かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

馬場あき子の外国詠 279 トルコ②

2024-02-15 17:20:44 | 短歌の鑑賞
 2024年度版 馬場あき子の外国詠37(2011年3月実施)
   【遊光】『飛種』(1996年刊)P121~
   参加者:N・I、井上久美子、崎尾廣子、鈴木良明、曽我亮子、藤本満須子、
       渡部慧子、鹿取未放
   レポーター:曽我亮子 司会と記録:鹿取未放
   
279 箒売る男行きわが立ち止まるオリエント急行今日発車なし

        (まとめ)
 オリエント急行は1833年に開始されたパリとイスタンブールを結ぶ豪華な寝台列車。優雅に3泊4日をかけて走り王侯貴族などに愛用されたが、1977年には飛行機等におされて乗客が減少したため廃止された。その後、様々な別会社がオリエント急行の車両を買い取り、いろいろなルートで観光用に「オリエント急行」を走らせている。作者がトルコ旅行をした1993年当時は、オリジナル・ルートで再現した特別企画列車が年1~2回走っている程度であったようだ。「今日発車なし」とはそういう事情のうえでの言葉である。
 この歌は「オリエント急行」のかつての終着駅だったトルコのシルケジ駅での属目と感慨であろうか。かつて王侯貴族達が豪華列車から降り立った駅に、今は箒を売る男が行く庶民的な顔を見せている。「今日発車なし」とは、賑わった往時への懐かしみと寂しさであろうか。時は移り、王侯貴族が使った待合室はレストランになって、観光客で賑わっているそうだ。
 余談だが、アガサ・クリスティのミステリー「オリエント急行殺人事件」は、この急行列車を舞台に1934年に書かれた傑作で、何度も映画化されている。もしかしたら映画で見た着飾る乗客達の姿が目前の駅舎に重ねられていたかも知れない。(鹿取)



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