共生の小路ーこの時代に生きる私たちの社会に、警鐘とひかりを見いだす人々の連帯の輪をここにつくりましょう。

社会福祉の思想は次第に成熟されつつあった。しかし、いつのまにか時は崩壊へと逆行しはじめた。

吹き飛んだ将来の飯のタネ 東芝・日立は戦略見直しへ

2011年03月29日 19時53分00秒 | Weblog
Close-Up Enterprise 【第50回】
                   2011年3月29日 週刊ダイヤモンド編集部

福島第1原子力発電所の危機により、原発を設計し造ってきた東芝や日立製作所などのメーカーは、少なくともこの先5年の経営計画を見直す必要がある。(「週刊ダイヤモンド」編集部 片田江康男、小島健志、柴田むつみ)

「われわれのエンジニアや研究者たちをもっと使ってくれれば、もっと早くに事態を収束できたはずだ。東京電力の地震後の対応にはがっかりだ」──。

 ある東芝首脳はこう吐き捨てた。危機的状況から脱せない福島第1原子力発電所の状況にいらだちを隠せない。

 加えて「日立製作所の設計した4号機についても、うちのエンジニアが対応できるように考えていた」(同首脳)。日立は茨城県の日立事業所が被災している。その対応に追われるだろうと、東芝は配慮していたのだ。メーカー側は企業の枠を超えて、福島第1原発の危機に対応する準備を整えていた。

 しかし、次々と起こる危機的状況に東電と政府は混乱していた。せっかくの準備をよそに、なかなか東電や政府から支援要請の声がかからない。それでいて状況は悪くなるばかり。前出の東芝首脳がいらだつのも無理もない。

 両メーカーは、日本の原発の歴史に深くかかわってきた。日々の点検や管理などで、実際に現場で手を動かすのはメーカーである。ゆえに、原発構造に関する知見も、当然ながら蓄えている。

「東電に原子炉に関する知見がないとはいわない。でも燃料や炉心、格納容器など、それこそなにからなにまでいちばんよく知っているのは実際に図面を描いたエンジニアでしょう」。メーカー側は口を揃える。

メーカーが福島の平穏を切望する最大の理由

 メーカー側には、福島の状況が一刻も早く落ち着いてほしいという自分たちなりの事情もあった。原子力は二酸化炭素を出さないエネルギー源として注目を浴びていた。また、爆発的に増える新興国でのエネルギー需要を賄うための救世主として、建設ラッシュが始まる、“原子力ルネサンス”の本格的な幕開けを目の前にしていた。

 地震大国の日本で、世界で最も厳しいといわれる耐震基準をクリアして原子炉を開発、設計してきた東芝や日立の技術力は、世界から求められていた。メーカーもそれを売りに世界中の原発需要でひと儲けしようと、そろばんを弾いていたところだったのだ。

 東芝は2006年2月に米大手原発プラントメーカーのウェスチングハウスを54億ドル(当時の為替レートで約6210億円)もの巨費を投じて買収。さらに、いちプラントメーカーにとどまらず、燃料調達なども手がける“原子力の総合企業”に生まれ変わるべく舵を切り、07年8月にはカザフスタンでウラン権益を確保するなど、事業構造の転換を急いできた。

 中期経営計画では15年度までに世界で39基を受注し、原子力事業だけで売上高1兆円という目標を掲げている。その目標も13年度に達成可能で、10年度は約6000億円の原子力事業での売り上げを見込んでいる。

 利益面での貢献も大きい。東芝のもう一つの主力事業であるLSIなどの半導体事業が、価格変動と需給バランスによって浮き沈みが激しいのとは対照的に、毎年100億~150億円の利益を生み出す“読める”事業だったのだ。

 ウェスチングハウスの投資回収は当初17年間だったが12~13年で回収可能と見ていた。

 日立も同じくバラ色の未来を描いていた。30年までに世界で38基の原発新設需要を取り込み、09年度に2100億円だった原発売上高を20年度には3800億円まで引き上げる目標を立てていた。

 震災4日前の3月7日には、不採算事業だったハードディスクドライブ事業を米ウエスタンデジタルに売却し、原発をはじめとするインフラ事業に集中すると発表したばかりだった。

将来の飯のタネ”である原子力事業計画の見直し

 しかし、今回の福島原発の影響で、こうした事業計画はすべて見直しを迫られることになる。

図省略 http://diamond.jp/mwimgs/4/c/499/img_4ce7e182e8dac50f0e06eb52c38ff10526927.gif

 国内で原発の新設計画を進めることなど不可能に近い。すでに東電が進めていた青森県の東通原発1号機、2号機の新設計画はストップする見通しだ。そのほかも、ほぼすべてが凍結されるだろう。

 下表にまとめたのは海外の原発開発計画の一部だ。総電力量の約75%を原子力で賄う原発大国フランスは従来どおり新設計画を進めると宣言しているが、多くの国で計画が遅れるか、見直される可能性が高い。

 ある外資系証券アナリストは「東芝や日立が今までのように原子力事業から利益を積み上げていくことはかなり難しい」と予想する。今後を楽観できる要素は一つもない。

図省略 http://diamond.jp/mwimgs/f/b/501/img_fb77723ac93aa514313a04740d6c9ad534019.gif

 こうした急ブレーキで、東芝はウェスチングハウスを買収した際に発生したのれん代の減損処理を迫られる可能性がある。54億ドルもの資金を投じたが、その価値は目減りしている。

 だが東芝首脳は「原子力事業の将来のキャッシュフローが見えない段階で、今すぐに減損処理を迫られることはない」と断言する。

 また別の東芝首脳も、今回の震災で世界の原発新設計画がすべて止まることはないと話す。依然として現在稼働している原発の燃料需要やメンテナンス需要が見込め、今までと同様に売上高と利益は積み上がっていくはずだと強気の見通しを示している。

 福島第1原発の危機的状況を前に、あまりに楽観的な将来見通しのように思えるが、その背景には、今回の事故は東電と政府の後手に回った対応が原因であり、東芝と日立は“被害者”だという思いがあるからだろう。

 今、東芝と日立の原子力事業のエンジニアたちは、国家の危機に対し被曝覚悟で福島で奮闘している。一方、被災した自社の拠点の立て直しにも追われている。そしてそのうえで、“将来の飯のタネ”である原子力事業計画の見直しという、3重の試練に直面しているのである。

http://diamond.jp/articles/-/11636

東北地方太平洋沖地震に関する天皇陛下のおことば(平成23年3月16日)

2011年03月17日 01時48分12秒 | Weblog
 この度の東北地方太平洋沖地震は,マグニチュード9.0という例を見ない規模の巨大地震であり,被災地の悲惨な状況に深く心を痛めています。地震や津波による死者の数は日を追って増加し,犠牲者が何人になるのかも分かりません。一人でも多くの人の無事が確認されることを願っています。また,現在,原子力発電所の状況が予断を許さぬものであることを深く案じ,関係者の尽力により事態の更なる悪化が回避されることを切に願っています。

現在,国を挙げての救援活動が進められていますが,厳しい寒さの中で,多くの人々が,食糧,飲料水,燃料などの不足により,極めて苦しい避難生活を余儀なくされています。その速やかな救済のために全力を挙げることにより,被災者の状況が少しでも好転し,人々の復興への希望につながっていくことを心から願わずにはいられません。そして,何にも増して,この大災害を生き抜き,被災者としての自らを励ましつつ,これからの日々を生きようとしている人々の雄々しさに深く胸を打たれています。

自衛隊,警察,消防,海上保安庁を始めとする国や地方自治体の人々,諸外国から救援のために来日した人々,国内の様々な救援組織に属する人々が,余震の続く危険な状況の中で,日夜救援活動を進めている努力に感謝し,その労を深くねぎらいたく思います。

今回,世界各国の元首から相次いでお見舞いの電報が届き,その多くに各国国民の気持ちが被災者と共にあるとの言葉が添えられていました。これを被災地の人々にお伝えします。

海外においては,この深い悲しみの中で,日本人が,取り乱すことなく助け合い,秩序ある対応を示していることに触れた論調も多いと聞いています。これからも皆が相携え,いたわり合って,この不幸な時期を乗り越えることを衷心より願っています。

被災者のこれからの苦難の日々を,私たち皆が,様々な形で少しでも多く分かち合っていくことが大切であろうと思います。被災した人々が決して希望を捨てることなく,身体(からだ)を大切に明日からの日々を生き抜いてくれるよう,また,国民一人びとりが,被災した各地域の上にこれからも長く心を寄せ,被災者と共にそれぞれの地域の復興の道のりを見守り続けていくことを心より願っています。
                                                 以上 宮内庁ホームページより
                      

※ 参考 首相官邸 

菅総理からの国民の皆様へのメッセージ  平成23年3月15日(火)

 国民の皆様に、福島原発について御報告をいたしたいと思います。是非、冷静にお聞きをいただきたいと思います。

 福島原発については、これまでも説明をしてきましたように、地震、津波により原子炉が停止をし、本来なら非常用として冷却装置を動かすはずのディーゼルエンジンがすべて稼働しない状態になっております。この間、あらゆる手だてを使って原子炉の冷却に努めてまいりました。しかし、1号機、3号機の水素の発生による水素爆発に続き、4号機においても火災が発生し、周囲に漏洩している放射能、この濃度がかなり高くなっております。今後、さらなる放射性物質の漏洩の危険が高まっております。

 ついては、改めて福島第一原子力発電所から20kmの範囲は、既に大半の方は避難済みでありますけれども、この範囲に住んでおられる皆さんには全員、その範囲の外に避難をいただくことが必要だと考えております。

 また、20km以上30kmの範囲の皆さんには、今後の原子炉の状況を勘案しますと、外出をしないで、自宅や事務所など屋内に待機するようにしていただきたい。そして、福島第二原子力発電所については、既に10km圏内の避難はほぼ終わっておりますけれども、すべての皆さんがこの範囲から避難を完全にされることをお願い申し上げます。

 現在、これ以上の爆発や、あるいは放射性物質の漏洩が出ないように現在全力を尽くしております。特に東電始め関係者の皆さんには、原子炉への注水といったことについて、危険を顧みず、今も全力を挙げて取り組んでいただいております。そういった意味で、何とかこれ以上の漏洩の拡大を防ぐことができるように全力を挙げて取り組んでまいりますので、国民の皆様には、大変御心配はおかけいたしますけれども、冷静に行動をしていただくよう心からお願いを申し上げます。
 以上、国民の皆さんへの私からのお願いとさせていただきます。


※ 参考 官房長官記者発表

東北地方太平洋沖地震について 平成23年3月14日(月)午前

 今日はこの後、危機管理センターを主に中心となって指揮していただいてきております、松本防災担当大臣の方からも記者会見がございます。私の方からは包括的な部分の雑感と原子力発電所の件、そして、計画停電の件を中心に御報告をさせていただきます。
 まず冒頭、関係機関の情報提供の中には必ずしも適切ではない部分が見受けられます。そのために、必要以上のご不安を国民の皆様にお与えをしているのではないかと危惧をいたしております。政府の立場から、より適切にこうした点は注意するべきであると考えておりまして、こうした状況を皆様にお詫びを申し上げます。迅速に、しかし、正確な情報のみをしっかりと御報告をするようにということを、関係機関にしっかりと更に徹底して指示をしてまいりたいと思っております。東京電力福島第一原子力発電所について、保安院からの御報告と重複する部分が多いかと思いますが、私(官房長官)からも改めて御報告を申し上げます。第一原子力発電所については、本日午前1時10分に排水ピットの水量が減少したため、これを補強、補給するための措置として、1号機及び3号機の原子炉への給水を一旦停止をいたしました。その後、補給ができたことから3時20分に3号機への給水を再開いたしております。その後、本日午前6時50分、3号機の原子炉格納容器の圧力が上昇したため、東京電力は屋外作業員に対して一時退避命令をかけました。しかし、その後、格納容器の圧力が下がり、現在は屋外作業を再開しております。この間も給水は継続をいたしております。なお、1号機については格納容器圧力が安定をしており、本日1時10分の停止後、現在は状況を見ておりまして、この状況を判断しながら必要に応じて給水を再開する予定であります。
 計画停電に関連して御報告を申し上げます。本日から東京電力管内において、計画停電が実施されております。実際の電力供給のストップはありませんが、計画停電のプロセスの中に入っております。計画停電の実施は、多くの国民の皆さんに大変な御不便をかけるものであり、御不便を最小限に止めるよう、全力で取り組んでいるところでございます。この計画停電の実施に当たりましては、各方面から周知のためにできるだけ長い時間がほしいという声を多くいただいてまいりました。これを踏まえ、東京電力に対しましては電力供給予測の再精査、そして、大口需要家の皆さんに対する需要削減の更なる努力の要請を求めてきたところでございます。また、私からも本日午前5時過ぎ、改めて国民の皆さんへの節電の御協力のお願いをさせていただきました。多くの皆さんの節電への御協力の結果、現時点では電力の需給の状況から実際の送電の停止は行なわれておりません。しかしながら、そう遠くない時期に実際の電力供給のストップを実行せざるを得ないと認識いたしております。なお、計画停電に備えて鉄道の運休等がなされているのに、実際の停電が行なわれていないのでは混乱をさせただけではないかという御批判があろうかと思っております。多くの国民の皆さんに御不便をおかけする計画停電でございまして、その点についてはお詫びを申し上げ、御理解をお願いするしかないと思っておりますが、今回の事態は鉄道事業者の皆様の御理解による運休の結果として電力使用量が抑えられ、停電の実行を猶予できているという、こういう状態であると認識いたしております。逆に計画停電がなされていない、あるいは運休等がなければ、より早く電力不足の状況に陥り、何らかの形での停電に至る可能性が高まっていた、言わば裏表の関係にあるということを御理解をいただければと思っております。重ねて、計画停電については国民生活に多大な御負担をおかけいたしております。しかしながら、現実の電力供給量に限界がある中で、不測の停電という最悪の事態を防ぎ、なおかつ、可能な限りのそれに対する事前の周知、準備をお整えいただく中で、最小限に御不便を止めるための全力を尽くしておりますので、是非とも節電への御協力を始め、御理解をお願い申し上げます。

「永田町漂流記」平野貞夫 2011年1月 8日

2011年03月08日 01時34分33秒 | Weblog
「日本一新運動」の原点(36) ── 菅首相の憲法政治否定言動は病的である

 こんな内閣総理大臣を、日本国民はいつまで存在させるのだろうか。昨年9月の民主党代表選挙では「総理をくるくる変えるのは良くない」という俗論が通用したが、ここまで来ると、もはや国家の存亡に関わる問題であり看過できない。

 驚いたのは、菅首相の年頭記者会見だ。元旦に、首相公邸で開いた新年会に顔を見せた国会議員が45名と、小沢邸の120名に比べて著しく少なかったため、用意した弁当が150個も余ったという情報が流れたことが頭にきたのか、終始、支離滅裂の会見であった。それを例によって、朝日新聞がその社説で『本気ならば応援しよう』と論ずるに至っては、この国は完全に昭和初期のファシズムの道に突き進みだしたといえる。悪夢の再来である。「日本一新運動」の最大の目的は、日本のファシズム化を阻止することだ。

 さて、菅首相の年頭会見は「国のあり方について三つの理念を申し上げる」という大見得から始まり、1、平成の開国元年、2、最小不幸社会、3、不条理を正す政治、というものであった。翻って、いま何としても必要なことは、政権交代した歴史的意義を確認し、公約の「国民の生活が第一」を実現するために、民主党が挙党一致で邁進することだが、その気はまったくないようだ。

 ところで、菅首相が表明した三つの理念を、坂本龍馬流の妙見法力による四観三元論で分析すると大問題がある。

 まず、1、「平成の開国元年」だが、TPP(環太平洋パートナーシップ)について、「貿易自由化の促進や、若者が参加できる農業再生をやり遂げなければならない」と、言葉では誰もが反対できないデマゴーグを行っている。この政策は、米国の経済支配の中で生きていけという仕掛けがあることを知っておかねばならない。これこそが、さまざまな角度から検討すべきことで、6月を最終的な判断などとは米国の大統領選挙に利用されるだけだ。

 次に、2、「最小不幸社会」だが、昨年6月17日の創刊号メルマガでも述べたように、最少でも「不幸」を撲滅するのが政治の目的でなければならない。一定の「不幸」の存在を容認して社会政策を構想するのは、学者の理論であっても、断じて政治の理念になり得るものではない。狙いは税制改正という名の消費税率の値上げである。「社会保障の整備」という美名をもてあそび、財政悪化の責任から逃れようとする官僚の手のひらで踊らされ、自らの権力保持の欲望を満たすために、庶民を犠牲にする菅首相の根性の汚れに問題がある。

 私の体験を言っておこう。昭和63年の消費税導入は、占領体制下で歪められた税制度を改革するという歴史的意義があった。竹下政権も政権保持のためという私欲はなかった。どうにか成功したものの、あろうことか、協力した野党要求の福祉増額予算を政治資金へ摘み食いした政治家がいた。当時の厚生官僚の知惠で特養施設などを食い物にして、その後二人の総理大臣が誕生することになる。そして腐敗した官僚は天下りで、国民年金を食い物にしたのが、近時の社会保障の歴史であった。菅首相がいかにキレイごとを言おうと、官僚に尻尾をつかまれた政権を信用することはできない。消費税制度の改革が必要なことは、その成立に深く関わった私は、誰よりもよく承知している。そのためには、行財政改革に対する官僚の意識改革が絶対の条件である。このことについて、年内には制度の立法過程を出版する予定だから、詳述は譲りたい。財政再建を、取りやすい消費税に逃げ込もうとする官僚と、それを悪用する政治家たちを追放するのが、消費税制度改革の最低の前提である。

 何よりも大切なことは、現代の人間社会がどんな問題を抱えているか、という歴史認識である。資本主義の21世紀的変質はどんなものであり、社会保障の現代的意義をどう位置づけるか、という思想なくして、消費税を中心とする税制の抜本改革を論ずる資格はない。「やゝ唐突に消費税にふれたために、十分に理解を得ることができなかった」と、菅首相は参議院選挙の時のことを反省しているが、唐突に話すような問題でないことがわからないなら政治家はやめた方がよい。

 次の、3、「不条理を正す政治」だが、小沢さんの「政治とカネ」のことらしい。菅首相の頭脳はどうなっているのか。「不条理」の意味を知らないようだ。簡単に言えば「道理に反すること。不合理なこと」をいうわけだが、それは「政治=権力」で正せることではない。敢えていえば、政治=権力そのものが不条理な存在なのだ。そう認識することによって、政治の浄化は、はじめて可能になる。

 そもそも「小沢問題--政治と金」は、小沢氏に原因があるのではない。これまでも繰り返し説明したが、西松事件は、検察が麻生政権の圧力で、これまでの政治資金規正法の解釈と運用を極端に変更して、大久保秘書を逮捕したことだ。裁判で検察側証人が証言を覆して、訴因は事実上消えてしまった。

 陸山会事件は、会計事務を担当していた当時の秘書たちの収支報告の時期が遅れた「期づれ」が起訴の対象となった。これは基本的に犯罪となる筋のものではない。それを敢えて当時の秘書であった石川衆議院議員を逮捕までした。狙いは水谷建設から裏金を受け取ったというガセネタを利用しての「小沢潰し」であった。陸山会事件の裁判が始まれば、政治的謀略事件であったことが明確になることを私は確信している。そのために菅首相は「小沢排除」をあせっているのだ。

 小沢氏本人が「期づれ」報告の共犯容疑で何度も東京地検特捜の取り調べを受け、その結果不起訴となったのである。西松事件から始まって約1年3ヶ月と、約30億円ともいわれる税金を乱費して、東京や地元事務所、そして企業を数回に渡って強制捜査の上である。それだけでなく、憲法違反といわれる検察審査会に、いかがわしい人物が市民目線という美名のもと、不起訴不当を申し立てたのである。

 麻生自民党政権は、民主党の政権交代を阻止するという「不条理」によって、小沢氏を政界から追い落とそうとした。それを菅民主党政権は継承することになるが、これこそが不条理とはいえないか。司法界に詳しい専門家の話によれば、暗躍したのは弁護士の仙谷官房長官で、検察審査会関係まで手を入れたとのことだ。信じられないことだが、2度目の議決が適法に行われたかどうか疑問があり、検事役の指定弁護士が起訴すれば弁護士法の懲戒問題が起きる、との見方をする専門家もいる。仙谷官房長官が法務大臣を兼務して異常な月日となる。しかも「小沢問題」にとって微妙な時期だ。裏からの何かがあったはずと想像するのは、私一人ではない。仮に裁判となれば、これらの事実が白日のもとに晒され、不条理な政治が正されることにもなろう。

 要するに、「不条理」なことをやってきたのは小沢さんではなく、自民党麻生政権と、それを継承した菅政権であることはネット社会の常識となっているが、国民の皆さんに是非とも理解して貰いたい。

 菅首相には、もう一つ「大不条理」がある。この年頭会見で、小沢一郎という政治家に議員辞職を迫ったことである。国民有権者から選ばれた国会議員に辞職を迫ることは、国民主権という憲法の基本原理に反することがわかっていない恐ろしい人間だ。国会決議ですら、憲法に違反するといわれているのにである。しかも、起訴されていない段階での言動であり、これでは内閣総理大臣としての資質どころか、普通の人間として信用できない病的な言動である。

 さらなる「巨大不条理」は、この菅首相の一連の言動を批判するメディアがいないことである。それどころか、最初に紹介したように『本気ならば応援しよう』と論じたメディアがいる。菅首相と朝日新聞は、もはや精神的危篤状態といえる。そして、この事態に何の危機感も持たない与野党の国会議員たち、わが国の議会民主政治もいよいよ危篤状態かと、国家の滅亡がそこまできた感じだ。ところが一点の光が差し込んできた。それは、西岡武夫参議院議長の月刊「文芸春秋」に寄せた手記である。菅首相について、「国家観、政治哲学を欠いたままでは、国を担う資格なし」と断じ、「そもそも国家に対する『哲学』すらないのではないか」と切り捨てている。仙谷官房長官の放言癖にも怒り、「彼の発言は国会答弁の名に値するものではない。弁護士の経験からつかんだものであろう『法廷闘争』のやり方だ」として、国会議員の資質に疑問を投げかけている。議長職のため党籍を離れているとはいえ、与党民主党の重鎮でもある西岡さんの、辛辣な意見に彼らは何と答えるだろうか。

 そういえば、菅首相を弁護する仙谷官房長官の国会答弁は、まるで総会屋や裏社会を擁護するような態度であった。本来なら、マスメディアがこういった指摘をすべきことだが、それどころか巨大メディアの増長は、権力と結びついて情報社会を支配すべく暗躍を繰り返している。

■NHK会長人事に干渉する輩たち

 このメルマガを執筆中に寄せられた情報は、近く決定するNHK会長人事に、日本テレビの氏家会長らが、総務官僚OBなどを使って暗躍し、慶応大学の安西祐一郎前塾長を起用しようとしているとのことだ。安西氏は慶応大学の経営に失敗した人物であることは衆知のこと。要するに読売グループが先頭に立って、公共放送であるNHKに影響を与えようという狙いであろう。

 民間メディアが、例えば「納税者番号制度」の政府広報費をめぐって、菅政権にすり寄った報道を始めたことは、年末のメルマガで述べたとおりだが、渡辺--氏家という読売メディアのNHK支配が実現すれば、日本社会はどうなるのか、社会心理的「暴力装置」としての「メディア・ファシズム」が完成する。

 「メルマガ・日本一新」の読者の皆さん、そしてネットに集まる善良な人々よ、この謀略を阻止しようではないか。方法は一つ、あらゆる手段を駆使して、任命権を持つNHK経営委員に抗議の意志を伝えることである。

http://www.the-journal.jp/contents/hirano/2011/01/


小沢一郎氏を強制起訴!「政治とカネ」問題の焦点、 水谷建設・西松建設・陸山会の3事件はどこに消えた?

2011年03月04日 04時33分48秒 | Weblog
週刊・上杉隆【第160回】 2011年2月3日 

 〈小沢氏を強制起訴〉

 1月31日、号外まで出た小沢一郎氏の強制起訴は、約二年にわたる「政治とカネ」の問題に決着をつけたかのようである。

「カネに汚い小沢一郎」という政治家の正体がようやく法的にも証明されたのだ。これで「政治とカネ」の問題も一気に解決に向かうに違いない。

 きっと、国民の多くがそう思っていることだろう。だが、実際にそのニュースに触れると、「何かがおかしい」と気づくことになる。

 少し長くなるが、恣意的な引用を避けるためにも、翌日の「産経新聞」朝刊の記事をそのまま掲載する。

 〈民主党の小沢一郎元代表(68)の資金管理団体「陸山会」をめぐる政治資金規正法違反事件で、検察官役を務める指定弁護士は31日、同法違反(虚偽記載)罪で、小沢元代表を在宅のまま強制起訴した。検審の議決に法的拘束力をもたせた平成21年施行の改正検察審査会法に基づく強制起訴は4例目で、国会議員は初めて。

 政権与党の実力者が国民の判断によって起訴される事態となり、政権への打撃は避けられない。小沢被告に対し政治責任を問う声も再燃しそうだ。

 起訴状によると、小沢被告は、衆院議員の石川知裕被告(37)=同法違反罪で起訴=ら元秘書と共謀。陸山会が16年10月に東京都世田谷区の土地を約3億5千万円で購入したにもかかわらず、同年分の政治資金収支報告書に記載せず、17年分の収支報告書に記載したなどとされる。

 東京地検特捜部は昨年2月、石川被告らを起訴する一方、小沢被告については嫌疑不十分で不起訴とした。その後、東京第5検察審査会が「起訴相当」と議決。特捜部は再び不起訴としたが、審査員全員が交代した第5検審の再審査が行われ、同9月に起訴議決が出された。

 小沢被告はこれまでの特捜部の事情聴取に対し、虚偽記載への関与を否定。公判でも同様に否認するとみられる。東京地裁から選任された指定弁護士3人は今後、引き続き公判を担当し、小沢被告と元秘書との共謀関係を立証していく〉http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110131/crm11013114460015-n1.htm

 仮に、小沢一郎氏関連のニュースをきちんと読んでいる読者がいたとしたら、きっとこの記事に違和感を覚えるはずだ。

 これは産経新聞だけに当てはまるものではない。朝日新聞も、NHKテレビも、すべての記者クラブメディアに該当する、そう、つまり、起訴状に書かれた「罪状」への違和感である。

「政治とカネ」の問題と散々言われた3つの事件は跡形もなく消え去った

 (1)水谷建設事件、(2)西松建設事件、(3)陸山会事件――。

 この二年間、記者クラブメディアが散々大騒ぎし、小沢氏の「政治とカネ」の問題だとして紙面や放送時間を費やしてきたのが、この三つの事件だ。

 ところが、今回もあるはずのこの三つの事件は跡形もなく消えている。

 代わりに登場した「罪状」が、はるか以前から指摘されてきた、政治資金収支報告書の「期ズレ」の問題である。

 それでは、小沢氏の起訴内容をまとめてみよう。「罪状」の要旨は次の通りである。

 〈小沢一郎被告は、自己の資金管理団体である陸山会の会計責任者であった大久保隆規被告と、その職務を補佐する者であった石川知裕被告と共謀の上、平成17年3月31日ごろ、東京都新宿区の東京都選挙管理委員会において、

 (1)陸山会が16年10月12日ごろ、小沢被告から4億円の借り入れをしたにもかかわらず、これを16年の収入として計上しないことにより、同年分の政治資金収支報告書の「本年の収入額」欄に、これが5億8002万4645円であったとの虚偽の記入をし、

 (2)陸山会が16年10月5日と同月29日、土地取得費等として計3億5261万6788円を支払ったにもかかわらず、これを同年の支出として計上しないことにより、真実の「支出総額」が4億7381万9519円であったのに、収支報告書の「支出総額」欄に、3億5261万6788円過小の1億 2120万2731円であったとの虚偽の記入をし、

 (3)陸山会が16年10月29日、東京都世田谷区深沢8丁目の土地2筆を取得したのに、これを収支報告書に資産として記載せず、収支報告書を都選管を経て総務大臣に提出し、もって収支報告書に虚偽の記入をし、記載すべき事項を記載しなかった〉

 なるほど、これならば、確かに3億5261万円もの報告漏れにあたり、政治資金規正法違反で小沢氏は「政治とカネ」の問題を抱えているといえる。

3億5261万円の支出は同年度内に報告罪状は年をまたいだことによる“期ズレ”

 だが、実は、起訴状はもうひとつあるのだ。

 〈小沢被告は、大久保被告と、その職務を補佐する者であった池田光智被告と共謀の上、18年3月28日ごろ、都選管において、

 (1)陸山会が17年中に土地取得費等として計3億5261万6788円を支払っていないにもかかわらず、これを同年の支出として計上することにより、真実の「支出総額」が3億2734万7401円であったのに、同年分の収支報告書の「支出総額」欄に、3億5261万6788円過大の6億7996 万4189円であったとの虚偽の記入をし、

 (2)陸山会が前記土地2筆を取得したのは16年10月29日であるのに、収支報告書の「資産等の項目別内訳」の「年月日」欄に取得年月日が17 年1月7日であるとの虚偽の記入をし、収支報告書を都選管を経て総務大臣に提出し、もって収支報告書に虚偽の記入をしたものである〉

 賢明な読者ならばお分かりだろう。いや賢明でなくても分かるかもしれない。

 そう、3億5261万円は消えたわけではなく、同じ年度内にきちんと報告されていたのである。

 つまり、これだけをみても、罪状は政治家の「政治とカネ」の問題ではなく、「期ズレ」、つまり、秘書の修正申告の問題だということがわかる。

 これは恐ろしい「罪状」だ。恐ろしいというのは、かつて国会議員秘書経験のある筆者からみて、あるいはすべての議員秘書にとって背筋が凍るような起訴だということだ。

 そもそも、強制起訴という言葉に違和感を覚えはしないか。

 記事にもあるように、捜査権を持つプロフェッショナルであるはずの東京地検特捜部が、2年間にも及ぶ捜査の上、小沢氏の「政治とカネ」の問題は存在しないとして2回にわたって「無罪」(不起訴)にしている。

 それを、法律のアマチュアにすぎない11人の、匿名の一般人の集まりである検察審査会が、わずか数日の審理だけで「有罪」(強制起訴)としてしまったのである。

 いや、それでもそれは国の正式な制度だ。法治国家である以上、そこに従うのは国民として当然の義務である。

 だが、そうだとしても、それは「政治とカネ」の問題とはいえない。

3つの事件はどこに消えた?第1の水谷建設事件は元会長が証人に

 では、肝心の「政治とカネ」の問題はどこに消えたのか。消えた3つの事件を追ってみよう。公平を期すため、同じ産経新聞から引用する。

 〈陸山会事件 元秘書側が水谷建設元会長を証人申請

 小沢一郎民主党元代表(68)の資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる事件で、政治資金規正法違反罪に問われた衆院議員、石川知裕被告(37) らの弁護側は2日、中堅ゼネコン「水谷建設」の水谷功元会長(65)を証人申請した。3日の公判前整理手続きで東京地裁が採否を決定するとみられる。

 関係者によると、水谷元会長は東京地検特捜部の任意の事情聴取に、同社の元社長(53)らを通じ、小沢被告側に平成16年10月と17年4月に5千万円ずつ計1億円を提供したとの趣旨を供述。しかしその後、周囲に「渡したかは分からない」などと話したという。

 同社の元運転手については弁護側、検察側ともに証人申請した。元運転手は特捜部の任意聴取に、16年に元社長を裏金の受け渡し場所まで送迎したと供述したが、現在は「記憶がない」などとしているという〉http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110202/trl11020219430009-n1.htm

 なんのことはない、「水谷建設から小沢秘書に渡った一億円」は検察と記者クラブメディアの虚構だったのだ。

 当事者の水谷元会長が、石川元秘書らの証人として法廷に立つ用意があるということ以上に、雄弁にこの事件の虚構性を物語るものはない。

第2の事件は西松建設側も小沢事務所側も正当な献金と認識

 (2)西松建設事件はどうだろうか。産経新聞では記事を見つけられなかったので、共同通信の記事を引用する。

 〈政治団体、ダミーと思わず 西松公判で元総務部長 ニュース / 2010-01-14

 西松建設の巨額献金事件で、政治資金規正法違反の罪に問われた小沢一郎民主党幹事長の公設第1秘書大久保隆規被告(48)の第2回公判は13日午後も東京地裁(登石郁朗裁判長)で続行、西松の岡崎彰文元総務部長(68)が検察側の再主尋問に「(献金していた)当時は、政治団体がダミーとは全く思っていなかった」と証言した。

 献金元の政治団体について、検察側は西松が名前を隠して献金するための、ダミーだったと主張している。

 検察側は、政治団体の会員だった社員の賞与に上乗せ支給する手法で、実際には西松が会費を負担していたのではないかと質問したが、元総務部長は「知らない」と答えた。

 弁護側の反対尋問では、政治団体について「OBがやっていて、届け出もしている、と被告に説明したと思う」と述べ、続いて裁判官に西松と政治団体の関係 を質問されると「事務所も会社とは別に借りて、資金も別だった」と説明した〉(共同通信)

 つまり、西松建設からの献金はダミー団体からの裏金でもなんでもなく、届出をしている政治団体からの献金という認識を、小沢事務所側も、西松建設側も持っていたということである。

 これでは事件化できるわけがない。

第3の陸山会事件で検察側はあの前田元検事担当の調書を撤回

それでは(3)はどうだろうか。

 〈大久保元秘書の調書撤回 東京地検、資料改竄事件の前田元検事が聴取担当

 陸山会の土地購入をめぐる事件で、東京地検が、政治資金規正法違反(虚偽記載)罪に問われた元会計責任者で元公設第1秘書、大久保隆規被告(49)の供述調書の証拠請求を撤回したことが20日、大久保被告の関係者への取材で分かった。

 大久保被告の取り調べは、郵便不正事件をめぐり押収資料を改竄(かいざん)したとして逮捕、起訴された大阪地検特捜部元検事、前田恒彦被告(43)が担当。事件への関与を認める供述を調書にしたが、大久保被告は起訴後に否認に転じ、弁護側は「強引な取り調べや誘導があった」として、調書の信用性などを徹底的に争う意向を示していた。

 関係者によると、同日開かれた大久保被告ら小沢一郎氏の元秘書3人の公判前整理手続きで、検察側は前田被告が取り調べた調書すべてを撤回すると伝えた。改竄事件が公判に与える影響を考慮したとみられる。

 大久保被告は石川知裕被告らと共謀し、平成16年分の政治資金収支報告書に小沢氏からの借入金4億円を記載せず、19年分には小沢氏からの借入金の返済分4億円を正しく記載しなかったなどとして昨年2月に起訴された〉(産経新聞)http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110121/trl11012102000014-n1.htm

 これは説明の必要もないだろう。本コラムで再三指摘していた、「捏造犯」前田恒彦検事の関わった事件の見直しをようやく検察が決断したのだ。

 これによって、「政治とカネ」の3つの事件はすべて消えた。その証拠に、「小沢氏強制起訴」を境に新聞テレビの報道から、この3つの事件が一切消え、代わりに「期ズレ」の問題だけが無意味に叫ばれることになったのだ。しかも、「期ズレ」といわずに……。

 いったいこの国の政治とは、この国のメディアとは、この国の正義とはなんなのであろうか。

 果たして。今回の「小沢氏強制起訴」は、民主主義国家としての日本の否定ではないか、筆者はそう疑念せずにいられない。


参考:週刊・上杉隆
http://diamond.jp/articles/-/11356
第165回 小沢氏元秘書への“立証の対象にしない裏献金”とはどういうことか?大手メディアの情報操作を検証する (2011.03.03)