かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞 43

2022-04-05 15:03:55 | 短歌の鑑賞
  渡辺松男研究2の6(2017年11月実施)『泡宇宙の蛙』(1999年)
    【夢監視人】P32~
     参加者:泉真帆、T・S、曽我亮子、渡部慧子、A・Y、鹿取未放
     レポーター:泉 真帆    司会と記録:鹿取未放
     

43 アウストラロピテクスとして石を蹴りわけのわからぬ悲哀こみあぐ

      (レポート)
 人を万物の霊長などというが内実はその逆で、戦争をおこし人類のみならず万物を滅ぼしてしまいそうな愚かな我々である。「石を蹴」る所作が作者のやりきれない心を巧みに表現していると思う。(真帆)

      (まとめ)
 アウストラロピテクスは「(南の猿の意)南部アフリカ、東部アフリカの第四紀層下部から発見された化石人類の一群。約400万~150万年前に生息した最古の人類と考えられる。(中略)
猿人」(広辞苑)なので、現生人類と地続きではない。文字を持たなかったアウストラロピテクスは、どのような思考をしていたのだろうか。41番歌「永遠の静止のごとく月は泛き荒船山は狸あそばす」、42番歌「透りたる尾鰭をみれば永遠はすずしそうなり化石の石斑魚(うぐい)」というように作者の思考は〈永遠〉に遊んでいて、ここではふっと〈われ〉がアウストラロピテクスになってしまった。石を蹴る行為によって呼び起こされた悲哀は、生きとし生けるものの持つ命に根ざす不安やかなしみであろう。(鹿取)

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