共生の小路ーこの時代に生きる私たちの社会に、警鐘とひかりを見いだす人々の連帯の輪をここにつくりましょう。

社会福祉の思想は次第に成熟されつつあった。しかし、いつのまにか時は崩壊へと逆行しはじめた。

河村・亀井氏ら、生活などと「大同団結」の構え

2012年11月24日 20時38分05秒 | Weblog

 

減税日本代表の河村たかし名古屋市長や、山田正彦元農相、亀井静香元金融相らの新党は今後、脱原発や消費増税反対などを旗印に、「国民の生活が第一」などとの「大同団結」を模索する構えだ。

 「中道リベラル勢力の結集」ととらえる向きもあり、衆院選の構図に影響を与える可能性がある。

 「大きい政党を作ることを念頭に置いている」(河村氏)

 「理念・政策で一致していけるものが結束し、選挙戦を戦う。この集団を大きくしていく」(亀井氏)

 22日夜、都内のホテルで記者会見した山田、亀井、河村3氏は、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加などを掲げる日本維新の会(代表・石原慎太郎前東京都知事)と一線を画した、新たな第3極勢力の結集に意欲を示した。

 第3極の動きは、橋下徹大阪市長が率いた日本維新の会を中心に展開してきた。抜群の知名度を誇る橋下氏との連携が、「『勝ち組』に入る早道だ」とみられたからだ。

 その橋下氏は、石原氏率いる太陽の党との合流を選択。先に固まっていた太陽の党と河村氏らの減税日本との合流は破談となった。橋下氏が、政策の不一致を理由に、河村氏との合流に反対したためだ。

 維新の会には、亀井氏について「守旧派のイメージが強い」と批判的な意見が多い。河村氏の新党について「維新の会に受け入れられなかったメンバーが手を組んだ」との見方がある。

 河村氏らが、連携相手と考える「国民の生活が第一」の小沢代表は、石原氏と確執が深い。河村氏らの新党が「生活」と組んだ場合、維新の会との距離はいっそう広がる可能性がある。

 河村氏らの新党関係者は「維新の会と、それと選挙協力を進めるみんなの党をチームAとすれば、我々はチームBとして輪を広げ、対抗する」と語る。

 政策面では、手厚い社会保障を主張し、社会的弱者に配慮するなど、「中道リベラル」の路線を取る見通しだ。立場が近い「生活」のほか、みどりの風、社民党などとの連携を視野に入れている。

 小沢氏は、第3極が、統一の首相候補を立てて連携する「オリーブの木」構想を温めてきた。すでに、減税日本や社民党、新党大地・真民主などと超党 派グループ「国民連合」を結成し、〈1〉改正消費税法の廃止〈2〉10年後までに原発ゼロ〈3〉TPP交渉参加に反対――の3項目を衆院選の「共同公約」 案とする方向で協議を進めていた。小沢氏はここに来て、動きを活発にしており、22日に反原発を掲げるみどりの風の谷岡郁子共同代表らと国会内で会談し た。こうした動きが、河村氏らの取り組みとリンクする可能性がある。

 また、社民党の又市征治副党首は22日の記者会見で、「『生活』や減税日本などとは政策がおおむね一致してきているので、選挙で一定の協力が行われるのは当然だ」と述べた。

 ただ、衆院選公示の12月4日までに残された時間は少ないため、選挙区調整や共通公約などにとどまるとの見方が出ている。

(2012年11月23日17時30分  読売新聞)
 
以上、http://www.yomiuri.co.jp/election/shugiin/2012/news1/20121123-OYT1T00261.htm より引用
 
  

「金融右翼」が円を卑しめる 「国債の日銀引き受け」は暴論

2012年11月23日 17時57分15秒 | Weblog

山田厚史の「世界かわら版」 【第23回】 2012年11月22日 山田厚史 [ジャーナリスト 元朝日新聞編集委員]

 

 「安倍相場」と囃され、安倍晋三・自民党総裁の悪のりが止まらない。タブーとされた「国債の日銀引き受け」を公然と主張するようになった。さながら街宣車で日銀に押し掛けるような荒っぽい論議である。

ちゃぶ台返し金融ポピュリズム

 選挙向けとはいえ、冷静で緻密であるべき金融政策に対して、「ちゃぶ台返し金融ポピュリズム」の登場だ。12月の総選挙では安倍自民党が第一党になる可能性が高いという。「金融右翼」が日本国通貨「円」を卑(いや)しめる時代が始まるのか。

 最近の安倍語録はこんな調子だ。

「かつての自民党とは次元の違うデフレ脱却政策を推進する」
 「建設国債は日銀に全部買ってもらう」
 「輪転機をぐるぐる回して、無制限にお札を刷る」
 「日銀総裁には大胆な金融緩和をする人になってもらう」

 一連の発言は、近代国家が行き着いた「中央銀行の政治的独立」という大原則を頭から否定するものだ。金融に馴染みのない人には「中央銀行の政治的独立」がなぜ大事なのか、ピンと来ないかもしれない。平たく言えば「権力者に打ち出の小槌を握らせない」ということだ。

 権力者が小槌を振って、好き勝手に通貨を発行したら、どうなるか。

 紙幣は昔の金貨や小判みたいに、それ自体に価値があるものではない。紙幣の価値は政府の信用で維持される。例えば「1万円」と印刷された紙幣は「ブランド米15キロ」と同等の価値を持つという「共同幻想」の上に成り立っている。

 お札をどんどん印刷すれば、政府に対する信用がなくなり、やがて紙幣はタダの紙切れになる。

 財政難に陥った政府が、輪転機をフル回転して「ハイパーインフレ」と呼ばれるすさまじい物価上昇を招いた例は、世界にいくらでもある。戦争直後の日本がそうだったように預金や国債が無価値になり、庶民は生活の基盤を失い悲惨な暮らしを味わった。

 世界あちこちにそうした教訓があり「通貨発行は政府から切り離す。政治的独立が保証された中央銀行が行う」という決まりができた。

 政治家は政権維持や選挙対策で、輪転機を回す誘惑を断ち切れない。だから誤りを犯しやすい。「通貨発行を政府から切り離す」ことは、中国のような独裁国家は別だが、先進国で当たり前のことになっている。

 安倍自民党は、総選挙向け政策に「日銀法改正」を盛り込み、日銀に政治圧力を公然とかけ始めた。蔓延するデフレ・円高に決定打が打てない民主党政権に「大胆な金融政策」で対立軸を作ろう、という戦略だろう。

 野田首相は「禁じ手で、あってはならない経済政策だ」と反論した。安倍周辺は「民主党が土俵に乗ってきた」と喜んでいるという。

復活した安倍総裁の経済ブレーン

 「大胆な金融緩和」を真っ先に掲げたのはみんなの党だった。消費税増税に反対し、増税なき景気回復の柱として「日銀法改正も視野に入れた積極的な金融緩和」を掲げた。

 民主党内でも同様の動きが生まれ「デフレから脱却し景気回復を目指す議員連盟」が発足し、日銀に大胆な金融緩和を迫る緊急声明を出した。自民党は谷垣総裁のころは、消費税増税に邁進し、中央銀行の独立性を侵までして金融を緩和することに慎重だった。

 安倍総裁の登場で潮目が変わった。経済への助言者が変わったからである。安倍氏が首相だった時代のブレーンが復活した。安倍首相は小泉政権の継承 者だった。小泉純一郎首相は消費増税には消極的で、規制緩和と金融緩和で景気を拡大させる、という新自由主義がもてはやされた。旗手は竹中平蔵氏、その盟 友でいまは脱藩官僚となった高橋洋一氏がブレーンとして活躍した。

 小泉氏を引き継いだ安倍氏は竹中氏を頼りにしたが、安倍首相が政権を放り出し福田康夫政権になると竹中氏らはお役御免となる。格差拡大、貧困の増加などが社会問題になり、自民党も新自由主義に距離を置いた。

 小泉路線を継承したのは渡辺嘉美氏が旗揚げしたみんなの党だった。竹中・高橋両氏はみんなの党のブレーンになった。さらに竹中氏は橋下徹大阪市長に重用され、維新の会の政策に「日銀法改正」を盛り込み、大胆な金融緩和を求めた。

 そして今回、安倍自民党がこの路線を大々的に採りいれたのである。

 安倍氏自身は「自分の考えはほとんどなく、近くにいる人の言うことをよく聞く。問題は誰の意見を聞くかだ」と、元側近はいう。

 憲法改正や教育改革などは、親しい取り巻きがいるが、経済は明るくない。そこに知恵を付けているのが首相時代に接していた竹中グループだという。

異例!日銀総裁が反論

 大胆な金融緩和は米国でも採用され、こと新しい政策ではないが「国債を日銀に引き受けさせ、輪転機をぐるぐる回し、無制限な金融緩和を」とまで言うと、話は穏やかではない。

 日銀の白川方明総裁が「やってはいけないことの1番目に上げられていることだ」と反論した。「一般論として」と条件を付けているが、中央銀行総裁が首相になるであろう人物の発言に真っ向から異を唱える、という事態なのだ。

 国債が大量に発行されながら、国債の暴落が起きていないのは、庶民の預金が銀行を通じて国債に化けている、という日本の特有の事情がある。国の巨 額の借金は国民の膨大な貯蓄が支える、という構造があるから、まだ何とかなっている。だが、日銀が輪転機を回してお札を刷って国債を買うようになったら 「円」の信用は急速に失われる。

 ましてや、その国債で公共事業をバンバンやれば、日銀が赤字国債を無制限に引き受けて戦争を遂行したあの頃の二の舞になりかねない。

 円が安くなった、と喜んでいる場合ではない。ダイエットで痩せたと思ったら、実はガンだった、となる恐れがある。

 安倍総裁が言う「輪転機を回してお札を無制限に刷る」という政策は、「通貨を卑しめる政策」で、絶対にやってはいけないこと、とされてきた。その タブーに挑戦して「強いリーダー」を演じ、自分のひと言が相場を動かした快感を弄(もてあそ)んでいるとしたら、安倍総裁は危ない政治家、である。

 3%のインフレ目標のはずが、天井知らずの物価高と国債の暴落を招く、という日が来ないといえるのか。恐いのは円高より、円を死に至らすような円安だ。

極論が出てくる背景にあるもの

 だが、「危険な政治家」「常識が分からないお粗末な政治家」と切って捨てれば済む話でない。一度退場した右翼的政治家が、再び舞台に上がってきた背景を無視することはできないからだ。

 20年も続く経済停滞、広がる格差、失業と非正規雇用の増加。そんな状況が、苛立ちと短絡的思考を増殖させている。

 以前だったら一蹴されている「国債の日銀引き受け」を政党の代表が堂々と叫ぶ背後には、「失業者が増えるデフレより、バブルだろうとなんだろうと、好景気がいい」というインフレ願望が潜んでいる。

 不況や格差社会の犠牲者である若者の間には、「インフレで資産を失うのは金持ちだ」という絶望感に近い破局願望が渦巻いている。雑誌のコラムなど にも、「ガラガラポンでしか日本は生まれ変われない」「焼け野が原から再生が始まる」といったガラポン願望が見られるようになった。

 欧州ではネオナチが拝外主義と結びつき、米国では「強いアメリカ」を叫びながら低所得者への支援を拒否するティーパーティーが一定の力を得ている。明日の見えない若者の間に、拝外主義や破局願望へと傾く素地が醸成されているのではないか。

「ネット右翼」が「金融右翼」を生み、「インフレ目標」「輪転機を回せ」と声高に叫ぶ時代にならない、と誰がいえるだろうか。

「今は選挙だから威勢のいいことを言っているが、安倍さんだって首相になったらバカなことはできませんよ」と霞が関の高官は言うが、インフレと同じように、過激な世論に火がつくと政治家もブレーキが効かなくなる。

 尖閣でも、金融でも、威勢のいい発言を繰り返す安倍総裁は、自分の言葉に政策が引きずられることにならないか。

 安倍新首相が打ち出の小槌を握るという事態だけは、避けたいものだ。


第三極中心の政権誕生のために いま必要な合流・連携とは

2012年11月23日 17時38分23秒 | Weblog

田中秀征 政権ウォッチ 【第159回】 2012年11月22日 田中秀征 [元経済企画庁長官、福山大学客員教授]

 

 もう40年ほど前のこと。私は自動車教習所で何度も仮免試験に落ちた。不器用で上達が遅い私にいら立って助手席の教官がこう言った。

「カーブの終わりをよく見て走れ」

 言われた通りにすると、何と体が自然に動いて速度も方向も調整できるようになり、私も運転免許証を手中にした。

 その後、政治の現場に出て、この言葉が政治の場でも通用することを知った。目先のことに気を取られて遠くを見ない政治行動は結局大きな成功を得ることができない。

第三極に期待する「二段階再編」とは

 さて昨年来、第三極の出現待望論が強まって以来、私は強く「二段階再編」を唱えてきた。

 第一段階は、行政改革、官僚改革を軸とした統治構造の改革。それに有効な立法措置を講じたら、直ちに第二段階の思想、理念を軸とした政界再編のための解散・総選挙に持ち込む。1年に2度の総選挙になってもよい。

 政治はもちろん思惑通りには進まない。

 野田佳彦首相は「解散の理由は『近いうちに信を問う』との約束を果たすため」(16日の記者会見)と明言して解散を断行した。

「シロアリ退治をする」、「消費税増税はしない」という重大公約に違反したことに対する反発を薄めるためで、実に個人的な事情による解散・総選挙となった。

 この突然の事態を受けて「第三極」はあわただしく動いている。この激しい動きは公示直前どころか選挙戦の最終盤まで続くだろう。

 しかし、政権の枠組や政策調整は投票日の3日ほど前までに定まれば充分だ。なぜなら、今回は有権者がその動きをつぶさに凝視しているに違いないからだ。

「維新」の強大化で第三極待望論が頭打ちに
「みどりの風」を先頭にした勢力に期待

 私は、維新の会と太陽の党の合併前までは、小政党が競い合って進むのがよいと考えてきた。しかし、残念ながらもうその段階ではない。

 これからは第三極が2つの勢力になり、統治構造の改革の一点で連携して進むのが望ましい。

 ひとつは、①ナショナリズムやグローバル経済への対応を強調する勢力。もう1つは②それに抑制的に対応する勢力だ。

 ①の石原慎太郎、橋下徹両氏に代表される勢力は、安倍晋三自民党総裁や野田佳彦民主党代表と基本的に同じ政策的立場であるという印象を受ける。

 しかし、世論の第三極待望論が頭打ちになっているのは、①の勢力が強大化することに戸惑いも持つ人がかなり多いからだろう。

 私は、亀井亜紀子氏らの「みどりの風」が先頭に立つ②の勢力の結集を強く期待している。これに民主党の若手が合流すれば、①と②によって第三極は爆発的な進撃が可能になって統治構造の改革が実現するだろう。

 このままでは、野田首相の政策方針に反発してきた民主党候補は選挙戦を展開することができなくなる。彼らは今、重大な(彼ら自身にとってはもちろん日本の政治の将来にとっても)岐路に立っている。どう考えても民主党内にとどまる選択肢はない。

第三極が精彩を欠く理由は?
長老は一歩、二歩引いた行動を

 また、第三極の動きに精彩が欠けるのは、やはり新鮮さの欠如によるものだろう。

 極上の松坂牛でも賞味期限が切れていたり、切れそうになっている肉は店頭の真ん中に並べないほうがよい。そのままでは新しい肉も売れなくなり、客足が鈍ってくる。

 93年の細川政権では、細川護熙氏はもちろん、われわれ「さきがけ」も、小沢一郎氏もそれなりに新鮮であったからこそ期待が集まった。

 土佐の一本釣りのかつお船には必ず経験豊かな長老が同乗したと言う。それと同じようにベテランは一歩も二歩も引いて見守る方が成果は大きくなる。長老がかつおを釣って、若手がそれに従うのではお話にならない。

 この際、「カーブの終わり」は第三極中心の政権の樹立、それによる統治構造の改革を実現することだ。それをしっかりと見据えて進めば必ず世論はそれに応えるはずだ。

 緊急の課題は、未だ大きな空白となっている②の勢力の出現である。言ってみれば、「第二の新党さきがけ」が渇望されている。

※この記事は11月20日午後に書かれたものです。

 

田中秀征 政権ウォッチ 【第158回】 2012年11月15日 田中秀征 [元経済企画庁長官、福山大学客員教授]

 

今回の解散は“自己陶酔解散”だ

(編集部注:本稿前半は11月13日夜の執筆、後半は14日の解散の方向性決定直後に加筆をお願いしたものです)

 野田佳彦首相は、本当に年内解散を決断したのだろうか。既に、メディアも自民党などもそれを既定のこととして動いている。こうなると流れを止めるのはきわめて困難だ。

 だが私は願望を込めて首相はまだ迷っているのではないかと思っている。

 なぜならここにきて、政局の動向に影響を与える2つの要因が加わった。それは、①小沢一郎氏の控訴審判決が無罪となったことと、②7~9月のGDP速報値が年率換算で前年比3.5%減となったことだ。

 もちろん首相には2つとも予想通りだろうが、それが事実として明確になると事情はかなり違ってくる。なぜなら、政界ではともかく、多くの一般の人たちにとってこれらは衝撃的な新事実である。政界やメディアで織り込み済みでも、世論一般では必ずしもそうではない。

 景気が後退局面に入って、「消費税増税をやるときではない」、「今まで何をやっていたのか」と野田政権への風当たりは一段と強まっている。

「小沢無罪」も、底辺の小沢ファンに勢いを与えている。今まで黙って耐えていたこともあって、その攻勢にはあなどり難いものがある。

閣僚や党役員も年内解散推進か?
選挙をめぐる役職者たちの不可解な行動

 おそらく、このまま解散・総選挙となれば、民主党議席は数十に転落するだろう。それでも突入するとすれば、首相は自分の功名心だけで民主党議員や党員の運命など眼中にないことになる。

 かろうじて残るとすれば、組合候補、世襲候補、重要閣僚経験者、個人後援会が強い地方議員出身候補の一部に限られよう。

 閣僚や党役員の中には、年内解散推進論者も散見され、実に不可解な印象を与えている。

 重要な役職のまま選挙に臨むほうが有利、選挙が遠くなれば落選の可能性が高まる、と考えていると疑われている。

 それに50議席に転落しても、「三党合意」を大義名分に自民党と連携すれば、彼らの選挙区で活動している自民党候補は立場がなくなり政治生命が絶たれる。そんな甘いことでも考えてのことか。

 仮に自民党中心の政権ができても、参議院で大野党を維持すれば、新政権での大きな発言力を保つことができる。それをテコに夏の参院選で反転攻勢をかけて立ち直る。そういうことではないか。

 要するに、倒れつつある仮設住宅から逃げ出して一旦老朽住宅に逃げ込むということだ。

 賢明な有権者はその意図を見抜いているから思惑通りには展開しない。仮にそれが誤解であるとしたら、それを弁解しているだけで選挙は終わってしまう。

第三極の進撃がままならない今、
解散・総選挙をすれば政治は一層混乱へ

 私は、今後4年間は、日本にとって運命的な時代の局面だと言っている。今のような政治の混乱が続けば取り返しがつかないことになると思っている。

 今、総選挙を実施すれば確実に政権を交代させることはできる。だが、ただそれだけのことだ。しかし、現状より一層混乱した政治状況が4年間続くことが避けられない。それでは日本の衰弱、劣化に歯止めがかからなくなる。

 唯一の希望は第三極の進撃だが、今のところこの行方もままならない。今のままではとても大きな展望は開けないだろう。何よりも統合原理と際立った 指導者が欠けているのが致命的だ。たとえ第三極が自民、民主を脅かす当選者を得ても、同床異夢のゲリラ集団では早々に愛想を尽かされよう。

 そもそも解散・総選挙は菅直人内閣が参院選で大敗した直後にすべきであった。だから“ねじれ国会”とその弊害はあくまでも民主党の責任である。

 野田首相にはこの際、何としても年内解散を断念してほしい。私は、消費税問題では首相がウソをついたと思っているが、解散問題ではそう思っていな い。そもそも昔から、「解散だけはウソをついてもよい」と言われている。むしろ、解散を法案賛成の条件にする自民党のほうがはるかに不見識だ。今後もこの ような手法が常態化するとすれば、憲政史上に汚点を残したと言われても仕方がない。

 民主党はこのまま消え去ってもよいのか。自民党以上に政治不信を強めて後は野となれ山となれということでよいのか。来年、半年間、じっくりと構想を固めて出直す方向に転換することを願うばかりである。


【追補】(11月14日夜)

 願いも虚しく、衆議院は11月16日に解散されることになった。私はこの解散を“自己陶酔解散”と名付けた。

 いくつかの感想を列挙する。

極めて異例な委員会の場での“解散”明言
比例区削減を条件にしたのは暴挙である

①解散に条件を付けたこと、委員会の場で明言したこと。これらはきわめて異例で、“解散”と言う言葉を著しく軽いものにした。

②特に、比例区40議席の削減を条件として持ち出したことはこの上ない暴挙である。

 本欄で指摘してきたように、定数削減の目的が「身を切る」すなわち歳出の削減にあるなら、それに相当する政党助成金を削れば済むことだ。小選挙区と比例区のバランスは1つの理念に基づくもので歳出削減とは全く別の話である。

「身を切る」と言っても、それは落選者だけで、当選する自信のある議員は何も身を切らないことになる。

③たとえ、通常国会で違憲状態を脱する法案を成立させたにせよ、今回の総選挙は憲法違反のまま実施される。今後4年間は憲法違反の総選挙で選ばれた議員に政治を任せることになる。

 要するに、今回の選挙制度改革は、4年後にやっても全く同じことなのだ。この責任は野田佳彦首相本人にある。そして、そうである限り民主党は壊滅的な大敗を招かざるを得ない。

自分の歴史的業績(?)のために同志を見捨てた
野田首相を待ち受ける厳しい現実とは

④「ノーサイド」や「全員野球」はどうしたのか。

 渡部恒三長老は「100人が100人反対」している現状を指摘し、横路孝弘、菅直人両氏も公然と反対した。首相は民主党内の声を全く無視して強行した。同志を紙くずのように捨てたのである。

 私は、イタリアで沈没する船から1人で逃げ出した船長を連想した。自分のことしか考えないのだ。

⑤首相はおそらく来年に解散を先送りすれば、消費税増税に赤信号がともるという財務省の見通しにあわてたのだろう。自分が「歴史的業績」と思い込んでいることが徒労に終わることを恐れ、それを優先して解散に持ち込んだのだ。

「一将功成りて万骨枯る」という言葉があるが、残念ながら一将の功もあり得なくなった。

 最近、私が気になったのは「政治生命を賭けると言った意味は議員辞職すること」という首相発言だ。

 今になってなぜそんなことを言うのか。それほど自己犠牲の精神で政治に取り組んでいると言いたいのだろうが、本気にそう覚悟している人は死んでもそんなことは公言しない。

 私が“自己陶酔解散”と名づけたのは、今回の党首討論での際立った印象だったからである。

 第三極が結集しないうちにと言う計算もあるかもしれない。しかし、期間が短ければ短いほど、逆にまとまりやすい場合もある。

 それに、「100人のうち100人」の意向を踏みにじった首相についていく人はほとんどいない。

 代表交代、内閣総辞職、集団離党という大政局も視野に入ってきた。

 自己陶酔から醒めたら一段と厳しい世界が待っているに違いない。


12月16日総選挙決定! 景気後退下のいま本当に争点とすべきこと

2012年11月23日 17時33分30秒 | Weblog

高橋洋一の俗論を撃つ           【第52回】 2012年11月15日 高橋洋一 [嘉悦大学教授]

 

 特例公債法案について、民自公3党が合意し成立が確実になった。これで、予算切れによって日本版「財政の崖」が回避できたのは評価できるが、その過程で、国会できちんとした「交渉」ができないことが浮き彫りになった。

特例公債騒動で得をしたのは誰?

  合意内容は3党の幹事長・政調会長の確認書にあるが、その中で、「……公債発行額の抑制に取り組むことを前提に、……2015年度までの4年間は特例公債法の発行を認める」とある。

  この前提をどのように担保するかが問題であるが、それには言及されていない。「財政の崖」を一時的に凌ぐために、今年度予算書では資金繰り債20兆円の発 行が書かれているが、財務省はそれを財政規律の観点から財政法上一切認めなかった。その一方で、地方交付税交付金の抑制をしたため、地方公共団体では財政 運営に支障が出るため、民間からの一時借入で凌がざるを得なかった。

 ただ、よく考えてみれば、財政関係法律は、国と地方で基本的には同じである。財務省が根拠とする財政法と同じことが、地方自治法にも地方自治体の一時借入金について「その会計年度の歳入をもって償還しなければならない」と書いてある(235条の3)。

 このように特例公債法案では、財務省の横暴ばかりが目立つ。それを唯一抑えるのが、国会での予算修正だ。

 ところが、民自公の3党合意では、2015年度までの4年間は赤字国債の自動発行が認められた。特例公債法は、それを通すかわりに政府予算案(= 財務省原案)を修正するという、国会の予算審議のために使うべきものだ。海外では国会での予算修正は当たり前だ。ところが、自動発行が可能になった3党合 意は、「予算は財務省原案に指一つふれさせない。だから、国会で政府予算案を修正させない」という財務省の思惑にまんまと乗せられたことになる。

景気後退期の総選挙に

 いずれにしても、特例公債法案が成立するので、政局は、年内解散に向けて急速に動き出した。14日の党首討論で、野田首相が16日解散を明言して、12月16日投開票、都知事選とのダブル選挙と決まった。しかも、「TPPを争点に」ということだ。

 野田首相が消費税を上げないと言って上げた「ウソつき」が発端であるものの、TPPが争点ということで、民主党内から野田おろしが起こるが、野田 首相としてはそこで負ければ政治生命が終わり、解散権は首相にあるので、首相が勝つ。ただ、離党者が増える。もっとも年内解散は、第三極の準備不足のうち に選挙するという財務省のシナリオだ。

 解散はいいが、この時期である。ただでさえ、年末は資金繰りなどで苦しいところも多くなる。とくに、昨今の景気減速である。

 内閣府が12日に発表した7~9月期の実質国内総生産(GDP)は前期比マイナス0.9%、年率換算マイナス3.5%と、景気後退が鮮明になっている。9月の鉱工業生産は前月比4.1%低下し、低下幅はリーマンショックと大震災以外では最大の落ち込みだ。

 この景気減速は、自動車と自動車関連業界の落ち込みによるところが大きい。自動車業界の売上高は輸出依存が高いので、為替レートに連動しているよ うに思える。たしかに、リーマンショックの2008年10~12月期まではそのとおりで、自動車業界の売上高と為替レートの相関係数は7割と高い。ところ が、2009年1~3月期以降は、その関係が崩れ、ほとんど相関がなくなる。これはエコカー減税やエコカー補助金が導入されたからである。エコカー減税・ エコカー補助金の威力は大きく、20兆円以上の売上の下支えをしただろう。

 政府・日銀は円高を放置した代わりに減税・補助金で自動車業界を支えていたわけだが、ここに来て、財政支援ができなくなり、円高の影響をもろに受 けて、失速気味になっているわけだ。ちなみに、本コラムの読者であれば、円高が金融政策の失敗であることもご存じだろう(11月1日付け本コラムなど)。

 こうした円高放置による弊害は、家電業界ですでに出ている。マスコミ、エコノミスト諸氏は、シャープ、パナソニックの経営不振を経営の失敗と捉え ているが、これは「木を見て森を見ず」の典型だ。実は、家電業界の売上高と為替レートをみると、最近まで相関係数は8割になっている。売上高と損益には関 係があり、業界全体の損益分岐点の売上高に対応する為替レートは1ドル=80円だ。つまり、今の為替レートでは、まともに経営していても、潰れるところが かなりの数になってしまう。

 例えてみると、今の円高は平均点が20点しか見込めない難しい試験を出して、真面目に勉強した人でも20点しか取れず、不出来だと言われているようなものだ。円安にすれば、平均点70点の試験で、らくらく70点が取れるのに、である。

 先日あるマスコミから取材されたが、今の為替レートは購買力平価で見れば高くない、実質実効為替レートで見れば高くないなどと言われた。記者は不 勉強なので、こうした用語の正しい意味を知らないようだった。そんなものは基準点の取り方次第でどうとでも言える。輸出関係の現場でそうした意見を言っ て、反応をみたほうがいいと言っておいた。

 この時点での解散・総選挙もいいが、せめて、円高くらいは直してくれと言いたい。円高を是正するという程度の話は、30~50兆円の金融緩和をす るだけなので、現政権がその気になればすぐできると、小泉・安倍政権における筆者の経験から言える。もしやらなければ、それも選挙の争点にしたらいい。

TPPは総選挙の争点になるか

 それにしても、「TPPを争点に」というが、本当に争点になるのだろうか。本来は、消費税の「ウソつき」を争点にしたいところだ。今の段階で言えるのは、「TPP交渉への参加」だけであり、TPPの中身がわからない以上、「TPPそのものへの賛否」は言えるはずがない。

 筆者はテレビ番組でTPP交渉への参加について、合コンに行くようなモノだと発言したことがある。行かなければどんな男性、女性がいるかもわから ず、その後のつきあいも結婚もできない。ある政治家は、「この合コンに行くと結婚しなければいけない」と言っており、国際交渉なんて建前で協定締結が前提 と言うが、実のところ中途退席は自由だ。もし不都合なら最後にやめればいい。初めから締結するなら、交渉なんて意味がない。

 TPPそのものについては、2011年2月10日付け本コラムで書いたように、日本も海外もwin-winの可能性が高い。だから「合コン」に参加するわけだ。

 なお、貿易交渉の「合コン」は、TPPの他にも「日中韓FTA」、「ASEAN+」から発展した「RCEP」、「日EUのEPA」等他にもあるが、それらには参加する。にもかかわらず、なぜTPPだけ特別扱いなのかさっぱりわからない。

 こう考えると、「TPP交渉への参加」は当たり前で、選挙の争点にどうしてなるのか、筆者としては疑問に思っている。

 国際交渉をしたことがある人ならば知っているが、交渉が進んでいけば、必ず交渉は国内法の改正という形で目に見えてくる。その時に国民は反対すればいい。逆にいえば、国民が反対するような交渉はその前に止める。

 しかし、「TPPの反対」の人は、今の段階では「TPP交渉への参加」に反対だから、TPP交渉に日本が必ず負けるという前提に立っている。他の貿易交渉については文句を言わないようだから、他の交渉では必ず日本が勝つという前提なのだろうか。

 TPPに反対するのは「国を愛する保守系」ということになっているが、かなり内弁慶な人で、国内でひたすら反対スローガンを叫んでいるだけの人たちだろう。どこか、竹島や北方四島問題で、日本の固有の領土と叫んでいるだけで満足している人々と似ているところがある。

第三極団結の突破口

 最後に、選挙となると、第三極の動きがどうなるのか。筆者は、第三極の人たちと近いといわれ、その取材も多い。

 橋下徹(日本維新の会)、石原慎太郎(太陽の党)、渡辺喜美(みんなの党)の各氏は、政治家として人間関係はうまくやっていけるだろう。ただ、維 新の会とみんなの党の政策は似ているが、太陽の党とは違うとされている(この党名は、関西人には「太陽の塔」を連想させる。関西人への配慮か〈笑〉)。選 挙区調整もまだまだともいわれている。

 ただ、そのブレークスルーはあるかもしれない。石原氏の後継として猪瀬直樹東京都副知事の名前がでている。自民党も推薦するようだ。猪瀬氏が都知 事選に出馬する場合、この3党は選挙協力できる可能性がでてくる。実は、橋下氏、渡辺氏、猪瀬氏の関係者には共通する人が多く(筆者も小泉政権時代に道路 公団民営化、郵政民営化や地方分権改革でその一人)、地方分権、脱官僚などで政策はかなり似通っているからだ。

 これが一つの突破口になって、これら3党が協力連携関係になる可能性はあるだろう。