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社会福祉の思想は次第に成熟されつつあった。しかし、いつのまにか時は崩壊へと逆行しはじめた。

財政再建=消費税増税ではない

2011年01月28日 22時04分43秒 | Weblog
週刊ダイヤモンド「岸博幸のクリエイティブ国富論」

【第124回】 2011年1月28日 岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

 政府の消費税増税キャンペーンがいよいよすごくなってきました。1月21日に内閣府が発表した「経済財政の中長期試算」など、政府が出す情報は増税に向けた機運の醸成を狙ったものばかりですし、一部の新聞もそれに乗ってしまっている感があります。そうしたキャンペーンに惑わされないよう、今回は基礎的なおさらいをしたいと思います。

 まず何よりも大事なのは、“財政再建=消費税増税”ではないということです。政府が国民に刷り込もうとしているこの図式は、あまりに短絡的すぎます。正確には、“財政再建=増税+増収(経済成長による税収増)+歳出削減”でなくてはいけないのです。

 政府の債務がGDPの2倍弱の規模にまで増加し(政府資産を差し引いた後のネット債務はそこまで大きくありませんが)、団塊の世代の退職に伴い社会保障負担が将来的に急増することを考えると、ある程度の消費税増税はもはや不可欠です。

 しかし、マクロ経済政策が欠如する中でデフレ・低成長路線で税収が増えず、かつ政府のムダを削減しない一方でバラマキを続けて予算の規模が膨張しているのが現状です。それらを是正しないまま消費税増税だけで財政再建をしようと思ったら、大増税が不可欠となります。そうした“大きな政府”路線は、経済の活力を削ぐだけではないでしょうか。

 だからこそ、本来は、増税と増収と歳出削減が均等に貢献する形での財政再建を目指し、増税幅は最小限に抑えるようにすべきではないでしょうか。それなのに、菅政権は増税ばかりに肩入れしているのです。
成長による増収の効果は大きい

 ここで、成長による増収について考えてみましょう。

 内閣府が1月21日に発表した「経済財政の中長期試算」を巡る報道では、2020年度の基礎的財政収支(プライマリーバランス)が23兆円の赤字になると大々的に報じられていました。

 ちなみに、政府は昨年6月に策定した成長戦略を喧伝しているにもかかわらず、財政の試算では低成長路線に甘んじることを前提としているのは、論理矛盾の感を拭えません(成長戦略で掲げた名目3%成長を前提とした試算も一応加えてはいますが、試算の後半を見ると、実際には低成長路線しか考えていないことは明白です)。

 ただ、この試算の中での基礎的財政収支の推移のグラフをよく見て下さい。2003~2007年の4年間で、基礎的財政収支は22兆円も改善しているのです。それは、小泉政権の構造改革によって成長率が高まり、税収が増えたからに他なりません。極端な言い方をすれば、菅政権も同様の政策で成長力を高めることができれば、増税しなくても2020年度に基礎的財政収支の赤字(23兆円)をほぼ解消できるのです。

 そう考えると、名目成長率を高めることが財政再建のためにいかに重要かがお分かりいただけるのではないでしょうか。増税も必要ですが、デフレから脱却して名目成長率を高めることをまず目指すべきであり、そのためには金融政策と財政政策をフルに動員すべきなのです。

歳出削減は不十分

 次に、政府の歳出削減がまだ全然不十分であることを忘れてはいけません。民主党は2009年のマニフェストで、総予算207兆円の組み替えで16 兆円の財源を捻出すると公約しました。しかし、政権交代から1年3ヶ月経った段階で実現した歳出削減は、たった3回の事業仕分けで3兆円だけです。かつ、公約であった国家公務員の人件費の2割削減も先送りとなりそうです。

 この数字だけからは財政は本当に危機的状況という感じがしますが、この報道を真に受けてはいけません。1%台半ばの低い名目成長率を前提にしている以上、税収の増分が少なくなるので当然の結果です。

 そもそも、歳出削減がこのように全然不十分であるにもかかわらず、その努力を放棄して消費税増税という形で国民に負担を強いるようでは、政権は無責任という誹りを免れないのではないでしょうか。

 分かりやすい例を挙げると、公務員の人件費です。昨年、民間の給与所得者の平均給与は400万円で、かつ5.5%下がっています(国税庁調査)。それなのに、その民間の税金から給料をもらう立場の国家公務員は、平均給与が600万円で、かつ昨年は人事院勧告どおり1.5%しか下がっていません。国税庁調査はパート、アルバイトも含めた数字なので単純比較は難しいですが、それでもやはり税金から給料をもらっている立場の国家公務員が民間に比べ恵まれているのは間違いありません。

 かつ、国と地方を合わせた公務員の人件費は27兆円です。これに対して、国税と地方税を合わせた税収は72兆円です。政府の財政赤字や累積債務がこれだけ騒がれる中で、税収の4割弱が公務員の人件費に使われているというのは、おかしいと言わざるを得ません。

 すごく単純計算すれば、国と地方の公務員の人件費を2割削減するだけで5.4兆円削減できます。民主党のバラマキの象徴である子ども手当を廃止すれば2.9兆円、高速道路無料化を廃止すれば0.1兆円のムダが削減できます。これらだけで8.4兆円の財源が捻出できるのです。その他に、事業仕分けのような政治ショーではなく、マジメに予算のムダを切り公益法人などの廃止を進めれば、合計10兆円くらいの財源はすぐに捻出できるはずです。

 このような政府の側の“傷み”なしに増税というのは、国民感情からも理論的にもおかしいのではないでしょうか。

増税のための環境整備を集中的に行なうべき

 もちろん、だからと言って増税するなと言う気はありません。消費税増税は不可欠です。しかし、デフレ・低成長が続く中での増税は最悪ですし、歳出削減が不十分な中での増税はダメなのです。

 従って、民主党政権は消費税増税の議論ばかりではなく、増収と歳出削減にも増税以上の熱意を持って取り組むべきです。菅首相の施政方針演説から、マクロ経済政策はやらずに成長はTPPによる外需頼みとする方向は明らかですが、これは間違っています。

 まず政権は、例えば「2年でデフレ脱却・ムダ徹底削減を完了させる」と宣言し、それが達成されたら消費税を増税すると約束すべきではないでしょうか。その上で、日銀法を改正して、金融政策や財政政策をフルに動員するとともに、ムダ削減については国・地方の公務員の人件費2割削減と合計10兆円の歳出削減を実現させる。こうした当たり前の政策を普通にしっかりやるだけで、悲願の消費税増税のための環境は整うのです。

 内閣の布陣や閣僚などの日々の発言、新聞報道などを見ていると、消費税増税に向けた国家総動員態勢になっている感がありますが、まずは“財政再建=増税”ではないという当たり前の基本を思い出すべきです。


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【第123回】与謝野氏入閣で日本は「最小不幸社会」ではなく
「最小不幸財政・最大不幸経済」に向かう 2011年1月21日

社会保障を人質に理屈なき消費税増税を狙う 消費税の社会保障目的税化は本当に正しいか

2011年01月27日 00時51分59秒 | Weblog
週刊ダイヤモンド「高橋洋一の俗論を撃つ!」
【第6回】 2011年1月27日 高橋洋一 [嘉悦大学教授]

社会保障を人質に理屈なき消費税増税を狙う消費税の社会保障目的税化は本当に正しいか

菅直人政権は「社会保障と税の一体改革」を進めている。

 施政方針演説で6月までに改革案をつくりたいとし、与謝野馨経済財政担当相や藤井裕久官房副長官は消費税率引き上げに向けて、社会保障目的税にして2011年度中(来年3月まで)の法整備を目指し、仙谷由人前官房長官は消費税率引き上げを急ぐべきだと、それぞれ消費税増税に前のめりになっている。改造内閣の増税オールスターズは全開だ。

税方式と社会保険方式の違いを理解していない民主党

 それぞれ、消費税増税を年金など社会保障の財源にあてると言っている。逆にいえば財政赤字の補填に使うのではないと。しかし、その話は注意しなければいけない。カネに色はついていないので、どこに使うというロジックはもともと怪しい。

 もし本当に社会保障に使うのであれば、税率と社会保障給付水準はリンクしていないとおかしい。税率を上げればその分、社会保障給付水準が上がるはずだが、はたしてそうであろうか。さらに、財政赤字に使うのでないなら、財政再建は放置するのか、放置しないならどのような方策を講じるのかを明らかにしなければいけない。

 社会保障は、助け合いの精神による所得の再分配が基本であり、そのために国民の理解と納得が重要だ。というわけで、給付と負担に関係が明確な社会保険方式で運営されている国が多い。民主党マニフェストでは最低保障年金は税法式と書かれていたが、各人の保険料納付記録を持つ保険方式とそれがない税方式では、給付と負担の関係などで水と油ほどの制度の差がある。

 しばしば、現行制度の社会保険料方式でも税が投入されているので、税方式はその割合を高めることだという閣僚もいるが、そうではない。この点を民主党政権は十分に理解していない。しかも社会保険方式から税方式へ移行した先進国はない。移行にコストと時間がかかるにもかかわらず、そのメリットは少ないからだ。また、日本で社会保険方式を踏襲するなら、税財源のさらなる投入は給付と負担の関係を不明確にして、ますます社会保障への信頼を失いかねない。

年間も厚労省に無視され続けた社会保障個人勘定構想

 消えた年金問題を契機として、年金記録が整備され、年金定期便なども実施され、個人レベルでの給付と負担が明確になりつつある。

 消えた年金問題は民主党のヒットであったが、実は政府内でもかなり前から意識されていた。そこで、年金不信の払拭という大義名分で、経済財政諮問会議でも社会保障個人勘定の創設が議論されていた。個人勘定という新しいシステムを導入して、その中で、年金記録問題も解決しようというアイデアであった。

 2001年、最初の「骨太の方針」で、「IT の活用により、社会保障番号制導入とあわせ、個人レベルで社会保障の給付と負担が分かるように情報提供を行う仕組みとして「社会保障個人会計(仮称)」の構築に向けて検討を進める。」と書かれている。

 当時の報道を見ると、個人単位で給付と負担の関係を明確化するために、社会保障個人勘定が創設されるとされているが、当時の坂口厚労相は「損得勘定を助長する」と反論していた。表面的には年金記録問題が議論されていなかったが、現実問題としては、年金記録問題はそれ以前にも政府内から指摘されながら、それまで問題として顕在化しなかったので、当時もあえて寝た子を起こさないということで、社会保障個人勘定は厚労省の拒否で日の目を見なかった。

 しかし、その後の“骨太”でも何度も提言された。

 骨太2002「国民に広がる年金不信を払拭するため、個人個人の年金に関する情報提供がきちんと行われる仕組みを作り、わかりやすい年金制度とするとともに、年金をはじめとする社会保険実務の効率化を進める」

 骨太2003「「社会保障個人会計(仮称)」の導入に向けて検討を進める」

 骨太2004「社会保障制度を国民にとって分かりやすいものとするとともに、個々人に対する給付と負担についての情報開示・情報提供を徹底する」

 骨太2006「社会保障個人会計(仮称)について、個々人に対する給付と負担についての情報提供を通じ、制度を国民にとって分かりやすいものとする観点から、検討を行う」

 骨太2007「社会保障の情報化を進め、国民が自らの給付と負担の情報等を容易に入手・管理できる仕組みの導入を目指す」

 実に6年間も、社会保障個人勘定構想は、厚労省に無視され続けてきた。

フリードマンが提唱した「負の所得税」とは

 この構想では、年金記録問題の解決は単なる副産物であって、「社会保障と税の統合化」という世界的な流れが背景にあった。そのルーツは、なんと 45年前、ミルトン・フリードマンが提唱した「負の所得税」である。フリードマンというと「新自由主義」で、社会保障などにはまったく関心を払わなかった人のように誤解する者が多いが、実は社会保障関係でも先進的なアイデアを出していたのだ。

 つまり、所得税と公的扶助制度を組み合わせて、課税前所得が課税最低限を下回る者に対しては、その差額の一定割合だけマイナスの所得税すなわち給付を行うというフレームワークだ。ただ、所得ゼロの者でもかなりの給付金を受けられることとなるので、実現しなかった。

 1975年、米国は、低所得層による労働供給を促進させるとともに、低所得層に関わる社会保障税の負担を軽減するため、勤労所得税額控除 (Earned Income Tax Credit : EITC)を導入した。この制度は、職に就くことを税額控除のための必要条件としており、最も所得が低い層では、所得が増加するほど控除額(給付金)が増加するが、所得が一定水準を超えると控除額(給付金)が徐々に減少するような制度設計がなされている。ただし、控除額(給付金)と所得を合計した手取り額は増加するようになっている(図参照)。1997年、米国は子どもの人数に応じた税額控除としてCTC(Child Tax Credit)も導入した。
 (参照図省略)
これらは「給付付き税額控除」制度といわれ、税額控除という方法で算出した非納税者等に対する給付を、所得税制に組み込んだ枠組みである。

「給付付き税額控除制度」のメリットは、第1に、社会保障制度と税額控除(減税・給付金)とを組み合わせる結果、個人が社会保障給付を得るために労働供給を抑制するという非効率性がなくなることがあげられる。つまり、働かなくても給付が受けられるという「貧困の罠」の発生を防げる。

 第2に、税額控除(給付金)方式を採用することにより、高所得者に減税効果が偏りやすい所得控除(各種の控除によって課税所得を減らす)方式の場合よりも、所得再分配効果が高まる。

 第3に、行政当局による生活扶助の認定は、ややもすると恣意的になりがちであるが、所得基準という比較的客観的な基準によって恣意性が排除でき、最終的には行政組織の効率化にもつながる。

主要国の「給付付き税額控除制度」はどうなっているか

「給付付き税額控除制度」を導入している主な国として、米国、カナダ、英国、フランス、アイルランド、ベルギー、ニュージーランド、韓国がある。そして、これらの国は、(1)勤労所得税額控除と児童税額控除の両方が設けられている米国、英国、ニュージーランド、(2)勤労所得税額控除のみが設けられているフランス、ベルギー、アイルランド、韓国、(3)児童税額控除のみが設けられているカナダに分けられる。特に英国については、ブレア政権下で 2003年に採用され、貧困層の減少や経済の安定に寄与したとして高く評価されている。

 なお、オランダにも勤労所得税額控除制度があるが、税額控除還付(給付)は行わない。しかし、所得税で控除しきれない分については社会保険料からの控除を認めており、給付付き税額控除制度に比べて事務が比較的容易な制度になっている。

 こうした給付付き税額控除制度の申請においては、納税者番号(または社会保障番号)が使用されている。ちなみに、米国において勤労所得税額控除の申請は税務申告とともに行われるが、税務申告書には本人と配偶者の社会保障番号を記入し、勤労所得税額控除を申請するための添付書類類には、子どもの名前や社会保障番号を記入する。

 また、韓国は、給付付き税額控除の導入に当たり、税務行政に関連するインフラを強化した。もっとも、社会保障番号制度を持っているアメリカにおいても不正給付が多く(約3割)、大きな問題になっていることを考えると、納税者番号が不正給付防止の決定打となるとはいえないだろう。

 この納税者番号を活用して「社会保障と税の統合化」をするためには、かつて民主党が提唱していた社会保障保険料の徴収機関と税の徴収機関の統合といういわゆる「歳入庁構想」が必須である。

 世界のほとんどの国で、社会保障保険料の徴収機関と税の徴収機関の統合が行われているが、日本では、政権を取った民主党が「歳入庁構想」の旗を降ろしてしまい、実現のめどは立っていない。国税庁を所管する財務省が、自らの権限の弱体化を懸念し歳入庁構想に反対しているので、民主党はその官僚の壁を崩せないのだ。

世界の潮流とは似て非なる菅政権の「社会保障と税の一体改革」

 ここまでの話から、菅直人政権の「社会保障と税の一体改革」と、世界的な流れの「社会保障と税の統合化」は似て非なることがわかるだろう。

 菅政権の「税」は消費税だ。ところが、世界の「税」は所得税である。それは、社会保障が所得再分配を基本とするから、所得税を社会保障の中に組み込む方が、よりよい制度ができるからだ。消費税を社会保障財源というのは、その世界の流れにも反する。

 もともと消費税を上げるロジックとして、社会保障にくっつける発想には無理があり、社会保障を人質にして消費税を増税するための屁理屈にすぎない。本来の消費税は一般財源が普通で、社会保障などの特定財源にしている国はほとんどない。

 かつてドイツが、一度だけ税率アップの方便に使ったことがあるが、それくらいしか思いあたらない。日本での経緯は、1999年の自自公連立時に、当時の小沢一郎自由党党首に話を持ちかけて、「消費税を上げるために社会保障に使うと書いてください」と、財務省から要請して政治上の取引で了解されたもので、理屈はない。そうした経緯で法律ではなく予算総則に書いてある。

 さらに、消費税の性格からみても、社会保障財源にはなりえない。国はその機能として所得再分配政策を行うが、地方は公共サービス支出を行う。このため、それぞれの税源は、国は応能税(各人の能力に応じて払う税)、地方は応益税(各人の便益に応じて払う税)という税理論がある。消費税は徴税コストが少なく、安定財源であるので、地方税にふさわしい。

 ちなみに、分権が進んだ国では地方の税源になっている。社会保障は所得再分配政策であり国の業務になる部分も多いので、地方の税源である消費税は財源にできない。消費税を年金等の社会保障財源にするという話は、世界でほとんど聞かない話だ。

 欧州の国では消費税が中心であるという意見もよく聞くが、日本の人口や経済規模からすると、日本の中に欧州の国が10あっても不思議ではない。そう考えると、日本が道州制になって消費税は道州の税源になったらと考えれば、欧州の状況はより理解できる。いずれにしても、消費税は地方税のほうがいいだろう。


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【第3回】 法人税5%引き下げでわかった税理論も実行戦略も欠如した民主党のお粗末 

[2010年12月16日]
菅首相が法人税5%の引き下げを決断した。その一方で、個人所得税の増税も行う。そこには成長を目指すのか、所得再配分の強化を目指すのか、目的すらみえない。深刻なのは、民主党にしかっりした税理論が欠けていることにある。

国民からも早期解散を望む声が… 消費税増税、TPP参加を掲げた菅政権の寿命

2011年01月27日 00時43分08秒 | Weblog
週刊ダイヤモンド「田中秀征 政権ウォッチ」
【第68回】 2011年1月27日 
田中秀征氏 [元経済企画庁長官、福山大学客員教授]

国民からも早期解散を望む声が…
消費税増税、TPP参加を掲げた菅政権の寿命

 通常国会が開会、菅直人首相の施政方針演説を聴いた。

 内容は今までの発言をパッケージしたもので新味には乏しい。気になったのは、首相の沈痛な面持ち。演説全体が切羽詰った悲鳴のように聞こえた。

 演説で首相は「ムダ使いの排除」も強調したが、これは参院選で示された「増税の前にやることがある」という世論を意識したのだろう。しかし、その具体策は何も提示されず、早口で通り過ぎた。昨年1月の「逆立ちしても鼻血も出ないほどしぼる」という自分の発言は忘れたのだろうか。要するに今回の演説は「ムダ排除はやる気がない」と言っているようなものだ。
“権力維持”に焦る菅首相が掲げた
「財政再建」と「TPP参加」

 首相は年明け以来、前のめり、爪先立って猛然とダッシュを始めた。政治の事情というより個人的事情によるものだろう。どうやって権力の座を維持していくか。それが焦りとなって表出している。

 首相は、「税・社会保障の一体改革」と「TPP参加」の2つの旗をますます高く掲げるようになっている。

 その上、野党がその協議に参加しなければ、それは「逃げている」のであり、「歴史に対する反逆行為」ときつく決めつけている。おそらく、予算委員会審議でも党首討論でもこの強硬姿勢はエスカレートするだろう。

 だが、この脅迫まがいの発言は逆効果になろう。首相はきっと「野党がこんな重要な課題に協力しないと、野党にとって大きなマイナスになる」と思っているのだろうが、世論はそう甘くはない。

 菅政権は既に「公約したことはやらないで、公約しないことをやる政権」という評価が定着してしまっている。“消費税”も“TPP”もそんなに重要なら、どうして政権交代選挙での争点にしなかったのか。もしも国民的議論が必要なら、今すぐに解散・総選挙をすればよいではないか。世論がそう受け止めるのは当然だ。首相が言うように、6月に政府案をまとめるなら、そのまま総選挙で信を問うべきだ。何よりも、昨年の参院選で菅首相自らそう約束している。
不信感から政権は立ち往生へ
世論は早期解散も容認している

 このままでは予算関連法案は成立しないだろう。そうなると4月には、菅内閣は立ち往生することが避けられない。早期解散を歓迎しなかった世論も、このところ大きく変わってきている。

 菅首相が本気で財政再建やTPP参加問題を考えているなら、まず自分が身を引いて総選挙で新しい政権の樹立を可能にすることだ。

 他でもない菅政権に対する強い不信感が、重要課題の解決を遅らせていることを、首相は理解していない。首相自身が信頼されていないから、どんなに正しいことを言っても世論は耳を貸さなくなっている。「笛吹けど踊らず」なのだ。

安倍晋三氏の秘密後援会「安晋会」

2011年01月14日 01時48分33秒 | Weblog
「週刊ポスト」2006.02.03号

 ヒューザー小嶋に喋られた 安倍晋三「安晋会」(後援会)の闇

 …(略)…
 実は、小嶋─飯塚会談には《目撃者》がいた。

 「安晋会は表に出ない秘密組織」

 その日、議員会館の安倍事務所には小嶋氏の前に”先客”がいた。飯塚氏はその客を残したまま小嶋氏を部屋に招きいれたという。
 証人喚問の前に、民主党の偽装事件調査チームの議員は先客から小嶋氏の陳情の目撃証言を極秘に入手していた。次のような内容だ。
<飯塚秘書は「今から面白いやつが来るから、秘書のようなふりをしていたらいい」と同席させた。やってきた小嶋氏は「国交省がこんな状況になっている。なんとかしてほしい。おれはこれまでさんざん税金を払って、国のために貢献してきたのに、なんでこんな仕打ちをうけるのか」とまくしたてた。飯塚氏はその場で国土交通省の幹部と思われる人物に電話していた>
 その後、馬淵代議士が住民説明会の小嶋発言テープを入手したことで、安倍事務所に対する政界工作は裏付けられた。改めてグランドステージ川崎大師での小嶋発言を再現すると、それがよくわかる。小嶋氏は公的資金投入を国に働きかけているという説明に続けて語った。
「私どもは『安晋会』というのに入っておりまして、そこの後援会の会長から政策秘書の飯塚さんという方をご紹介していただきまして、そこから直接ですね、(国交省の)次の事務次官になるという予定の方に電話をいれていただいてですね、(国交省幹部は)『その件でしたら国交省で大変な問題になっておりますから、必ず対応させますといっています』という言い方の報告とかもいただいています」
 飯塚秘書が小嶋氏の目の前で「次の次官」といわれる国交省最高幹部に電話し、「必ず対応します」と確約させたという説明だ。目撃証言とピタリ一致する。
 しかも、民主党は安倍関与疑惑の発端となった小嶋陳情の際の同席者の目撃証言を次なる安倍追及の”隠し玉”として温存している。
「安倍長官が事務所から国交省に一切働きかけはしていないと否定すればするほど同席者の証言との矛盾が出てくる」
 と民主党議員は語る。
 当の安倍氏は心配する側近議員たちに、
「大丈夫だよ」
 と、声をかけているというが、裏では安倍事務所の関係者は真っ青になっていた。小嶋氏から陳情を受けていたこともさることながら、安倍氏サイドがより重大視していたのは、小嶋氏が住民説明会で『安晋会』という安倍氏後援会のメンバーだと漏らしていたことだった。
 安倍氏の政治資金に詳しい森派関係者が明かす。
「安晋会はこれまでほとんど表に出たことがない秘密後援会組織の一つで、事務所では飯塚秘書が担当者としてまとめていたが、資金面など不透明な部分が多い。小嶋がその会員を名乗ったことで存在を知られ、詮索されると困ったことになるはずだ」
 通常、政治家は後援会を政治団体として届出し、会費を集めて例会やパーティを開く。しかし、総務省や東京都、地元・山口県にも『安晋会』なる政治団体は届けられていない。…(略)…


「週刊ポスト」2006.02.10号

 ライブドア事件・総力取材第2弾
 怪死した元側近は安倍晋三「安晋会」(後援会)とつながっていた!
 自民党が怯える堀江容疑者の「沖縄闇マネー」

…(略)…
 とくに沖縄では小泉内閣が推進する構造改革特別区の「情報通信特区」や「金融特区」の地域が指定されてIT企業の進出が相次いでいる。ライブドアは小泉改革を利用して沖縄での”闇ビジネス”を拡大したとみられており、得た資金を政界工作に使っていた疑惑を指摘されている。
 そうなると、ライブドア事件の背景には、小泉政権下でふくれあがった巨額のIT政治利権の存在がクローズアップされてくる。

 野口氏が「理事」と紹介され登壇

 堀江マネーの政界流入の一端が明らかになった。
 その標的はなんと、今をときめく安倍晋三官房長官だった。本誌が前号の耐震偽装問題追及記事で安倍氏の秘密後援会として指摘した『安晋会』が、ライブドアと安倍氏をつなぐ接点となっていたことがわかったのである。
 安晋会は政治団体としての届け出はなく、安倍氏の資金管理団体や自民党支部(山口県第4選挙区支部)の政治資金収支報告書にも、寄付などの記録はない。
 安倍事務所は「安晋会は安倍を囲む有志の親睦会です。政治活動のために寄付を受けたり、支出もしていません」と説明している。
 だが、安倍氏が自民党幹事長に就任すると、東京大手町のパレスホテルで安晋会主催の『幹事長就任を祝う会』を盛大に行なっていた。本誌は複数の出席者からパーティの様子を取材することができた。
「安倍先生が幹事長になってしばらく経ったことだから03年の暮れか04年の初めでした。他の政治資金パーティと同じように会費は2万円。立食形式で寿司やオードブルが並び、パレスホテルの大ホールが満員になりました。安倍先生はゆくゆくは総理総裁になれるように研鑽してゆきたいと挨拶されていました」(中堅企業の経営者)
 そのパーティは安晋会の総会を兼ねたもので、安倍氏の挨拶の後、理事が紹介され、演壇の上に並んだ。有力財界人や有名建築家に混じって、ひときわ若い人物が紹介された。出席した大手企業幹部はその人物をよく覚えていた。
「自殺したエイチ・エス証券の野口氏でした。実質的な親会社であるHISの澤田秀雄会長と一緒に野口氏も壇上に上がり、理事だと紹介されていた。ほかの理事たちが大物財界人ばかりなのでちょっと意外な印象でした」
 堀江氏の片腕だった野口氏が、安倍氏の秘密後援会の理事を務めていたという重大証言である。
 HIS経営企画室では、
「澤田会長が安晋会に所属していることは承知している」といい、エイチ・エス証券は「澤田と野口が一緒に何度か安倍議員のパーティに出席したことがある」(広報担当)と回答した。
 安倍氏と野口氏はどこで知り合い、後援会の幹部を務めるような関係を築いたのか。安倍氏の政治資金に詳しい森派関係者が語った。
「安倍さんは東京や大阪、九州など全国でベンチャー企業の経営者を募って囲む会を立ち上げており、その橋渡しを熱心にやっているのが安晋会会長のS氏です。安晋会は安倍さんの父・晋太郎さんの時代からの後援者と、晋三さんを囲むベンチャー経営者をまとめる性格を持ち、その人脈がパーティ券をさばく強力な金脈になっている。野口氏が理事になったのも、急成長で資金が豊富なライブドアなどITベンチャー企業の資金窓口として期待されていたからでしょう」
 重大な疑惑がある。
 幹事長就任を祝う会が行なわれたパレスホテルの大ホールは、最大で定員約800人。満員だったという証言から1人2万円の会費だけで1000万円以上の収入があった可能性がある。
 総務省政治資金課では、
「資金集めパーティは政治団体しか開くことができない。届け出のない任意団体がパーティで得た収入を政治家に寄付したら政治資金規正法違反になります。さらに任意団体のパーティであっても、収入総額が1000万円に達した場合は収支報告義務が生じる」
 と指摘する。
 ところが、安倍氏の政治団体の政治資金収支報告書には、該当する政治資金パーティを開いたという記載は見当たらない。
 改めて野口氏との関係について安倍事務所に質すと、「安晋会の構成、運営、経理については存じません」の一点張りだ。堀江マネーを含む巨額のパーティ収入はどこへ消えたのか。本誌はさらに追及する。


情報紙「ストレイ・ドッグ」(山岡俊介取材メモ)

2006.02.07
 「安晋会」会長は杉山氏とは別人だった

●世界最大級の金融・保険企業AIGグループの吉村文吾会長

 本紙は、耐震偽造事件の相談で、ヒューザーの小嶋進社長が安倍晋三官房長官秘書を紹介してくれたと証言する「安晋会」会長とは、“代表”の間違いで、「ゴールネット」なる会社の杉山敏隆会長ではないかと推測し、この間、問題提起して来た。 ところが、熱心に取材している某全国紙記者の方から、“会長” は別に存在し、それは世界最大級の金融・保険企業であるAIGグループの日本トップである吉村文吾会長であるようだとの情報が寄せられた。
 そこで別媒体で本紙・山岡が取材してみると、代理で対応してくれた広報部長は、小嶋社長を紹介したかどうかに関してはノーコメントとのことだったが、「安晋会」会長であることについては認めた。そして、そうなると、なるほどとも思ってしまう。
 本紙は先に、アパグループの社長夫婦が主宰する「ワインの会」で、安倍氏と杉山「安晋会」代表が一緒に映っている写真を紹介したが、実はそのなかに吉村AIG会長も仲良く納まっていたのだ。
 杉山「安晋会」代表が会長を務める「ゴールネット」のホームページを開くと、業務提携先としてAIGグループ(AIU保険会社、アリコジャパン)、また主要取引先にAIU保険があるのも、「安晋会」の会長と代表の関係と思えば、納得行くというものだ。
 なお、アパグループ代表夫婦主宰のワインの会に安倍氏が出席しているのは、アパ代表が安倍氏の所属する自民党派閥・森派の森喜朗元首相と同じ石川県出身ということで懇意で、その繋がりから来ていること。アパ代表が特別に安倍氏と親しいわけではないようだ。
 そして、安倍氏の秘書に小嶋社長を繋いだのが世界的企業・AIG会長となれば、安倍氏は否定しているが、国土交通省への働きかけはなおさらあり得ると思ってしまうのは本紙だけだろうか。
 …(略)…


「週刊大衆」2006.02.27号

 「小泉の子分」安倍三官房長官に政界追い落とし「火の手」

 …(略)…
 その問題の衆院予算委員会は1月26日。民主党の馬淵澄夫議員は、9日前の耐震偽装問題に関する国会証人喚問の席で、あのオジャマモンこと小嶋進ヒューザー社長が、「安晋会」なる後援組織の会長の紹介で、安倍氏の秘書に会い、国土交通省側に働きかけてもらったと証言したことを受け、その真偽を安倍官房長官に問い質した。
 これに対し安倍氏は、いつものクールさはどこへやら、声を荒げ、馬淵議員の質問内容こそ”偽装”だと口走ったのだ。当の馬淵議員が、そのときの感想をこう洩らす。
「政府のスポークスマン、内閣の要、またポスト小泉のトップランナーといわれる安倍さんが、あそこまで感情的になって、私の質問を”偽装”とまでいって反論されたことに強い違和感を感じました。”政治家たるもの、いつなんどき疑惑を受けたら、自ら、その疑惑を晴らすために行動するのが筋”と、総理も述べている。私は、ただ政治家としての責任を全うすべく、国民が納得いく答弁を、お願いしただけなんですが…」
 そのせいか、最近、安倍氏の記者会見での顔色も心なしか、すぐれないという。
「あの予算委員会での発言に対し、親分の小泉首相も、安倍さんの打たれ弱さが出たと思ったのか、苦笑いしていましたね」(前出・政治部記者)
 実は、この耐震偽装問題で出てきた、問題の安倍官房長官の後援組織「安晋会」は、いまだ全貌が明らかになっていない。その会長が誰なのかさえ、判明していなかったのだ。だが、本誌取材班は、その人物を特定した。
 米国を代表する大手生保などを傘下に置く、巨大グルーブ企業の日本法人代表(日本人)だったのだ。
 そこで、その代表に、ヒューザー小嶋氏の件の真偽を確かめるべく取材をかけてみたところ、本人に代わって、広報部長が次のように答えた。
「確かに、本人は『安晋会』の会長と申していました。ただし、ただの私的な集まりに過ぎず、会長として何かやっているわけでもないと……。
 小嶋証言のように、本当に安倍さんの秘書を紹介したか?本人は、それについては誤解を生むといけないとして、どうこういえないと伝えてくれとのことでした」
 と、なんとも歯切れの悪いコメントが返ってきたのだ。
 だが、小嶋社長の証言どおり、安倍氏の秘書を紹介したのが大手米国企業の日本法人代表となれば、安倍サイドが小嶋社長をぞんざいに扱ったとは考えにくく、国交省への働きかけはあったのでは、との疑惑は深まるばかりだ。
 政治評論家の本澤二郎氏がいう。
「安倍さんの親分の小泉さんは”官から民へ”といって、やってきましたが、その結果、どうなりましたか?国がやるべき大事なことまで民間に任せた結果、耐震偽装事件が起きたんじゃないですか。
 しかも、郵政の民営化は、その最たるものですが、簡保を民営化して喜ぶのは、外資系生保でしょう。
 安倍さんは、少なくともヒューザーの小嶋さんが”飛び込みで来た”といっていますが、それを鵜呑みにはできません。政治家、それも政府の閣僚であれば、なおさら、なんの関係もなくて部屋に通すわけがない。あの”偽装”発言の異常な興奮ぶりといい、ますます疑惑が濃くなってきたといっていいでしょう」

 疑惑に必ず絡む「安晋会」!

 さらに最近になって、安倍氏にとって、耐震偽装以上にまずいスキャンダルが騒がれ始めている。耐震偽装でクローズアップされた後援組織「安晋会」と、ライブドア事件の人脈が結びつくという報道も飛び出しているのだ。
「一部週刊誌が、沖縄で自殺したとされるエイチ・エス証券副社長だった野口英昭氏が『安晋会』理事だったと報じたんです。そのほか、『安晋会』代表の経営する会社の得意先に、ヒューザーはもちろん、ライブドアグループ企業の名があることも判明しています」(全国紙社会部記者)
 …(略)…


日刊ゲンダイ【田中康夫の奇っ怪ニッポン】2006年2月1日 掲載

 官房長官殿、安晋会について説明責任を

「会見で安倍(晋三)氏は『(小嶋氏が)飛び込みで来た』と言っていますね。しかし、議員会館は飛び込みでは入れないでしょ」と尋ねた佐高信氏に対し、「勿論(もちろん)、アポイントを入れた上で、飯塚洋さんという秘書にお会いした訳です。ですから、私も何故、ああいう言い方をされたのか、ちょっと理解出来ませんでした」と小嶋進ヒューザー社長は答えています。本日発売の月刊「現代」3月号に於いて。
 永田町に位置する議員会館では、所定の用紙に氏名等を記して受付に提出すると、訪問先の議員事務所に内線電話で了解を得た上で、当日限りの入館証を発行する仕組みです。「飛び込み」は有り得ないのです。
「昨年の11月17日です。安倍先生の後援会長さんの御紹介で政策秘書の飯塚さんにお会いしたんですが、衆議院議員会館の事務所にお伺いして、30分くらい居た」「この状況を何とかして欲しいという事で、伺う前に既に『内閣官房長官政策秘書飯塚洋様』と宛てた上申書も郵送しております」。極めて説得力を有する数々の不可解な事実を基に、「自殺」に非ず「他殺」に他ならぬ、と「週刊文春」のみならず「週刊ポスト」も問題提起した野口英昭エイチ・エス証券副社長は、安倍官房長官の「私的」後援会・安晋会で理事を務め、幹事長就任後に大手町のパレスホテルで開催された祝賀会でも、壇上で紹介されています。
 而(しか)して、気骨溢れるジャーナリストの山岡俊介氏に由(よ)れば、新興宗教紛いの「慧光塾」なる経営コンサルタント会社の人脈と、故・新井将敬代議士の個人的会合の流れを汲む「日本ベンチャー協議会」の人脈が交差する場所に、杉山敏隆氏が会長を務める安晋会が存在し、前者に小嶋氏、後者に野口氏が連なっているのです。
 因(ちな)みに「週刊ポスト」は今週号で、「他の政治資金パーティと同じように会費2万円」で「安晋会主催の『幹事長就任を祝う会』を盛大に行な」いながら、実は安晋会は「(政治団体としての)届け出のない任意団体」で、「パーティで得た収入を政治家に寄付したら政治資金規正法違反」、と指摘しています。
「我が息子で我が弟」発言の武部勤、「小泉首相とホリエモン、私がスクラムを組みます」発言の竹中平蔵の両氏に留まらず、小嶋氏との関係に関して国会答弁で“色を成した”安倍晋三氏にも又、耐震偽装と偽計取引の「W偽」に関し、平易で納得し得る説明責任が求められているのです。無論、「君のような若者が政治に入って来るのは素晴らしいよ」と握手を求めた小泉純一郎氏に於いても。
 のみならず、忌まわしき9・11に相応(ふさわ)しき投票日の社説で、「小泉首相はこれまでに見た事もない型の首相だ」「響きの良いフレーズの繰り返しは、音楽の様に聴く人の気分を高揚させる」「ここは一番、気迫と覚悟の小泉首相に賭けたい。これまでの4年で連立政権が何をしてくれたかはさておき、この先に期待しよう」と「気迫と覚悟」を読者に強要した、教養に満ち溢れた「朝日新聞」の編集幹部と経営幹部にも、説明責任が求められているのです。
 意図的としか思えぬ小生への名誉毀損も含めて近時、偽装・偽計報道が相次ぐ“埃”高き彼等は、「言葉は感情的で、残酷で、ときに無力だ。それでも私たちは信じている、言葉のチカラを。」と創刊127周年記念日の1月25日、実に片腹痛いヨゼフ“ナチス”ゲッベルス的居直りとしか思えぬ「ジャーナリスト宣言」を発布した直後なのですから、猶(なお)の事(苦笑)。【田中康夫】


 経済ヤクザとバブル崩壊 (kaetzchen) 2006-02-04 16:33:30

バブル崩壊後,安倍晋三の実質的な後援会である「安晋会」ができました。それまで,地元の山口にしか資金源がなかった安倍にとって,産まれ育った首都圏に拠点を据え,資金源を確保するためには,政治団体として届けず活動出来る「自由な場」が必要だったのです。

以前,安倍の下関の自宅が小倉の組織暴力団工藤会によって襲撃されたということを書きました。しかし,下関は元々地元暴力団合田組という博徒のシマであり,神戸の広域暴力団山口組の庇護を受けることでシノギをしてきたという歴史があります。

つまり,拉致事件や武器・麻薬の密輸の便宜を計っておきながら,安倍が工藤会と手を切ろうとして(拉致事件は安倍のでっちあげだという影の事実を見えなくさせるため)差し出した手切れ金に工藤会が不満を示したというのが,上記の自宅襲撃事件の裏の真相だったのです。

そうなれば,当然,安倍は地元ヤクザの合田組つまり広域暴力団山口組の関東進出を手助けすることで,資金源を確保しようとします。その結果,目をつけたのが山口組と関係の深い,サラ金武富士だったのです。暴力団の貯金箱とも言われている武富士が困った時には,常に安倍の力添えがあったという訳ですね。武富士が経団連に入会したのも,その後ガサを入れられてもしぶとく復活したのも,全て「安晋会」というトンネル団体があるおかげだったのです。

週刊ポストに「(沖縄で死んだ)野口英昭氏は安晋会の若手理事」とあったのも,やはり安倍晋三の資金源の一つに過ぎなかったことが分かります。証拠隠滅のためにわざわざ専門の刺客を送り,沖縄県警がその殺され方に怖れおののき司法解剖もせずさっさと火葬にしてしまったのは,まさに警察と暴力団と土建資本と安倍との癒着による陰惨な事件なのだと断定して良いのではないでしょうか。


 一月十七日の衆院国土交通委員会での小嶋進・ヒューザー社長証人喚問の一問一答

≪馬淵澄夫氏(民主)≫の質問
──伊藤公介氏のほかの政治家に相談やお願いをしたことは?
「国会議員では伊藤信太郎氏、知り合いでは元参院議員の阿南一成氏」(小嶋・ヒューザー社長)
──十一月二十日、グランドステージ川崎大師の住民説明で、あなたは「親交のある市議会議員から国会議員、石原慎太郎氏に至るまで、また安倍晋三氏を通じ、この問題は国の責任だと、デペロッパーは何も悪くないんですよと国交省の役人に言ってもらった」と言っている。安倍氏に働きかけた事実はあるか。
「秘書に相談したことはある」
──だれか。
「飯塚さんという名前だったと思う」
──安倍氏の政策秘書だ。あなたは(安倍氏の後援会の)安晋会の会長から飯塚秘書を紹介してもらい、直接、次の事務次官になる予定の人に電話を入れてもらったと話した。そして「その件は国交省で大変な問題になっているから必ず対応させると言っている」との報告をもらったと言っているが事実か。
「言った」
──飯塚氏にいつ、どの場で伝えたのか。
「調べてみないとはっきり分からない。(場所は)議員会館」
──十一月十八日、安倍氏は閣議後の会見で「誠に遺憾。今後国交省で遺漏なき対応を図る」と述べた。あなたは十一月二十日、安倍氏に自分が働き掛けているから遺漏無き対応と言ってもらったとマンション住民に説明している。
「そう理解したかもしれない」

http://blog.goo.ne.jp/c-flows/e/5a9e48e220e13d92cc32b1764093a8ca

安倍晋三首相「相続税3億円脱税」疑惑・・・

2011年01月14日 01時13分24秒 | Weblog

週刊現代9月29日号 P26~30
(1)本誌が追い詰めた安倍晋三首相「相続税3億円脱税」疑惑
     亡き父・晋太郎の「遺産」6億円と“出資者不明”の巨額献金
                   ジャーナリスト 高瀬真実と本誌取材班

発売前から永田町は騒然

「なぜ参議院選挙大敗の責任を取らなかったのに、内閣改造のおわったいま辞任
するのか」
「インド洋の給油活動延長に職を賭す、といっていたのに逃げではないのか」
「所信表明をした直後で辞めるのは前代未聞」

 9月12日午後2時より開かれた安倍晋三首相(52歳)の記者会見では、本会議の直前までやる気を見せていた首相が突然、心変わりした理由は何か、納得のいかない記者たちから質問が相次いだ。しかし、最後まで首相は納得のいく説明ができなかった。

 その同日、首相の辞任を知らせる毎日新聞夕刊は、その辞任理由を「今週末発売の一部週刊誌が安倍首相に関連するスキャンダルを報じる予定だったとの情報もある」とー面で報じた。一部週刊誌とはいささか失礼な表現ではあるが、社会面にははっきり『週刊現代』と名前が出ている。

 そう、安倍首相を辞任に追い込んだスキャンダルとは、本誌が9月12日中に回答するように安倍事務所に質問をつきつけた「相続税3億円脱税疑惑」のことなのである。政治団体をつかった悪質な税金逃れの手口を詳細に突きつけられて首相は観念したというわけだ。

 実は、本誌は安倍首相の政治団体に関してー年にわたる徹底調査をしてきた。そのキッカケは、ベテランの政治記者から聞いたあるウワサだった。

 「安倍首相の父親である安倍晋太郎外相(当時)は総理総裁を目指して巨額の資金を用意していた。ところが闘病の末の逝去でそれが宙に浮いてしまった。そのカネはいったいどこへ行ってしまったのだろうか。晋三氏への相続に不透明なところが、あるのではないか」

 晋太郎が率いた安倍派時代を知る自民党のある古参秘書に、この語をぶつけたところ声をひそめていった。

 「'91年5月に父親が亡くなったときは、まだ中選挙区制なので補選はなく、'93年7月に総選挙で初当選するまで晋三さんは、秘書を解雇したり事務所も滅らしたり、リストラに大変だった。『なかなか政治資金が集まらない』と金庫番の秘書がよく派閥の事務所に相談に来ていました。晋太郎氏の派閥を引き継いだ三塚派会長(当時)の三塚(博)さんが見るに見かねて、お世話になった晋太郎さんの三回忌を兼ねた励ます会を計画して、派閥ぐるみでパーティー券を売ったのです。それが、フタを開けたら晋三さんが集金カトッブですからね。派閥の秘書仲間たちはみんなひっくり返りました」

 そのパーティーとは、'93年4月15日、首相の指定団体(当時)の「晋和会」が赤坂ブリンスホテルで開いた「安倍晋太郎先生を偲び安倍晋三君を育てる会」だ。2万円のパーティー券を1万4766人に売り、2億9636万円の収入があった。費用5300万円を差し引いて2億4300万円余りのボロ儲けだ。

 しかし、ベテラン秘書が腰を抜かしたのは、それだけではなかった。

 安倍首相が初当選した'93年、「晋和会」と「緑晋会」という二つの政治団体だけで、その収入は9億1067万円。新人議員でありながら、2位の橋本龍太郎政調会長(当時)らを抑えて、集金力で政界トップに立ったのだ。細川政権の誕生で自民党が野党に転落し、ベテラン議員もカネ集めに四苦八苦する中で、その突出ぶりは際立った。

 この年から始まった政治団体の資産公開でも、安倍首相は預金6億8949万
円で、金満家で有名な糸山英太郎衆院議員一当時)らに次いでいきなり4位にラ
ンクされている。

 そのカラクリは何か。当時注目を集めたのは、前述の「緑晋会」という団体だ。
'93年の収支報告書では、年間収入4億9595万円の93.8%にあたる4億6508万円の内訳が、1件あ
たり100万円以下のため「献金者を明示しない企業団体献金」として記載され
ていたのである。

 4億円以上もの献金者とは誰か。企業献金が集まらないと一言っていた安倍事務
所にふってわいた巨額献金の出所をめぐって、「安倍晋太郎の隠し資産が出てき
た」(ベテラン秘書)というウワサが駆け巡ったという。

 晋太郎氏から晋三氏への相続に政治団体が悪用されているのではないか――。この疑惑にせまるべく、本誌はあらためて安倍ファミリーの政治団体をすべて洗い直すことにした。

節税術をフル活用

 安倍首相が神戸製鋼所を辞めて、第一次中曽根内閣で外相に就任した父の大臣秘書官になったのは、'82年12月6日のこと。ポスト中曽根をニューリーダーの「安竹宮」(安倍晋太郎、竹下登、宮澤喜一の三氏)で争い始めたころだ。

「晋太郎先生は、派閥の事務所に来ては『晋三を頼むよ』と。もう後継は決まりだと誰もが思いましたね」
 清和会のベテラン秘書が当時を振り返る。

 秘書官当時、安倍首相は父の外遊にいつも同行し、帝王学を徹底的に叩き込まれた。そして、外相だった父が息子に遺したものは、政治や外交にあたるものが身につけるべき教訓だけではなかった。

 大手新聞の当時の番記者はいう。
「旧制6高(現・岡山大学)OBの財界人でつくる『六晋会』や『化学晋和会』『住宅晋和会』などの業種別後援会や、派閥の議員の地元に作られたという『千葉晋和会』『岡山晋和会』などの地方後援会。ニューリーダーと呼ばれるにふさわしく、政治活動の基盤を支える政治団体の数も当時の議員でトツプでした」

 本誌は、当時の関係者の証言をもとに、全国の収支報告書を集め、連結収支報告書を作り、分析した。その結果、多数の政治団体を使った驚くべき資産相続の実態が明らかになった。

 故安倍晋太郎氏は、晋三氏を外相秘書官にした'82年から病没する'91年までの10年間に、自らの政治団体である「晋太郎会」に2億5985万円、「晋和会」に2億5897万円、「夏冬会」にー億1940万円、3団体合計で6億3823万円もの巨額の個人献金をしていた。

 3つの団体はいずれも「指定団体」である。指定団体とは当時の政治資金規正法に則って届け出をした政治団体のことで、政治家はこの指定団体に寄付すると、その額に応じて所得控除を受けることができた。しかも控除額は青天井だったのである。

 晋太郎氏は、政治家にしか使えないこの所得控除制度をフルに活用していたのだ。これだけの巨額の個人献金をする一方で、自らの申告所得額は極端に少なかった。同じ10年間で1000万円以上の高額納税者名簿に掲載されたのは、病気療養中の'90年の納税額3524万円、わずか一度だけだった。その間に6億 3000万円以上も献金をしているのに、である。

 そして問題なのは、この政治団体がそのまま息子の晋三に引き継がれ、相続税逃れに使われたことだ。

 晋太郎時代から安倍事務所に出入りしていた全国紙の記者は言う。

「晋太郎先生のときは、議員会館裏にある『TBR永田町』と『山王グランドビル』にそれぞれ個人事務所があり、赤坂ブリンスの派閥事務所とあわせて3ヵ所に金庫番の秘書がいました。さらにそれぞれの金庫番が管理する政治団体が、地方もふくめていくつもあったのです。
 晋三さんはそれをそのまま引き継ぎました。代替わりしてからは、『TBR』の事務所は閉めて、親父の代の金庫番は全員解雇しました。金庫番を一人にするために、政治団体もかなり整理しましたが……」

 実際に本誌で調べたところ、安倍晋太郎氏の生前に作られた「安倍系団体」と呼ぶべき団体は、タニマチ的なものも含めて、66団体にものぼった。さらに調べると、晋太郎氏は'91年5月に亡くなっているが、その直前の'90年末時点で、それらの団体には合計で6億6896万円もの巨額の繰越
金があった。

 安倍首相は父親の死後、政治団体を引き継ぐのと同時にそれら巨額の繰越金をもそっくり引き継いだのである。調べてみると、父の死の直後、'91年末時点では22団体が解散し、44団体になっている。資金残高も4億円余りに滅ってはいる。ところが、解散などに伴って整理された資産などの行方を追っていくと、どこに献金したかが不明になっている「消えた寄付金」が、合計で1億8522万円もあったのだ。2億円近い巨額なカネはいったいどこに消えてしまったのか。

国税幹部は「脱税」と断言


 繰り返しになるが、これらの「消えた寄付金」を含めると、首相は、亡父が政治団体に寄付した6億円の個人献金を政治団体ごとそっくり相続したことになるのだ。

 安倍首相は、これまで主な相続資産は、山口県長門市の実家と下関市の自宅のみとしてきた。相続した'91年以降の高額納税者名簿には首相の名前はない。

 政治団体に投じられた6億円の献金が、そのまま晋三氏に渡っていれば、これは政治活動に名を借りた明白な脱税行為ではないのか。

 財務省主税局の相続税担当の幹部に、連結収支報告書の数字を示しながら聞いた。政治団体を通じた巨額の資産相続に違法性はないのか?

「政治団体に個人献金した資金が使われずに相続されれば、それは相続税法上の課税対象資産に該当します。政治団体がいくつもある場合は、合算した資産残高のうち献金された分が課税対象になります。たとえ首相でも、法律の適用は同じです」

 そう説明した幹部は、連結収支報告書の数字を見比べてきっぱり言った。

「この通りなら、これは脱税ですね」

 仮に、政治団体を通じて相続した遺産が6億円とすれば、当時の税制ではー億円以上の最高税率50%が適用されて、相続税額は約3億円になる計算だ。

 もちろん、税法上は相続税の脱税の時効は最大で7年。首相が罪に問われることはない。しかし、これまでー億円以上の脱税は、政治家でも逮捕されてきた。重大な犯罪であることに変わりはない。

 主税局幹部は、個人的な意見と断って、こう言った。

「本来は、国税庁がきちんと見つけておくべき問題ですが、時効になった今は、税法上の徴税はできません。しかし、財政の窮状を行政の長として考えて、ぜひ時効の利益を放棄して、自発的に納税していただきたいですね」

 政治資金を国に寄付することは、公職選挙法で禁止されているが、過去に未納分の納税をする場合は、適用外なのだという。

 実は先の「緑晋会」は、'97年に名称を「東京政経研究会」と変えて今も平河町の首相の個人事務所として機能している。'05年末時点の東京政経研究会の預金残高は3億円ある。3億円の納税にちょうど困らない。

 本誌は政治資金報告書などから作成した資料を示したうえで、安倍事務所にこの相続のカラクリを指摘し、どのような処理をしたのか、脱税ではないのか、というA4にして5枚の質問状を送った。そして回答期限が迫った12日の午後2時、安倍首相は突然、辞任を表明したのである。しか
し、いまもって質問状への回答はない。

 内閣改造に際して、首相は「政治とカネに関して十分な説明ができない閣僚は去ってもらう」と言い放った。その言葉が自らにはねかえってくるとは、安倍首相もゆめゆめ思ってはいな
かったのだろう。(了)

http://www.asyura2.com/07/senkyo41/msg/1134.html


歴代首相が鳩山総理を“脱税王”と追及できない理由

 鳩山首相、そして同じく「政治とカネ」の問題で追及されている小沢幹事長の資金の原資はともに母の資産や父の遺産だという。

 つまり、それらは親族のカネである。だからこそ相続税が発生しているのではあるが、永田町には同じような二世、三世の世襲議員たちは少なくない。ならば、彼らは一体どうそれを処理したのだろうか。
自民党の歴代総理も
多くは「脱税王」

 3年前、筆者は週刊文春の連載をまとめた「世襲議員のからくり」(文春新書)を出版し、信じがたい世襲議員たちの無税相続の実態を世に問うた。

 政治資金管理団体や政治団体は非課税で相続できるため、多くの世襲議員がその制度を悪用し、贈与税や相続税の支払いを逃れているという事例を追及したのだ。

 11年前、党首討論で鳩山首相と対決した小渕首相の政治資金管理団体は、小渕氏の死後、その後、衆議院議員に当選した次女の小渕優子氏に無税で引き継がれている。筆者が調べただけで政治団体を迂回させる方法で、約1億2千万円もの資金が無税で相続されたのだ。

 その後の森元首相も同様だ。石川県議の長男に対して、自民党石川県連を通じて、特別扱いともいえる資金提供を行っている。

 小泉純一郎元首相も例外ではない。次男の進次郎衆議院議員に自らの政治資金管理団体を名義を変更するだけで、実質上はそのまま受け渡している。

 安倍晋三元首相はもっと悪質だ。父・晋太郎外務大臣が死去した際に残した約6億円の遺産について、相続税・贈与税を払った形跡はない。派閥に残ったカネのすべてとは言わないが、現在に至るまでそのほとんどの使途と存在について沈黙を続けている。

 福田元首相も同様だ。父・福田赳夫首相が選挙区を譲るとき、不動産も含めた資産を政治団体経由で長男である康夫氏に渡している。

 例外は麻生太郎元首相くらいのものであろう。資産家として、また企業家としての立場から、そうした政治的な無税相続は行っていない。

 つまり、日本で党首討論が始まってからの首相はみな、多かれ少なかれ「脱税王」なのである。

 見える「脱税」を追及することはもちろん大切だ。だが、それ以上に、見えない「完全脱税」を追及する視点もまた欠かしてはいけないのではないだろうか。

週刊上杉 隆  http://diamond.jp/series/uesugi/10114/

大反響第2弾「人口半減社会へ」小さくなるニッポン 日本経団連も警鐘レポートを作成

2011年01月07日 22時40分55秒 | Weblog
2010年12月22日(水) 週刊現代 人口7000万人経済 そのとき会社は?

以下ネット版http://gendai.ismedia.jp/articles/print/1769より本文引用


第1弾 はこちらhttp://gendai.ismedia.jp/articles/-/1690をご覧ください。

NHKの受信料収入は半分に。番組が作れない/
スーパー、デパート客がいない/
マンションは暴落、住宅メーカーは大ピンチに/ビールも売れない、クリーニング店は閑古鳥/
トラックの運転手がいないから宅配便が届けられない・・・ほか

 人口減少社会は自治体のみならず、企業にとっても深刻な問題である。国内市場が確実に縮小に向かうなかで、私たちに身近な企業は、どんな苦境を迎えるのか。対策は十分に進んでいるのだろうか。
16の県で人口が半分に

 12月6日、日本経団連は『サンライズ・レポート』と題された、A4で49ページにわたる文書を発表した。

 経団連の米倉弘昌会長自らが取りまとめたとされるもので、経済の低迷が今後も続けば、世界において日本の存在感が低下すると警鐘を鳴らしているが、その冒頭部分には、

< 人口減少社会にあっても国民が安心・安全で豊かな生活を享受できる国を目指し、この難局を乗り越えていかなければならない >

 との一文が書かれている。人口減少社会に対応すべく、産業界はようやく重い腰を上げたのだろうか---。

 本誌12月11日号にて、人口減少社会をテーマにした記事を掲載したところ、各所から大きな反響が寄せられた。

 前回は、2035年までの各都道府県の人口予測を掲載し、この年までにすべての都道府県が人口減少を迎えることを示したが、実は本当に深刻な人口減少はその先に待っているのだ。

 右の表を見ていただきたい。これは、人口問題を専門とする土居英二・静岡大学名誉教授が作成した、2050年までの各都道府県の人口予測を記した表である。

 この表を見ると、わずか50年で人口が50%程度の減少を見せる県が16にも上ることが分かる。人口が半分になった都道府県。

 その姿がどんなものか想像できるだろうか。

「人口が半減する県では、消費市場が縮小して、農林水産業からサービス産業まで、すべてが衰退し、産業が消滅することも考えられます。産業の衰退によって税収が減り、社会資本の維持や、医療・介護などを含めた公共サービスを供給できない地域が増え、破産に追い込まれる自治体も増加することが考えられます」(土居氏)

 農林水産業の従事者が減少すれば、食糧自給率が低下する。また、林業の従事者が激減すると、国土が荒廃し、豊かな緑は失われることになる。

 さらに財政難により自治体が教育・医療・交通といったインフラを維持できなくなる可能性はもちろん、労働力人口の減少により、警察・消防といった治安組織の機能が低下し、日本が「世界一安全な国」と呼ばれることもなくなるかもしれない。

 つまるところ、いまは「当然」と思って受けている公共サービスや自然の恩恵が、2050年には享受できないかもしれないのだ。

 こうした問題は40年後に突然現れるのではない。人口減少はすでに日本の各地で着実に進行している。

 和歌山県の人口は、今年半世紀ぶりに100万人を割り込んだ。県南部に位置する、人口2万人程度の自治体の首長は、本誌の取材に「不景気で和歌山に仕事がないから若者が他県に流出する。若者が流出すると、消費を支える層が薄くなり、さらに景気の悪化を招くという悪循環が起こっている」と語った。
食糧が調達できない

 現時点ではまだ人口減少が起きていない自治体でも、これは決して先送りにはできない問題だ。現在の人口が約140万人で、2030年までは人口増加が続くと見られる神奈川県の政令指定都市・川崎市でも、人口減少への取り組みは最重要課題のひとつとなっている。同市の阿部孝夫市長が説明する。

「川崎市ではあと20年程度は人口増加が続くと思われますが、ある時点からは減少期に入り、それと同時に高齢化が進んでいきます。このことを念頭において、税収・財政が健全なうちに人口減少・高齢化の対策を進めておかなければ、一気に街が衰退してしまう。現時点でも、対策は遅れているぐらいだと私は考えています」

 こうした認識のもと、阿部市長は市の施設や病院などを中心部にまとめる「コンパクトシティー」構想や、社会福祉の整備などを進めている。

 また、世界でもトップレベルの環境技術を持つ大学・企業が集積する川崎市は「川崎国際環境技術展」を開催し、アジア各国の企業・大使を招くなど、海外への環境技術の移転に積極的に取り組んでいる。

「生産の現場が海外に移っていく中で、海外にも新たな市場を求めていかなければなりません。そこで、世界に誇れる川崎の、日本の環境技術を輸出し、成長産業となるような舞台を行政が整えていく必要があります。また、今後、アジア各国の高齢化を見越し、直面している高齢化の課題を解決することで、福祉産業を新たな成長産業にしていかなければいけません」

 阿部市長がこう言うように、人口減少は自治体だけでなく、日本の産業界にとっても深刻な問題となる。2050年までには1億人を切り、'70年代には「人口7000万人社会」の到来が予測されるニッポン。経済予測には常に楽観と悲観が存在するが、悲観的な見方によれば、現在約390兆円の国民所得は、2030年には約315兆円にまで縮小し、同様に現在マイナス0・2%の経済成長率は、2030年にはマイナス1・7%にまで拡大と、日本経済はまさに右肩下がりになることが予測されている。

 経済力低下による最も深刻な問題が、輸入購買力の低下によって、食糧やエネルギーといった重要な「資源」を手に入れられなくなることだ。日本が人口減少に苦しむ一方、世界の人口は増え続けており、食糧・エネルギーの価格は高騰する。農林水産業の従事者が減ることも考えると、最悪の場合、国民を養うに十分な食糧・エネルギーが調達できなくなってしまう。

 日本全体が「限界集落」となるのを防ぐためには、人口が減少するなかで、経済力を維持するという難題を解決しなければならない。しかし、労働力人口が現在の3分の2以下に減り、国内市場が縮小する中で、はたしてこの国の企業はこの難題を解決する答えを見つけられるのだろうか。
海外で稼げない会社は辛い

 3000万人から5000万人もの人口が減ると、すべての産業・企業が大きな影響を受けることは間違いない。なかでも最も深刻な打撃を受けるのが、現在国内を基盤としたビジネスを展開している企業だ。白川浩道・クレディ・スイス証券チーフエコノミストが説明する。

「人口減少により個人所得の合計金額が減り、消費が減少します。企業は国内で利益を上げにくくなるので、特に国内を中心に利益を得ている企業は、苦境に立たされることになるでしょう」

 例えば事業収入のうち、国内のウェートが約9割を占めるNHKは、その典型となるかもしれない。

「現在のところ、世帯契約数は伸びていますが、2030年以降は日本の世帯数が急速に減少することが予測されていますから、現行のシステムではNHKの経営が困難になってしまう可能性もあります」(NHK職員)

 現在NHKは世帯ごとの契約を結んでいるため、世帯数と受信料収入は密接な関係にある。人口減少・高齢社会においては、「単身世帯」の数が増えるので、たとえ人口が半分になっても世帯数が半分となるわけではない。しかし2030年以降の世帯数の減少は確実とされており、NHKの受信料収入が大幅に減少することは十分に考えられる。NHK職員が続ける。

「現在、有料契約対象である約4800万世帯のうち、約28%が受信料を支払っていない状態ですが、今後は人口減少や『受信料を支払えない世帯』の増加などによって、受信料収入が現在の半分近くにまで減る可能性も考えられます」

 NHKは今年10月、外部有識者を中心とした「NHK受信料制度等専門調査会」を設け、今後の受信料徴収の方法や公共放送のあり方について議論を始めたが、この報告書には「世帯数は、2015年以降減少に転じ、加速度的に減少が進む」ことがしっかりと記されてある。

 NHKが誇る良質なドラマや全国を網羅する報道、さらに地道な取材を重ねたドキュメンタリーなどは、受信料収入があってこそ制作可能なものである。NHKが番組を作れない---そんなウソみたいな話が現実となってもおかしくない。

 続いて、「不動産業も内需中心の産業ですから、人口が減少し、購入者が減ることで、市場自体が縮小します。戦略を持って特長のあるビジネスを展開できる業者でないと、生き残れない時代になるのではないでしょうか」と、不動産業界の行く末を案ずるのは、不動産マーケティング会社・アトラクターズ・ラボの沖有人代表だ。

「これまで毎年100万戸を超えていた住宅着工件数が、近年80万戸を割り込むようになったことからも、不動産業の未来が明るくないことが見て取れます」

 国土交通省によると、2010年度前期の国内新設住宅着工数は、1965年以降で最低となった。今後人口減少が進むなかで、さらなる住宅需要の低下が起こるのは自明であり、市場の縮小は避けられそうにない。

 また、今後人口が急速に減少すると見込まれる都道府県の地価が、ここ最近急速に下落しはじめている。例えば今年9月に公示された2010年の香川県の地価は、全地点において前年より下落し、その下落幅も年々大きくなる一方だ。

 地価が低下すれば、マンションや住宅の価格も暴落し、不動産業者・住宅メーカーの業績悪化は避けられなくなる。

「デベロッパーは、海外への進出を図る一方で、国内の需要を補うという観点から外国人向けのマンションや別荘の供給に力を注いでいくことも考えられるのではないでしょうか」(石澤卓志・みずほ証券不動産アナリスト)

 人口減少が進む結果、都内の高級マンションが中国人富裕層で埋め尽くされる日がくるかもしれない。
老人用「清涼飲料水」が並ぶ

 住宅・不動産業と同じく、百貨店(デパート)やスーパーも内需不振に悩まされることになるだろう。小売業全体の売上高が、'97年の約148兆円をピークに年々減少するなか、特に百貨店と総合スーパーの売り上げの低下は著しい。

「いずれも'97年以降ゆるやかに売上高が減少しており、現在では10兆円を切っています。近年、国内の大型百貨店・スーパーが次々と閉鎖していることは、百貨店業界の未来が明るくないことを指し示している。高齢者は若年層に比べて、装飾品や外食に費やす額が少ないので、現在のような販売戦略を続けていては、百貨店に明るい未来はないでしょう」

 大手百貨店調査部の社員がこう語るように、有楽町の西武百貨店、京都の阪急百貨店、それに吉祥寺の伊勢丹と、都市部で大型百貨店の閉店が相次いでいる。少子化の進む郊外にあるデパートでは、屋上のゲームコーナーがガラガラになっているところもあるという。いずれは店内がガラガラになってしまうのか。

 また、百貨店以上に急速な衰退が進んでいるのが、クリーニング店である。'92年に8200億円を誇った市場規模は、現在ではその半分近くまで縮小し、店舗数は約16万軒をピークに、現在では約13万軒まで減少した。労働力人口の減少とともに、今後スーツを着るサラリーマンの数が減るなら、クリーニングはますます斜陽産業となるだろう。

 百貨店と同じく、人口減少と消費者の嗜好の変化の二重の苦しみを味わうことになるのが、飲料系産業である。ビールや清涼飲料水は、高齢者には好まれない商品であり、今後国内市場では大変な苦戦が予想される。'01年には約3億9000万ケースの出荷量を誇っていたビールは、'09年には約2億 4000万ケースにまで減少。販売低迷を受け、アサヒビールは'11年8月末に西宮工場を閉鎖することを決定するなど、現段階でも国内市場は縮小傾向にある。

「海外に市場を求めて、企業再編と海外企業との合併の動きが加速するでしょうね。アサヒビールは8月、オーストラリアの大手飲料会社の買収を発表して業界を騒然とさせましたが、キリンホールディングスはフィリピン、サントリーホールディングスは韓国での市場拡大を目指すなど、アジアの成長市場を攻める姿勢を鮮明にしています」(アサヒビール中堅社員)

 猛暑にもかかわらず、今夏は過去最低の売り上げとなったビール市場は、今後も苦戦が予想される。また、高齢化の進行を見越して、飲料メーカーは運動を好む高齢者に清涼飲料水を売りたいと考えているが、いまの清涼飲料水は高齢者にとって甘すぎて、水で薄めて飲む人が多いという。いずれはコンビニに「薄口」と書かれた清涼飲料水が並ぶことになりそうだ。

 人口減少社会では「なり手不足」も各業界の大きな課題となる。なかでも国交省が心配しているのが、「トラック運送業界の労働力不足」だ。

「この業界は他産業と比べても平均年齢が2歳ほど高く、どこよりも早く高齢化と若年層不足に悩まされることになります。日本国内の物流体系はトラック輸送が主力となっていますが、トラック運転手の不足は日本の産業界にとって大きな痛手となるはずです」(国交省職員)

 この問題の解決の道を探るべく、国交省は'07年にドライバーの育成・確保に関する検討委員会を設置した。トラック運転手が減少したら物流が滞り、宅配便が届けられない、なんてことも将来的には起こりうるのだ。
日本は空っぽになる

 冒頭で述べたとおり、人口減少・高齢社会の到来は、ほとんどすべての企業にとって無視できない問題である。腕を組んで眺めているだけでは、産業の死、ひいては日本の死が待っている。本誌は日本を代表する複数の企業の幹部社員に、「人口減少・高齢化」にどう対応するのか、その対策や見通しを聞いた。

 丸紅の国際事業に携わる部署に勤める社員は、商社の未来についてこう語った。

「どの商社も当然、今後の人口減少・高齢化社会を念頭に将来ビジョンを立てています。やはり国外の市場を獲得していく必要がありますので、入社7年目から8年目までの社員は、全員半年から1年、海外に出す方針です」

 丸紅の次期計画では駐在員を増やし、海外に軸足を置くことを明確に打ち出しており、「丸紅に限らず、商社の海外志向はより鮮明になっていくだろう」とこの社員は語る。また、東京電力の社員は、同社の大胆な計画について説明してくれた。

「電力会社は設備が大きく、その維持に莫大なコストがかかります。そのため、人口減少・産業構造の変化の中で電力の需要が減ると、経営は大変厳しくなることが予測されます。

 家庭のオール電化の普及と電気自動車の普及で電力需要が維持されることを期待していますが、やはり海外事業の展開にかかっています。弊社の『中長期成長宣言 2020ビジョン』では、'20年までに最大1兆円の海外投資を行うことを計画しています。海外事業を担う人材も、現在の2倍以上に増やす予定です」

 これまでみてきたように、海外進出は企業が生き残るためのひとつの答えと見られている。しかし一方で、「本格的に企業の海外進出が進むと、家族と一緒に海外で暮らすケースが増え、さらに日本の居住者が減ることになる。

 そうなると国内には高齢者と、海外でビジネスができない人たちしか残らなくなり、日本国内の経済はさらにジリ貧になる可能性がある」(真壁昭夫・信州大学教授)と、海外進出の弊害を指摘する声もある。この板ばさみに、今後日本は悩まされることになるのだろう。

 国内での新規ビジネスの開拓チャンスを模索していると言うのは、富士通の幹部社員だ。

「ITシステム事業では国内市場の拡大はあまり期待できません。人口減少下ではどこの企業も社内のITシステム整備に投入する資金的余裕がなくなると予測されています。これからはITを使ったエコビジネスや老人医療分野でのIT活用法を提案するなど、あらたな分野での成長を目指すことになります」

 このように、人口減少社会の到来に対して、企業は決して無策で乗り越えようといるわけではない。しかし、今回本誌が複数の企業に「人口減少社会の到来に、どう備えているか」と質問をしたところ、「時間の都合で答えられない」「各部署に確認しなければ答えられない」といった反応がほとんどであった。本格的な人口減少社会の到来を前に、企業は万全の体制でこれを迎える準備が本当にできているのだろうか---。