かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞 81

2022-05-11 11:55:34 | 短歌の鑑賞
  渡辺松男研究2の11(2018年5月実施)
    【夢みるパン】『泡宇宙の蛙』(1999年)P57~
     参加者:泉真帆、A・K、T・S、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:渡部慧子 司会と記録:鹿取未放


81 ほのかなる雲のにおいの頻伽来て天にちいさなる子宮を鳴らす

      (レポート)
 頻伽とは迦陵頻伽を指して極楽にいるという想像上の美声の鳥。それが飛来してきて天に子宮を鳴らすという。子宮というものを神秘的な器官としてたたえ、同時に儀式に鳴らす楽器のように子宮をとらえているのかもしれない。飛天のいる仏画のようだ。(慧子)


    (当日発言)
★迦陵頻伽は胴体からは鳥だけど頭は人間。ここで鳴らす子宮は鳥なので人間の子宮とは
 生々しさが違いますね。斎藤茂吉に有名な迦陵頻伽の歌があります。(鹿取)
★このにおいというのは色つやとかではなくて、スメルの匂いなんですよね。(真帆)
★はい、スメルの匂いだと思います。松男さんの雲はとても思い入れがあってたくさん詠ま
 れていますが、天上と地上を繋ぐものなんでしょうか。(鹿取)
★この一連は産むことをテーマにして歌っていて、いろんなものに想像を飛ばしていく訳で
 すが、迦陵頻伽が子宮を鳴らすって常人にはできない発想で、でも聞こえそうに思えてく
 る。松男ワールドの面白さだなあと。(真帆)
★前の歌の透き通ってゆくお蚕様や妊娠した女にはなまなまとしたものを感じたのですが、
 こちらは雲の匂いという天上的な形容で、しかもそれが仄かだというところに美しさを感
 じます。だから子宮を鳴らすと言われても清らかな音が響いてくる。素直に言葉通りに読
 むといい気分になれる。(鹿取)
★はい、解説なんかしちゃいけなくて、このまま読んですばらしい。渡辺松男は天才だと思
 います。「ほのかなる」がとっても効いていますよね。きっと天上にはこんな美しい世界
 があるに違いないと思わせられる、すばらしい歌だと思います。(A・K)


        (まとめ)
  とほき世のかりようびんがのわたくし児(ご)田螺(たにし)はぬるきみづ恋ひにけり
           『赤光』斎藤茂吉

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