かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞  227

2021-05-23 16:51:08 | 短歌の鑑賞
 渡辺松男研究28(15年6月実施)【陰陽石】『寒気氾濫』(1997年)97頁~
   参加者:石井彩子、泉真帆、M・K、崎尾廣子、M・S、鈴木良明、曽我亮子、
       渡部慧子、鹿取未放
    レポーター:曽我 亮子 司会と記録:鹿取 未放


227 汗かけば別のまぶしき宇宙見え陰陽石が突っ立っている 
  
       (当日意見)
★ネットで調べると、男の性器と女の性器が対で祀ってある、そういうのを陰陽石(いん
 ようせき)というそうです。自然の営みの中にそういう陰と陽が存在している。(鈴木)
★私は「汗かけば」は226の歌(汗ばむということ秘密めきていて春霞する谷(やと)
 を行くなり)の続きで読めると思います。谷を行きながら汗をかくと昂揚して別の世界
 が見えてくる。その別世界に陰陽石が突っ立っている。あるいは昂揚した気分になると、
 自分が踏みしめている大地が全く違う世界のように見える。そういうことってハイキン
 グでも山歩きでもあることですよね。だから陰陽石は〈われ〉の頭の中に見えていても
 いいし、現実に突っ立っていてもいいと思います。しかもその陰陽石はとても自然でお
 おらかに存在していたのだと思います。(鹿取)
★性愛のことを詠っているとは思いますが、スポーツをして汗をかくと別人になったよう
 な気分がする。そんな感じかな、上句のすばらしさを思いました。(慧子)
★言葉の取り合わせがとてもおもしろい。宇宙ということば、陰陽石という言葉など。陰
 陽石は神社の裏手などで見たことがありますが、子孫繁栄とかを願っているんですね。
 おもしろい歌だと思います。(石井)
★先ほど慧子さんがおっしゃったのを聞いて、スポーツによる別世界というのがすとーん
 と胸に落ちました。陰陽石は男性女性問わず生々しい生き物のようなぎょっとする感じ
 がします。汗をかくと、この世とは別にある生々しい石の宇宙が見えてくるのではない
 でしょうか。(真帆)


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