かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 37

2023-05-05 10:22:32 | 短歌の鑑賞
 2023年版渡辺松男研究5(13年5月実施)
    『寒気氾濫』(1997年)橋として
     参加者:崎尾廣子、鈴木良明、渡部慧子、鹿取未放
      レポーター  鈴木良明 まとめ  鹿取 未放


37 神でさえ弛んでおればぶよぶよのつぶしてみたき満月のぼる

        (レポート)   
 バブル経済崩壊後の日本は、依然としてバブルの余韻から立ち直れない時期がしばし続いた。この時期の、いわば爛熟してただれたような日本の社会やその精神状態をぶよぶよの満月に見立てているように思う。すべてを統べることのできる神でさえ気を弛めておればこのありさまであると仮構しているが、神の居ない人間界ならなおさらであるとの思いだろう。その鬼灯のようなぶよぶよの満月をつぶしてみたい、との思いはリアルであり、現状に対する作者の率直な気持ちが顕われている。(鈴木)


    (当日意見)
★ニーチェは「神は死んだ」って言ったそうですが、そうは言えないので「弛んで」
 と言ったのではないか。(慧子)
★私は「つぶしてみた」いと思っているのは「神」で、その対象は弛んだぶよぶよ
 の満月かと考えましたが、弛んでいるのは神ですか?(鹿取)
★えっ、つぶしてみたいの主語は私ですよね?(慧子)
★そうすると、「おれば」は確定条件だから、神でさえもたるんでいるので、その
 せいでぶよぶよの満月が昇ってくる、それを〈われ〉は潰してみたいと言うこと
 ですか。それとも「弛んでおれば」は月にかかるのかな。弛んでいるのでぶよぶ
 よになった満月、それは神でさえも潰してみたいようなしろものだって。
 慧子さんが最初におっしゃった「神は死んだ」ですけど、ニーチェは人間がよっ
 てたかって介入した結果、神を殺したんだ、と言っているのよね。だからまだ神
 が死んだことを知らない人間どもに対してニーチェは辛辣な批判をしている。余 
 談だけど、月のおかげで地球の海は蒸発しないですんで、海のおかげで地球の生
 命は芽生えて進化して来たわけだから、われわれは月にはものすごく恩恵を被っ
 ているんだけど。(鹿取)
★バブルとか念頭におくと次の歌にも繋がっていって分かりやすいんじゃないか。
   (鈴木)


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