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かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞 382

2021-12-24 19:57:54 | 短歌の鑑賞
  渡辺松男研究46(2017年2月実施)『寒気氾濫』(1997年)
    【冬桜】P154
     参加者:泉真帆、M・S、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:①曽我 亮子(②渡部 慧子)
     司会と記録:鹿取 未放


382 久方の空澄みわたりゆえもなく元旦の日をおびえていたり

          (レポート①)
 久しぶりに空が澄んで訳もなく美しいので元旦に何か不吉なことが起きるのではないかと怯えている私です…渡辺さんのデリケートさが目に見えるようです。(曽我)


         (レポート②)  
 白日の下にさらされるということがあるが、元旦の空の美しさに「おびえていたり」という心境は理解できる。澄み渡った光りに消えてしまいそうに思ったり、光りの様子をいたいと感じたりするものだ。(慧子)


     (当日発言) 
★曽我さんのレポートですが、「久方の」は空に掛かる枕詞で、久しぶりって意味ではないです。
   (鹿取)
★何もかも一新され浄められている元旦に仕切り直されているような恐ろしさ、仕切り直そうとす
 る元旦の恐ろしさに作者は怯えたのではないか。(真帆)
★仕切り直すということを、もう少し丁寧に説明してくれませんか。(鹿取)
★粛正されるという言葉がありますが、古来から何もかも新たにする元旦、塵一つ無いことを怯え
 たのじゃないかと。大晦日と元旦が全て変わる、あるかないかわからない神のようなものをみん
 なが念頭に置いているようで。何もかも爽やかになったことに怯える。(真帆)
★なぜ爽やかさを怯えるんでしょう?(鹿取)
★この作者は混沌とした有り様を是としているように思います。ですから、すごくこう美しさとい
 うかは恐れていて、ごみごみしているのが普通。美しくなってハッピーニューイヤー、さあ元旦
 ですよっていうのが怖い。(真帆)
★うーん、世俗的な事ではなく、哲学的というか存在論的に何かを怯えているのだと思いますが。
 それに「ゆえもなく」がくせもので、この語にひっかかるんですね。空が澄み渡っていることを
 単純に怯えるのではなくて、それと関連はしているんだけど「ゆえもなく」が加わるんですね。
     (鹿取)
★「ゆえもなく」とあるけど、本当はゆえがあるのよというのが真帆さんの意見ではないでしょう
 か?こんなに綺麗でいいのか、それに怯える。自分が光りの中に差し出されてしまったような。
 澄んだ空は存在のかなしさを思わせるから11月でも12月でもいいけれど元旦の方が効果的だ
 からそうしたのかと。(慧子)
★いや、元旦が意味を持つ歌でしょう。「元旦の日」の「日」ってもしかしたらお日様のことかし
 ら。(鹿取)
★何もかも清らかになってみんながおめでとうって言うけど、何、昨日と変わらないじゃないか、
 自分にはおめでたさなんて来ていない、ということを怯えると表現した。(M・S)
★この作者は嬉しくても嬉しいと言わないのではないか。あまりにも光りが美しかったので。光り
 の美しさに圧倒されている。きれいすぎて怖いという感じ。(慧子)
★みんなの意見を聞いていると、曽我さんの空が澄んで不吉なことが起きるのではないかという意
 見に戻ります。(真帆)
★いや、不吉なことも何も起こらないのです。ゆえもなくは怯えるにかかると思います。(M・S)
★そうですね、やはり哲学的、存在論的な怯えだと思います。(鹿取)

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