かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞  226

2021-05-22 23:20:59 | 短歌の鑑賞
 渡辺松男研究28(15年6月実施)【陰陽石】『寒気氾濫』(1997年)97頁~
   参加者:石井彩子、泉真帆、M・K、崎尾廣子、M・S、鈴木良明、曽我亮子、
       渡部慧子、鹿取未放
    レポーター:曽我 亮子 司会と記録:鹿取 未放


226 汗ばむということ秘密めきていて春霞する谷(やと)を行くなり

        (レポート)
 汗ばんでいるということは何か心に隠し事を秘めて昂ぶっているから。「汗」は端的に言えば「体温調節」の為にあるが、「精神的緊張」によっても出る。この「陰陽石」の一連は暗喩法を交えながら男女の「性的心象」が歌われており、今までの歌とはかなり異なった印象を受ける…。(曽我)


       (当日意見)
★曽我さんが書いているように、汗ばむは性的なことに関連する。谷(やと)という言葉 
 には女性のホトと共通する何かがあるようだ。(鈴木)
★今回の一連は性の交わりをおおきな自然の中でみていくという意図があるのではない
 か。それを暗い感じではなく明るく性を讃えるという感じで詠っている。この歌は春霞
 があるところに露が降りている質感だとか、スモークがかかっているような質感が面白
 かった。(真帆)
★今回から始めるⅢに収められている歌は、朝日歌壇に載った歌だと本人がおっしゃった
 か、どこかに書いていらしたかの記憶があります。ですから、Ⅰ、Ⅱから比べると比較
 的分かりやすい歌だと思うのですが。真帆さんがおっしゃったように、この一連は明る
 くというか天真爛漫という印象を受けます。性は別に隠すべきものではないという、陰
 陽石という題からしてあっけらかんとしていますから。私は楽しい一連として読みまし
 た。この歌についていえば、春霞する谷を歩いていると汗ばんできた、その汗にふっと
 秘密めいた性愛の場面などを思っているのでしょう。(鹿取)

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