも実現は難しい。
「頑強に招致に応じない小沢氏を、仙谷氏などは最終的に党から除名する気でいた。ところが、菅首相がこれを躊躇っている。小沢氏を除名すれば、党が真っ二つに割れて収拾がつかなくなる。小沢派議員らが『その時は民主党が崩壊する時だ』と恫喝していることもあり、菅首相がすっかりビビってしまっているのです」(民主党ベテラン議員)
仙谷氏のクビも切れない、小沢氏も追放できない・・・迷路に入り込んだ首相が縋る「第3の道」は、いわゆる「大連立」だ。
首相は11月中旬に、与謝野馨元財務相と会談。その際、自民党など野党との連携に向け、与謝野氏に対して橋渡し役を求めた。
12月8日には、自民党の長老・森喜朗元首相とも面談。同日には、政界フィクサーの渡辺恒雄・読売新聞グループ本社会長が、自民の谷垣禎一総裁と極秘会談し、「民主党との連立の道はないか」と打診している。
菅首相にしてみれば、政権延命のため、もはや藁にも縋りたい気持ちだろう。だがそれもどうやら、無駄骨に終わりそうだ。民主党中堅代議士がこう語る。
「実現の可能性ゼロです。私は自民党の議員たちともよく話していますが、『菅はウソをついてすぐ裏切る。まったく信用できない。大連立なんて話に乗るのは、自民党でも居場所がない、森氏らロートルだけだ。連立などあり得ない』と、全否定されてしまいました」
よほど焦っているのか、菅首相は"離婚"したはずの社民党との連立復活まで仄めかし、周囲を呆れさせた。仮に社民党と再連立しても、鳩山政権がそれで行き詰まったように、普天間基地の移転など安全保障問題で、米国との関係悪化は必至。もちろん、首相が楽しみにしているという来年5月の訪米もパーになる。
気付いていないのは本人だけ
改造、小沢追放、大連立、すべて不可能・・・打つ手がなくなった以上、首相自身が言い放っているように、衆院を解散し、国民に信を問うべきなのか? だが、それもやはり無理なのだ。
「解散という伝家の宝刀は、かつての小泉純一郎元首相のように、本当に実力のある総理にしかできません。20年前、私は当時の海部俊樹首相から、『解散をしたい』と相談されましたが、『本当にあなたにできるんですか?』と思わず聞き返したことがあります。その頃の自民党は小沢氏らの旧経世会が完全に牛耳っていて、結局、海部さんは解散することができず、身内によって引き摺り下ろされました。菅首相も、同じような状況に見えますね」(政治評論家・三宅久之氏)
つまり、どう足掻いても"出口なし"。論理的な帰結として、菅首相はどのみち、退陣する以外に選択肢はなくなっているのである。
「最終的なトドメとなるのは、1月13日の民主党大会でしょう。この日、全国から上京してくる地方の党幹部らから、『辞めてくれ』コールが一斉に沸き起こり、否応なく、退陣を余儀なくされる。地方の流れは『菅を続投させたのは間違いだった』と、3ヵ月前とはまったく逆になっている。気付いていないのは本人だけです」(前出・民主党幹部)
ついこの間まで身内だと思っていた者たちが、敵陣に回って自分の城を取り囲んでいる・・・。菅首相の気分は、ちょうど「四面楚歌」を嘆いた項羽のようなものかもしれない。
ただ、「虞や虞や、汝を如何せん」と、愛妾の行く末を嘆いた項羽と違い、菅首相の周辺に、表向きそういう可憐な存在は見当たらない。いるのは、「アンタが決断すればいいの!」と、尻を叩き続けているという猛妻の伸子夫人だけだ。
そういう意味で菅首相の結末は、「史記」に残るような劇的ドラマも特になく、ごく淡々とした、あっけない幕切れになるだろう。
いずれにしても、菅政権の崩壊がすでに明らかな以上、焦点となるのは「次が誰か」ということだ。
民主党内でいま、名前が挙がるのはこの二人だ。前原誠司外相と、岡田克也幹事長である。
前原、岡田両氏はともに民主党の代表経験者。民主党の長老・渡部恒三最高顧問が、「(たとえ鳩山・菅・小沢が倒れても)民主党には岡田や前原がいる」と誇らしげに語っていたこともある。総じて政界での経験不足が目立つ民主党の中では、間違いなく、総理候補と言える存在だ。
前原氏の強みは、いまでは民主党政権の最高権力者と言って過言ではない、仙谷氏のイチオシ候補だということである。
「菅政権が倒れた後は前原氏に後を継がせ、自分の影響力を残す、というのが仙谷氏のシナリオ。彼らは、枝野幸男幹事長代理らと同じグループ(凌雲会)に属していますが、最近、毎週木曜日にグループの定例会を開くようになり、あらためて結束を確認しあっています」(全国紙政治部記者)
さらに前原氏には、京セラの稲盛和夫名誉会長という強力な後ろ盾がある。稲盛氏は民主党のパトロンとして知られるが、京都選出の前原氏は特にお気に入りで、先月、京都で小沢氏、鳩山氏と会談した際には、「菅の次は前原でどうか」と、小沢氏に打診したとも言われている。
また、菅政権の大きな悩みは、菅・仙谷のツートップが公明党の支持母体・創価学会から毛嫌いされていることだったが、前原氏は夫人が創価女子短大卒とされ、学会との関係は比較的良好。「ねじれ国会」解消に向けた公明党との連携がしやすくなる・・・という。
この二人の他にいないんだから
一方、その対抗馬と目される岡田氏は、渡部恒三氏ら長老の間で、「次は岡田君に」という声が多い。
「渡部氏はずっと前原氏も推していましたが、その後見役の仙谷氏が尖閣問題でミソをつけ、前原氏自身も外相としての対応に疑問符がついたため、『彼らは1回お休みだろう。やっぱり岡田君ではないか』などと話しています。仙谷氏が更迭された場合、次の官房長官に彼を推す声もあって、最終的には岡田氏で来年の統一地方選を戦うしかない、という声が増えています」(別の民主党中堅代議士)
岡田氏の売りは、「原理主義者」と揶揄されるほど、カネや不正に対して厳格であることと、そこから来る安定感だ。ちなみに'04年に当時の菅代表が、年金未納問題で引責辞任した後、リリーフで登板したのも岡田氏だった。
そして岡田氏と前原氏の違いは、現政権を牛耳っている仙谷大官房長官との距離感だ。
「尖閣ビデオの公開の件で、岡田氏には官邸からまったく情報が入らず、『なんで公開できないんだ?』と不満を漏らしていたというのは周知の事実。岡田氏は『なんでもかんでも面倒事を押し付けてくる。情報も何も渡さないのに、どういうことだ』と、仙谷官邸に不信感を抱いています」(民主党副幹事長の一人)
岡田氏は幹事長として、小沢氏の国会招致を進めるべき立場にあったが、ロクに小沢氏と交渉もせず、事態が進展しないため、「岡田のサボタージュでは」という見方も党内で出ていた。そうしたことから、小沢系の一部議員からは、こんな声も上がっている。
「かつて岡田氏が旧通産省から政界入りした時、そのお膳立てをしたのは小沢氏です。だから岡田氏は、もともとは"小沢派"の一人でもあり、実際には頭が上がりません。したがって、あくまで『岡田氏が頭を下げるなら』という条件付きですが、小沢グループが彼を次期総理として推すこともあり得ます」(小沢派中堅)
前述のように、いまや民主党政権を取り巻く環境は、菅首相が小沢氏を代表選で破った3ヵ月前とは激変した。当時、合い言葉だった「脱小沢」はすっかり風化し、いまでは「反菅・反仙谷」の空気が蔓延している。
こうした中では、仙谷氏直系の前原氏より、どこの党派にも属さないニュートラルな岡田氏のほうがやや有利、と見る向きもある。
果たして、前原か、岡田か---。民主党はどちらかを押し立て、出直しをして国民からの信頼回復を図るしかない。ただし、組織の崩壊過程に差し掛かっている民主党にとっては、この菅首相からの権力移譲が、果たしてスムーズにいくのかどうかという大きな関門が待ち受けている。
というのも、前原、岡田という選択肢は、あくまで、「他にもうめぼしい人間がいないから」であり、民主党の国会議員ですら、この二人のどちらかなら、政権を立て直せるとは思っていないからだ。
「鳩・菅が倒れたから、次は前原か岡田か、などという代表経験者のたらい回しでは、どうにもならない。国民もウンザリしているでしょうし、約410人の党所属国会議員も『これじゃまた同じことになる』と思っている。前原、岡田では、結局何も変わらない」(奥村展三代議士)
また小沢にやられる
前原、岡田両氏が次期総理の有力候補なのは、あくまで消去法的選択に過ぎない。だから、党内では誰もが「次は彼ら」だと認めながら、誰一人、期待してもいないのである。
「前原さんは、口だけの人です。八ッ場ダムでもJAL再建でも、尖閣事件の対応でも、最初はカッコつけて威勢のいいことを言いますが、事態がややこしくなると、保身を考えてすぐ逃げる。後先のことを考えずに暴走する姿は、2・26事件の青年将校みたいです。『この人についていったら、オレら全滅するな』と、下の人間はみんな思っていますよ」(民主党若手議員)
一方で、岡田氏の評判も決して芳しくない。というより、最悪かもしれない。菅グループ所属の若手議員がこう語る。
「最近、岡田氏と新人議員の懇談会があったのですが、ガッカリしました。新人が『党への逆風が強過ぎて辛い』と言うと、『そんなの、君らが頑張らなきゃ』と一言。他に、いろいろと執行部に対する意見が出たのですが、『オレはちゃんとやってる』だとか、『オレがマニフェストに書いたわけじゃない』とか、何でも他人事でした。こういう人に、トップは無理でしょう」
この有り様では、菅首相が退陣しても、民主党政権はますます混乱するのが目に見えている。民主党が潰れるのは勝手だが、それはすなわち、日本という国家の低迷に繋がる。いったい、どうすればいいのか。
世論の一部で、復活の待望論が囁かれ始めた小沢氏は、前述の会合において、「オレはすぐに動けない。だからお前らが頑張れ」と、自身が強制起訴によって手足を縛られていることを認めつつ、
「決して望ましい選択肢ではないが、"非常手段"もないではない」と話したという。
この「非常手段」とは何なのか。小沢グループ幹部の一人がこう話す。
「民主党の問題は、すべてにおいて経験不足なこと。海江田万里経財相や、原口一博前総務相を推す声もありますが、やはり経験不足は否めない。だったら、外に人材を求めるしかない。たとえば、みんなの党の渡辺喜美代表や、たちあがれ日本の与謝野氏です」
12月8日、永田町近くの寿司店で唐突に開かれた会合が、物議を醸した。この夜、小沢氏は鳩山前首相と会食したが、その場には前首相の弟で、いまは無所属の鳩山邦夫元総務相と、新党改革の舛添要一氏が同席していたからだ。
「小沢一郎という政治家の特色は、政権や政党に愛着がなく、あくまで"道具"として見ていることです。仮に小沢氏が党を追放されたり、解散総選挙になって小沢チルドレンが壊滅したりすれば、小沢氏は終わり。その前に動かざるを得ない。その時には、別の道具、皆が『えっ』と思うような"ダミー"を担いで、復権を狙いに来るでしょう」(政治アナリスト・伊藤惇夫氏)
すべては「菅のその後」に向けて動き出した。少なくともこの流れが、止まることがないことだけは確かだ。
立身出世を願う貧乏な青年が、ある日、出会った一人の道士に枕を借りて眠ったところ、夢の中で、世の栄華と富貴、そして裏切りや失脚といった、人生のすべてを経験した。青年が目覚めた時、眠る前に炊いていたアワは、炊き上がってもいなかった。青年は栄枯盛衰の儚さを知り、納得して故郷に帰っていく。いわゆる「邯鄲の夢」である。
政界進出以来、ひたすら総理になることだけを目指し、それ以外は何もなかった男の「菅さんの夢」はこれで終わりを迎える。次期総理には、そんな一人よがりで身勝手な夢ではなく、きちんと国民とともに夢を見ることができる、まともな人物を望みたい
http://www.the-journal.jp/contents/hirano/2010/12/33.html#more
拝啓 ご無沙汰しています。臨時国会が終わって、テレビでの様子をうかがうと随分とお元気そうで何よりです。
電波料金オークション? を諦めたようですが、さぞかし、テレビ各社の評判がよろしいでしょう。パフォーマンスが多くなりましたね。これからは支持率も上がってくるでしょう。メディア・ファシズムで白痴化した国民が多くなりましたので期待できますね。
それにしても、私達にはない貴方の才能には驚きます。縁のあった人やお世話になった人たちを、ことごとく裏切り、嘘言を気にせず堂々と世の中を渡り、日本国の内閣総理大臣に就任されたことです。
市川房江先生は彼の世でなんと言っているでしょうか。これからは、貴方がこれまで人々に与えた嘘言や不信感がはね返ってきます。
そこで今日は、貴方が困っている問題について、かつてのように直言しますので参考にして下さい。
■貴方は憲法政治をほとんど知りませんね。
小沢さんを国会に招致して「政治と金」について説明させたいようですが、果たしてそれで支持率が上がりますか。私は小沢さんと30年以上付き合っていて、不法な金や不正な金に、一切関わっていないことを知っています。旧新生党の資金や公金を私物化したと、貴方が批判したとの報道がありましたが、自民党が、政権を奪われた恨みでとやかく言うのならともかく、貴方が目くじらを立てるのは理解できません。
小沢さんは国家と国民のため、日本に真の民主政治を実現しようと、法律の許す範囲で蓄積してきたのです。貴方と違って、小沢さんは自分に異常な政権欲がない人で、この国と他人様のためという信条で合法的な資金を大事にし、ここが日本の民主政治にとって「関ヶ原」というところで勝負したのであり、貴方のグループの人などにも配分しています。
一昨年来、麻生自民党政権が民主党に政権を渡すまいと「日干し作戦」をとり、民主党では事務所費が払えない候補者、供託金すらも準備できない人が多数いたことを、自分のことしか考えない貴方は知らなかったのでしょうね。選挙での台所役というのは大変ですよ。あの資金があったからこそ政権交代ができた、と私は確信していますよ。このことは、政治について常識のある人なら理解していただけるはずです。
さて、貴方が拘っている小沢さんの国会招致ですが、12月20日には、一時間半も二人で話したようですね。報道を見るかぎり、貴方は「政治倫理審査会」について、「何も知らないな」と感じました。
そこで、私は衆議院事務局にいるとき、政治倫理制度をつくる担当課長でしたから、基本的なことを説明しておきましょう。
1)貴方は小沢さんに「自ら審査会に出て疑惑を説明しろ」と、規程第二条の二にもとづく対応を強要したようですが、これは小沢さん本人がどう考えるかを前提にしたものです。個人の倫理観にもとづく人権として設けたものです。従って、国会とか党といった組織が強要すべきものではありません。ましてや、政治倫理制度は国会対策や政治抗争などに利用しないためにつくられたものです。従って、岡田幹事長が「国会対策のため、小沢さんに自ら政治倫理審査会に出てもらう」という発言には問題があります。それを行政の長である貴方が感情的で恐喝的強要を行っている。小沢さんの人権を侵害していると同時に、国会でやることに対する重大な干渉です。メディアや有識者の多くは「小沢排除」で、既得権で生きる人たちですから、貴方と感性は同じで「社会心理的暴力行為」といえます。
これは法律による権利を侵害するファシズムです。
2)小沢さんは貴方の強要に対して、弘中弁護団長の記者会見の要旨を説明し、「司法手続に入った段階で出席することは避けたい」と断りました、貴方は「小沢さんは拒否した」とマスコミにコメントして、「小沢悪人論」を印象づけ、さらに、あらかじめ調べてきた資料を使って、「政治倫理審査会でも裁判中に出席した議員がいる」と言い、平成八年の加藤紘一氏の例を挙げ小沢さんに出席を強要したようですね。貴方の説明は間違いですよ。加藤さんは裁判が終了したから出席したのです。貴方は言葉のすり替えの天才ですね。「裁判後」を「裁判中」と故意に言葉をすり替えたうえで、相手に強要していく。これが貴方の政治手法で、国民はこのやり方に反発しているのですよ。
3)それでも小沢さんは応じない。そこで20日の民主党役員会で、枝野幹事長代理が小沢さんの国会招致を野党と同じ「証人喚問で」と発言したようですね。貴方もその検討を指示したと報道されています。貴方たちは正気ですか。憲法による国会運営の基本をまったく知らないようですね。枝野さんも仙谷さんも弁護士でしょう。
よく司法試験をパスしたと感心します。
念のために申し上げますが、憲法の圧倒的多数説は「裁判係属中の事件で、被告や裁判官を証人喚問することは許されない」というものです。その件で国会議員を証人喚問したことはありません。例外として民間人を証人喚問した例が二件あります。
(イ)平成九年の泉井証人で、山崎拓議員に資金を渡したとの記者会見を国会の証言で確認しようというものでした。
(ロ)三木証人(山一証券元社長)は、倒産の社会的責任と政界対策が問題でした。貴方は、野党が小沢さんの証人喚問を要求しているのは、民間人の例があるから、民主党がその気になれば出来るとの意向のようですね。そんな三百代言政治は止めるべきですよ。
もし強行すれば国会の自殺行為です。小沢さんを国会に招致すべしとの世論の実体は、私に言わせれば「社会心理的暴力装置である巨大マスメディア」がつくりだしたものです。それを今、内閣総理大臣が悪用しているわけで、証人喚問となれば国会が乱用することになります。そもそも小沢さんを証人喚問する理由づけに正当性はなく、さらに憲法の運用に著しく反します。完全な、「メディア・ファシズム」です。
あっ、そうそう、大事なことを忘れていました。貴方は10月7日の起訴議決後に、小沢さんが「国会が求めるなら出席して説明する」と記者団に語ったことを取り上げて、「国民との約束を守れ」と強要したようですね。確かに小沢さんの発言は検察審査会が二度目の起訴議決を発表した後でした。しかしその後、起訴議決無効の行政訴訟などを行い現在では裁判のための調査が始まり、近々裁判が始まるという状況です。自分に都合のよい情報だけで、物事を推し進めようとすることは、為政者の資格はありませんね。もっと事態の本質と動きを理解すべきです。
最後に申し上げたいことは、貴方の失政は沢山ありますが、最大の憲法政治の汚点は「尖閣列島沖の中国漁船問題」です。逮捕した中国人船長を「沖縄地検の判断で釈放した」とは、政府の公式発表ですが、私は嘘言だと思います。釈放の理由は検察権を超えたもので、明かな憲法違反です。これを政治が放置しておくことは、わが国の国家機能が不全であることを放置しておくことと同じです。
そこでこの問題の真相を解明することが、わが国の国際的信用と国内的統治の原点と思います。貴方や仙谷官房長官の国会答弁は虚偽だと私は思います。
年明けの政治の始まりはこの問題からです。自民党も公明党も国家のあり方という基本問題ではなく、小沢国会招致という内向きの国会対策のやりとりしかできない政治家ばかりになって残念です。国会で証人喚問されなければならないのは小沢さんではありません。中国人漁船長を釈放する指揮権を発動したのは貴方かどうか、菅直人総理大臣こそ証人喚問されなければならない問題です。
12月21日(火)昨日は菅直人首相のブレーンのひとり、後房雄名古屋大学大学院教授が来室。ジュリアン・ルグランの選択と競争による公共サービスである「準市場」や名古屋市の問題点などについて聞く。夜は代々木「Roberts」で国会事務所の忘年会。菅首相と小沢一郎元幹事長の会談決裂は予想通り。菅首相が感情的になったと報じられている。根拠は小沢さんから鳩山由紀夫前首相にかけた電話内容だ。感情が前面に出てくれば認識はぶれる。会談の途中で首相はスタッフを呼び、10月7日の小沢発言をプリントして持ってこさせた。菅さんは「国会で決めた決定に私はいつでも従います」という部分を指してこう言った。「小沢さん、政倫審に出なければうそをついたことになりますよ」(以上、朝日新聞から)。菅さんの激情は眼を曇らせている。小沢発言は正確にはこうだ。「国会で決めた決定にいつでも従う。ただ、法廷で事実関係を明らかにしろということなので、その場で事実関係を明らかにしたい」。都合のいい引用をしてはならない。こんなことで党内分裂が進めば、政権交代への幻滅がさらに増すだけである。あまり拳を振り上げない方がいい。