障害のある人の権利に関する条約
前文
この条約の締約国は、
(a) 世界における自由、正義及び平和の基礎をなすものとして、人類社会のすべての構成員の固有の尊厳及び価値並びに平等のかつ奪い得ない権利を認める国際連合憲章において宣明された原則を想起し、
(b) 国際連合が、世界人権宣言及び人権に関する国際規約において、すべての者はいかなる区別もなしに同宣言及び同規約に掲げるすべての権利及び自由を享有することができることを宣明し及び合意したことを認め、
(c) すべての人権及び基本的自由の普遍性、不可分性、相互依存性及び相互関連性、並びに障害のある人に対してすべての人権及び基本的自由の差別のない完全な享有を保障する必要性を再確認し、
(d) 経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約、市民的及び政治的権利に関する国際規約、あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約、女性に対するあ らゆる形態の差別の撤廃に関する条約、拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約、子どもの権利に関する条約並びにす べての移住労働者及びその家族の構成員の権利の保護に関する国際条約を想起し、
(e) 障害〔ディスアビリティ〕が形成途上にある〔徐々に発展している〕概念であること、また、障害が機能障害〔インペアメント〕のある人と態度及び環境に関す る障壁との相互作用であって、機能障害のある人が他の者との平等を基礎として社会に完全かつ効果的に参加することを妨げるものから生ずることを認め、
(f) 障害者に関する世界行動計画及び障害のある人の機会均等化に関する基準規則に規定する原則及び政策指針が、障害のある人の機会を一層均等化するための国内 的、地域的及び国際的な政策、立案、計画及び行動の促進、形成及び評価に影響を及ぼすに当たり重要であることを認め、
(g) 持続可能な開発の関連戦略の不可分の一部として障害問題の主流化が重要であることを強調し、
(h) また、いかなる者に対しても障害に基づく差別が人間の固有の尊厳及び価値を侵害するものであることを認め、
(i) 更に、障害のある人の多様性を認め、
(j) 障害のあるすべての人(一層多くの支援を必要とする障害のある人を含む。)の人権を促進し及び保護する必要性を認め、
(k) これらの種々の文書及び約束にもかかわらず、障害のある人が、世界のすべての地域において、社会の平等な構成員としての参加を妨げる障壁及び人権侵害に依然として直面していることを憂慮し、
(l) あらゆる国、特に開発途上国における障害のある人の生活状況を改善するために国際協力が重要であることを認め、
(m) 障害のある人が、地域社会の全般的な福利及び多様性に対して既に又は潜在的に貴重な貢献をしていることを認め、また、障害のある人による人権及び基本的自 由の完全な享有並びに完全な参加を促進することにより、障害のある人の帰属意識が高められること並びに社会の人間的、社会的及び経済的開発並びに貧困の根 絶に大きな前進がもたらされることを認め、
(n) 障害のある人にとって、その個人の自律及び自立(自ら選択する自由を含む。)が重要であることを認め、
(o) 障害のある人が、政策及び計画(障害のある人に直接関連のある政策及び計画を含む。)に係る意思決定過程に積極的に関与する機会を有すべきであることを考慮し、
(p) 人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的、民族的、先住的若しくは社会的出身、財産、出生、年齢又は他の地位に基づく複合的又は加重的な形態の差別を受けている障害のある人の置かれた困難な状況を憂慮し、
(q) 障害のある女性及び少女が、家庭の内外で暴力、傷害若しくは虐待、放置若しくは怠慢な取扱い、不当な取扱い又は搾取を受ける一層大きな危険にしばしばさらされていることを認め、
(r) 障害のある子どもが、他の子どもとの平等を基礎として、すべての人権及び基本的自由を完全に享有すべきであることを認め、また、このため、子どもの権利に関する条約の締約国が負う義務を想起し、
(s) 障害のある人による人権及び基本的自由の完全な享有を促進するためのあらゆる努力にジェンダーの視点を組み込む必要があることを強調し、
(t) 障害のある人の大多数が貧困の状況下で生活している事実を強調し、また、これに関しては、障害のある人に及ぼす貧困の悪影響に取り組むことが緊要であることを認め、
(u) 国際連合憲章に規定する目的及び原則の完全な尊重並びに適用のある人権文書の遵守に基づく平和及び安全の状況が、障害のある人、特に武力紛争下及び外国の占領下の障害のある人の完全な保護に不可欠であることに留意し、
(v) 障害のある人がすべての人権及び基本的自由を完全に享有することを可能とするに当たり、物理的、社会的、経済的及び文化的環境、保健〔健康〕及び教育並びに情報通信についてのアクセシビリティが重要であることを認め、
(w) 個人が、他人に対し及びその属する地域社会に対して義務を負うこと、並びに国際人権章典において認められる権利の促進及び遵守のために努力する責任を有することを認識し、
(x) 家族が、社会の自然かつ基礎的な単位であり、かつ、社会及び国による保護を受ける権利を有することを確信し、また、障害のある人及びその家族の構成員が、 障害のある人の権利の完全かつ平等な享有に家族が貢献することを可能とするために必要な保護及び援助を受けるべきであることを確信し、
(y) 障害のある人の権利及び尊厳を促進し及び保護するための包括的かつ総合的な国際条約が、開発途上国及び先進国の双方において、障害のある人の社会的に著し く不利な立場を是正することに重要な貢献を行うこと、並びに市民的、政治的、経済的、社会的及び文化的分野への障害のある人の平等な機会を伴う参加を促進 することを確信して、
次のとおり協定した。
第1条 目的
この条約は、障害のあるすべての人によるすべての人権及び基本的自由の完全かつ平等な享有を促進し、保護し及び確保すること、並びに障害のある人の固有の尊厳の尊重を促進することを目的とする。
障害〔ディスアビリティ〕のある人には、長期の身体的、精神的、知的又は感覚的な機能障害〔インペアメント〕のある人を含む。これらの機能障害は、種々の 障壁と相互に作用することにより、機能障害のある人が他の者との平等を基礎として社会に完全かつ効果的に参加することを妨げることがある。
第2条 定義
この条約の適用上、
「コミュニケーション〔意思伝達・通信〕」とは、筆記〔文字言語〕、音声装置、平易な言葉、口頭朗読その他の拡大代替〔補助代替〕コミュニケーションの形 態、手段及び様式(アクセシブルな情報通信技術〔情報通信機器〕を含む。)とともに、言語、文字表示〔文字表記〕、点字、触覚による意思伝達、拡大文字及 びアクセシブルなマルチメディア等をいう。
「言語」とは、音声言語及び手話その他の形態の非音声言語等をいう。
「障害に基づく差別」とは、障害に基づくあらゆる区別、排除又は制限であって、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のいかなる分野においても、 他の者との平等を基礎としてすべての人権及び基本的自由を認識し、享有し又は行使することを害し又は無効にする目的又は効果を有するものをいう。障害に基 づく差別には、合理的配慮を行わないことを含むあらゆる形態の差別を含む。
「合理的配慮」とは、障害のある人が他の者との平等を基礎としてすべての人権及び基本的自由を享有し又は行使することを確保するための必要かつ適切な変更及び調整であって、特定の場合に必要とされるものであり、かつ、不釣合いな又は過重な負担を課さないものをいう。
「ユニバーサルデザイン」とは、調整又は特別な設計を必要とすることなしに、可能な最大限の範囲内で、すべての人が使用することのできる製品、環境、計画 及びサービスの設計をいう。「ユニバーサルデザイン」は、特定の範囲の障害のある人向けの機能を備えた補装具〔補助器具〕が必要とされる場合には、これを 排除するものではない。
第3条 一般原則
この条約の原則は、次のとおりとする。
(a) 固有の尊厳、個人の自律(自ら選択する自由を含む。)及び人の自立に対する尊重
(b) 非差別〔無差別〕
(c) 社会への完全かつ効果的な参加及びインクルージョン
(d) 差異の尊重、並びに人間の多様性の一環及び人類の一員としての障害のある人の受容
(e) 機会の平等〔均等〕
(f) アクセシビリティ
(g) 男女の平等
(h) 障害のある子どもの発達しつつある能力の尊重、及び障害のある子どもがそのアイデンティティを保持する権利の尊重
第4条 一般的義務
1 締約国は、障害に基づくいかなる種類の差別もない、障害のあるすべての人のすべての人権及び基本的自由の完全な実現を確保し及び促進することを約束する。このため、締約国は、次のことを約束する。
(a) この条約において認められる権利を実施するため、すべての適切な立法措置、行政措置その他の措置をとること。
(b) 障害のある人に対する差別となる既存の法律、規則、慣習及び慣行を修正し又は廃止するためのすべての適切な措置(立法措置を含む。)をとること。
(c) すべての政策及び計画において、障害のある人の人権の保護及び促進を考慮に入れること。
(d) この条約に合致しないいかなる行為又は慣行をも差し控え、かつ、公の当局及び機関がこの条約に従い行動することを確保すること。
(e) いかなる個人、団体又は民間企業による障害に基づく差別をも撤廃するためのすべての適切な措置をとること。
(f) 第2条に定めるユニバーサルデザインを用いた物品〔製品〕、サービス、備品〔設備〕及び施設についての研究及び開発を開始し又は促進すること。この場合に おいて、これらの物品〔製品〕、サービス、備品〔設備〕及び施設は、障害のある個人に特有の必要〔ニーズ〕を満たすため、それらの供給及び使用を促進する ため並びに基準及び指針の策定の際のユニバーサルデザインの採用を促進するため、可能な限り最小の調整及び最小の費用を要するものとすべきである。
(g) 負担可能な費用の技術〔機器〕を優先して、障害のある人に適した新たな技術〔機器〕(情報通信技術〔情報通信機器〕、移動補助具、補装具〔補助器具〕及び 支援技術〔支援機器〕を含む。)についての研究及び開発を開始し又は促進すること、並びにそのような新たな技術〔機器〕の供給及び使用を促進すること。
(h) 移動補助具、補装具〔補助器具〕及び支援技術〔支援機器〕(新たな技術〔機器〕を含む。)に関する並びに他の形態の援助、支援サービス及び施設〔設備〕に関するアクセシブルな情報を障害のある人に提供すること。
(i) この条約において認められる権利により保障される支援及びサービスを一層効果的に提供するため、障害のある人と共に行動する専門家及び職員に対する当該権利に関する訓練を促進すること。
2 各締約国は、経済的、社会的及び文化的権利に関しては、これらの権利の完全な実現を漸進的に達成するため、自国における利用可能な手段〔資源〕の最大限の 範囲内で、また、必要な場合には国際協力の枠内で措置をとることを約束する。ただし、この規定は、この条約に含まれる義務であって国際法に基づいて即時的 に適用可能なものに影響を及ぼすものではない。
3 締約国は、この条約を実施するための法令及び政策を策定し及び実施するに当たり、並びに障害のある人と関連する問題についての他の意思決定過程において、 障害のある人(障害のある子どもを含む。)を代表する団体を通じて、障害のある人と緊密に協議し、かつ、障害のある人を積極的に関与させる。
4 この条約のいかなる規定も、締約国の法律又は締約国について効力を有する国際法に含まれる規定であって、障害のある人の権利の実現に一層貢献するものに影 響を及ぼすものではない。この条約のいずれかの締約国において法律、条約、規則又は慣習によって認められ又は存する人権及び基本的自由については、この条 約がそれらの権利若しくは自由を認めていないこと又はその認める範囲がより狭いことを理由として、それらの権利及び自由を制限し又は逸脱してはならない。
5 この条約は、いかなる制限又は例外もなしに、連邦国家のすべての地域について適用する。
第5条 平等及び非差別〔無差別〕
1 締約国は、すべての者が、法律の前及び下において平等であり、いかなる差別もなしに法律による平等な保護及び利益を受ける権利を有することを認める。
2 締約国は、障害に基づくあらゆる差別を禁止するものとし、いかなる理由による差別に対しても平等のかつ効果的な法的保護を障害のある人に保障する。
3 締約国は、平等を促進し及び差別を撤廃するため、合理的配慮が行われることを確保するためのすべての適切な措置をとる。
4 障害のある人の事実上の平等を促進し又は達成するために必要な特定の措置は、この条約に定める差別と解してはならない。
第6条 障害のある女性
1 締約国は、障害のある女性及び少女が複合的な差別を受けていることを認識し、また、これに関しては、障害のある女性及び少女がすべての人権及び基本的自由を完全かつ平等に享有することを確保するための措置をとる。
2 締約国は、この条約に定める人権及び基本的自由の行使及び享有を女性に保障することを目的として、女性の完全な発展、地位の向上及びエンパワーメントを確保するためのすべての適切な措置をとる。
第7条 障害のある子ども
1 締約国は、障害のある子どもが、他の子どもとの平等を基礎として、すべての人権及び基本的自由を完全に享有することを確保するためのすべての必要な措置をとる。
2 障害のある子どもに関するあらゆる決定において、子どもの最善の利益が主として考慮されるものとする。
3 締約国は、障害のある子どもが、自己に影響を及ぼすすべての事項について自由に自己の意見を表明する権利を有することを確保する。この場合において、障害 のある子どもの意見は、他の子どもとの平等を基礎として、その年齢及び成熟度に応じて十分に考慮されるものとする。締約国は、また、障害のある子どもが、 当該権利を実現〔行使〕するための障害及び年齢に適した支援を提供される権利を有することを確保する。
第8条 意識向上
1 締約国は、次のための即時的、効果的かつ適切な措置をとることを約束する。
(a) 障害のある人の置かれた状況に対する社会全体(家族を含む。)の意識の向上、並びに障害のある人の権利及び尊厳に対する尊重の促進
(b) あらゆる生活領域における障害のある人に対する固定観念、偏見及び有害慣行(性及び年齢を理由とするものを含む。)との闘い
(c) 障害のある人の能力及び貢献に対する意識の促進
2 このため、締約国が講ずる措置には、次のことを含む。
(a) 次のために、効果的な公衆啓発活動を開始し及び維持すること。
(i) 障害のある人の権利を受容する態度の育成
(ii) 障害のある人に対する肯定的認識及び一層高い社会的意識の促進
(iii) 障害のある人の技能、功績及び能力並びに職場及び労働市場への貢献に対する認識の促進
(b) すべての段階の教育制度、特に幼年期からのすべての子どもの教育制度において、障害のある人の権利を尊重する態度を促進すること。
(c) すべての媒体〔メディア〕機関が、この条約の目的に合致するように障害のある人を描写するよう奨励すること。
(d) 障害のある人及びその権利に対する意識を向上させるための訓練計画を促進すること。
第9条 アクセシビリティ
1 締約国は、障害のある人が自立して生活すること及び生活のあらゆる側面に完全に参加することを可能にするため、障害のある人が、他の者との平等を基礎とし て、都市及び農村の双方において、物理的環境、輸送機関、情報通信(情報通信技術〔情報通信機器〕及び情報通信システムを含む。)、並びに公衆に開かれ又 は提供される他の施設〔設備〕及びサービスにアクセスすることを確保するための適切な措置をとる。このような措置は、アクセシビリティにとっての妨害物及 び障壁を明らかにし及び撤廃することを含むものとし、特に次の事項について適用する。
(a) 建物、道路、輸送機関その他の屋内外の施設〔設備〕(学校、住居、医療施設〔医療設備〕及び職場を含む。
(b) 情報サービス、通信サービスその他のサービス(電子サービス及び緊急時サービスを含む。)
2 締約国は、また、次のことのための適切な措置をとる。
(a) 公衆に開かれ又は提供される施設〔設備〕及びサービスのアクセシビリティに関する最低基準及び指針を策定し及び公表すること、並びにこれらの最低基準及び指針の実施を監視〔モニター〕すること。
(b) 公衆に開かれ又は提供される施設〔設備〕及びサービスを提供する民間主体が、障害のある人にとってのアクセシビリティのあらゆる側面を考慮に入れることを確保すること。
(c) 障害のある人が直面するアクセシビリティに係る問題についての訓練をすべての関係者に提供すること。
(d) 公衆に開かれた建物その他の施設〔設備〕において、点字表示及び読みやすく理解しやすい形式の表示を提供すること。
(e) 公衆に開かれた建物その他の施設〔設備〕のアクセシビリティを容易にするためのライブ・アシスタンス〔人又は動物による支援〕及び媒介者(案内者、朗読者及び専門の手話通訳者を含む。)のサービスを提供すること。
(f) 障害のある人が情報にアクセスすることを確保するため、障害のある人に対する他の適切な形態の援助及び支援を促進すること。
(g) 障害のある人が新たな情報通信技術〔情報通信機器〕及び情報通信システム(インターネットを含む。)にアクセスすることを促進すること。
(h) 早い段階において、アクセシブルな情報通信技術〔情報通信機器〕及び情報通信システムに関する設計、開発、生産及び分配を、それらを最小の費用でアクセシブルにするようにして促進すること。
第10条 生命に対する権利
締約国は、すべての人間が生命に対する固有の権利を有することを再確認し、また、障害のある人が他の者との平等を基礎として当該権利を効果的に享有することを確保するためのすべての必要な措置をとる。
第11条 危険のある状況及び人道上の緊急事態
締約国は、国際法、特に国際人道法及び国際人権法に基づく義務に従い、危険のある状況(武力紛争、人道上の緊急事態及び自然災害の発生を含む。)における障害のある人の保護及び安全を確保するためのすべての必要な措置をとる。
第12条 法律の前における平等な承認
1 締約国は、障害のある人が、すべての場所において、法律の前に人として認められる権利を有することを再確認する。
2 締約国は、障害のある人が生活のあらゆる側面において他の者との平等を基礎として法的能力を享有することを認める。
3 締約国は、障害のある人がその法的能力の行使に当たり必要とする支援にアクセスすることができるようにするための適切な措置をとる。
4 締約国は、国際人権法に従い、法的能力の行使に関連するすべての措置には濫用を防止するための適切かつ効果的な保護が含まれることを確保する。当該保護 は、法的能力の行使に関連する措置が、障害のある人の権利、意思及び選好を尊重すること、利益相反及び不当な影響を生じさせないこと、障害のある人の状況 に対応し及び適合すること、可能な限り最も短い期間に適用すること、並びに権限のある、独立の、かつ、公平な当局又は司法機関による定期的な審査に服する ことを確保するものとする。当該保護は、当該措置が障害のある人の権利及び利益に及ぼす影響の程度に対応したものとする。
5 締約国は、この条の規定に従うことを条件として、財産の所有又は相続についての、自己の財務管理についての並びに銀行貸付、抵当その他の形態の金融上の信 用への平等なアクセスについての障害のある人の平等な権利を確保するためのすべての適切かつ効果的な措置をとる。締約国は、また、障害のある人がその財産 を恣意的に奪われないことを確保する。
第13条 司法へのアクセス
1 締約国は、障害のある人がすべての法的手続(調査〔捜査〕段階その他の予備段階のものを含む。)において直接及び間接の参加者(証人を含む。)として効果 的な役割を果たすことを容易にするため、手続上の配慮及び年齢に適した配慮を行うこと等により、障害のある人が他の者との平等を基礎として司法に効果的に アクセスすることを確保する。
2 締約国は、障害のある人が司法に効果的にアクセスすることを確保することに役立てるため、司法に係る分野に携わる者(警察官及び刑務官を含む。)に対する適切な訓練を促進する。
第14条 身体の自由及び安全
1 締約国は、次のことを確保する。
(a) 障害のある人が、他の者との平等を基礎として、身体の自由及び安全についての権利を享有すること。
(b) 障害のある人が、他の者との平等を基礎として、自由を不法に又は恣意的に奪われないこと、いかなる自由の剥奪も法律に従い行われること、及びいかなる場合においても自由の剥奪が障害の存在により正当化されないこと。
2 締約国は、障害のある人が、いずれの手続を通じても自由を奪われた場合には、他の者との平等を基礎として国際人権法による保障を受ける権利を有すること、並びにこの条約の趣旨及び原則に従い取り扱われること(合理的配慮を行うことによるものを含む。)を確保する。
第15条 拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰からの自由
1 いかなる者も、拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰を受けない。特に、いかなる者も、その自由な同意なしに医学的又は科学的実験を受けない。
2 締約国は、障害のある人が拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰を受けることを、他の者との平等を基礎として防止するため、すべての効果的な立法上、行政上、司法上その他の措置をとる。
第16条 搾取、暴力及び虐待からの自由
1 締約国は、家庭の内外におけるあらゆる形態の搾取、暴力及び虐待(これらのジェンダーを理由とする状況を含む。)から障害のある人を保護するためのすべての適切な立法上、行政上、社会上、教育上その他の措置をとる。
2 締約国は、また、搾取、暴力及び虐待の事案を防止し、認識し及び報告する方法に関する情報及び教育を提供すること等を通じて、特に、障害のある人並びにそ の家族及び介助者に対してジェンダー及び年齢を考慮した適切な形態の援助及び支援を行うことを確保することにより、あらゆる形態の搾取、暴力及び虐待を防 止するためのすべての適切な措置をとる。締約国は、保護サービスが年齢、ジェンダー及び障害を考慮したものであることを確保する。
3 締約国は、あらゆる形態の搾取、暴力及び虐待の発生を防止するため、障害のある人向けのすべての施設〔機関・設備〕及び計画が、独立した当局により効果的に監視〔モニター〕されることを確保する。
4 締約国は、あらゆる形態の搾取、暴力又は虐待の被害者となる障害のある人の身体的、認知的及び心理的な回復、リハビリテーション並びに社会復帰〔社会的再 統合〕を促進するためのすべての適切な措置(保護サービスの提供によるものを含む。)をとる。このような回復及び復帰は、障害のある人の健康、福祉、自尊 心、尊厳及び自律を促進する環境において行われるものとし、ジェンダー及び年齢に特有の必要〔ニーズ〕を考慮に入れる。
5 締約国は、障害のある人に対する搾取、暴力及び虐待の事案が明らかにされ、調査〔捜査〕され、かつ、適切な場合には訴追されることを確保するための効果的な法令及び政策(女性及び子どもに重点を置いた法令及び政策を含む。)を策定する。
第17条 個人のインテグリティ〔不可侵性〕の保護
障害のあるすべての人は、他の者との平等を基礎として、その身体的及び精神的なインテグリティ〔不可侵性〕を尊重される権利を有する。
第18条 移動の自由及び国籍
1 締約国は、障害のある人に対し、他の者との平等を基礎として、移動の自由、居所を選択する自由及び国籍についての権利を認めるものとし、特に次のことを確保する。
(a) 障害のある人が、国籍を取得し及び変更する権利を有すること、並びにその国籍を恣意的に又は障害を理由として奪われないこと。
(b) 障害のある人が、国籍に係る文書若しくは身元に係る他の文書を入手し、所有し及び利用する法的資格、又は移動の自由についての権利の行使を容易にするために必要とされることのある関連手続(出入国手続等)を行う法的資格を、障害を理由として奪われないこと。
(c) 障害のある人が、いずれの国(自国を含む。)からも離れる自由を有すること。
(d) 障害のある人が、自国に入国する権利を恣意的に又は障害を理由として奪われないこと。
2 障害のある子どもは、出生の後直ちに登録されるものとする。障害のある子どもは、出生の時から氏名を有する権利及び国籍を取得する権利を有するものとし、可能な限りその親を知りかつその親によって養育される権利を有する。
第19条 自立した生活〔生活の自律〕及び地域社会へのインクルージョン
この条約の締約国は、障害のあるすべての人に対し、他の者と平等の選択の自由をもって地域社会で生活する平等の権利を認める。締約国は、障害のある人に よるこの権利の完全な享有並びに地域社会への障害のある人の完全なインクルージョン及び参加を容易にするための効果的かつ適切な措置をとるものとし、特に 次のことを確保する。
(a) 障害のある人が、他の者との平等を基礎として、居住地及びどこで誰と生活するかを選択する機会を有すること、並びに特定の生活様式で生活するよう義務づけられないこと。
(b) 障害のある人が、地域社会における生活及びインクルージョンを支援するために並びに地域社会からの孤立及び隔離を防止するために必要な在宅サービス、居住サービスその他の地域社会支援サービス(パーソナル・アシスタンスを含む。)にアクセスすること。
(c) 一般住民向けの地域社会サービス及び施設〔設備〕が、障害のある人にとって他の者との平等を基礎として利用可能であり、かつ、障害のある人の必要〔ニーズ〕に応ずること。
第20条 個人の移動性
締約国は、障害のある人が可能な限り自立〔自律〕して移動することを確保するための効果的な措置をとるものとし、特に次のことを行う。
(a) 障害のある人が、自ら選択する方法で、自ら選択する時に、かつ、負担可能な費用で移動することを容易にすること。
(b) 障害のある人が、質の高い移動補助具、補装具〔補助器具〕、支援技術〔支援機器〕、ライブ・アシスタンス〔人又は動物による支援〕及び媒介者のサービスにアクセスすることを、特に、これらを負担可能な費用で利用可能なものとすることにより容易にすること。
(c) 障害のある人に対し及び障害のある人と共に行動する専門職員に対し、移動技能の訓練を提供すること。
(d) 移動補助具、補装具〔補助器具〕及び支援技術〔支援機器〕を生産する主体が、障害のある人の移動のあらゆる側面を考慮に入れるよう奨励すること。
第21条 表現及び意見の自由並びに情報へのアクセス
締約国は、障害のある人が、他の者との平等を基礎として、第2条に定めるあらゆる形態のコミュニケーションであって自ら選択するものにより、表現及び意 見の自由(情報及び考えを求め、受け及び伝える自由を含む。)についての権利を行使することができることを確保するためのすべての適切な措置をとる。この ため、締約国は、特に次のことを行う。
(a) 障害のある人に対し、適時にかつ追加の費用の負担なしに、様々な種類の障害に適応したアクセシブルな様式及び技術〔機器〕により、一般公衆向けの情報を提供すること。
(b) 障害のある人が、その公的な活動において、手話、点字、拡大代替〔補助代替〕コミュニケーション並びに自ら選択する他のすべてのアクセシブルなコミュニケーションの手段、形態及び様式を用いることを受け入れ及び容易にすること。
(c) 一般公衆にサービス(インターネットによるものを含む。)を提供する民間主体が、情報及びサービスを障害のある人にとってアクセシブルかつ使用可能な様式で提供するよう勧奨すること。
(d) 大衆媒体〔マス・メディア〕(インターネットで情報を提供する主体を含む。)が、そのサービスを障害のある人にとってアクセシブルなものとするよう奨励すること。
(e) 手話の使用を承認し及び促進すること。
第22条 プライバシーの尊重
1 障害のあるいかなる人も、居住地又は生活様式のいかんを問わず、そのプライバシー、家族、家庭又は通信その他の形態のコミュニケーションを恣意的に若しく は不法に干渉され、又は名誉及び信用を不法に攻撃されることはない。障害のある人は、このような干渉又は攻撃に対する法律の保護を受ける権利を有する。
2 締約国は、他の者との平等を基礎として、障害のある人の個人情報、健康に関連する情報及びリハビリテーションに関連する情報についてのプライバシー〔秘密性〕を保護する。
第23条 家庭及び家族の尊重
1 締約国は、他の者との平等を基礎として、婚姻、家族、親子関係及び親族関係に係るすべての事項に関し、障害のある人に対する差別を撤廃するための効果的かつ適切な措置をとるものとし、次のことを確保する。
(a) 婚姻をすることのできる年齢にある障害のあるすべての人が、両当事者の自由かつ完全な合意に基づいて婚姻をし及び家族を形成する権利を認めること。
(b) 障害のある人が、子どもの数及び出産間隔を自由にかつ責任をもって決定する権利、並びにその年齢に適した方法で生殖・出産及び家族計画に関する情報及び教 育にアクセスする権利を認めること。また、障害のある人がこれらの権利を行使することを可能とするために必要な手段を提供すること。
(c) 障害のある人(障害のある子どもを含む。)が他の者との平等を基礎として生殖能力を保持すること。
2 締約国は、子どもの後見、監督、管財、養子縁組又は国内法令にこれらに類する制度が存在する場合にはその制度についての障害のある人の権利及び責任を確保 する。あらゆる場合において、子どもの最善の利益は至上である。締約国は、障害のある人が子どもの養育についての責任を遂行するに当たり、その者に対して 適切な援助を与える。
3 締約国は、障害のある子どもが家族生活について平等の権利を有することを確保する。締約国は、この権利を実現するため並びに障害のある子どもの隠匿、遺 棄、放置及び隔離を防止するため、障害のある子ども及びその家族に対し、包括的な情報、サービス及び支援を早期に提供することを約束する。
4 締約国は、子どもがその親の意思に反してその親から分離されないことを確保する。ただし、権限のある当局が、司法の審査に従うことを条件として、適用のあ る法律及び手続に従い、その分離が子どもの最善の利益のために必要であると決定する場合は、この限りでない。いかなる場合にも、子どもは、その子どもの障 害又は一方若しくは両方の親の障害を理由として親から分離されない。
5 締約国は、最も近い関係にある家族〔親及び兄弟姉妹〕が障害のある子どもを監護〔ケア〕することができない場合には、より広い範囲の家族の中で代替的な監 護〔ケア〕を提供し、また、これが不可能なときは、地域社会の中の家庭的な環境で代替的な監護〔ケア〕を提供するためのすべての努力を行うことを約束す る。
第24条 教育
第25条 健康
第26条 ハビリテーション及びリハビリテーション
第27条 労働及び雇用
第28条 適切〔十分〕な生活水準及び社会保護
第29条 政治的及び公的活動への参加
第30条 文化的な生活、レクリエーション、余暇及びスポーツへの参加
第31条 統計及びデータ収集
第32条 国際協力
第33条 国内的な実施及び監視〔モニタリング〕
第34条 障害のある人の権利に関する委員会
第35条 締約国の報告
第36条 報告の検討
第37条 締約国と委員会との協力
第38条 委員会と他の機関との関係
第39条 委員会の報告
第40条 締約国会議
第41条 寄託先
第42条 署名
第43条 拘束されることについての同意
第44条 地域的な統合のための機関
第45条 効力発生
第46条 留保
第47条 改正
第48条 廃棄
第49条 アクセシブルな様式
第50条 正文
http://www.normanet.ne.jp/~jdf/shiryo/convention/30May2008CRPDtranslation_into_Japanese.html
Convention on the Rights of Persons with Disabilities
http://www.un.org/esa/socdev/enable/plenaryofga06.htm,
visited 19 February 2007
「障害者の権利に関する条約」の日本政府仮訳
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/treaty/pdfs/shomei_32.pdf,
visited 11 October 2007