かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 11

2023-03-22 11:19:51 | 短歌の鑑賞
 2023年度版 渡辺松男研究3
   (13年3月)【地下に還せり】
   『寒気氾濫』(1997年)12~
    参加者:崎尾廣子、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
    司会と記録:鹿取 未放


11 月天心嬬恋村に森ありてふところふかく家々を抱く

     (当日意見)
★誰が何を抱いているのかは分からない。しかし上の句に「抱く」
 とあって「嬬」が出てくるので、エロスですか、そういうものを
 感じて嬬恋村に仮託しているのだと思う。また月天心、嬬恋村と
 タ行音を重ねた出だしが漢字表記なのになめらか。(慧子)
★妻を思い出している気分がある。妻を森のように暖かく抱く気
 分。(曽我)
★家々には慧子さんが言うような妻を愛する場面もあるんだろうけ
 れど、個々の家々を森が抱いて、その森を月が照らしている。そ
 ういう自然そのものがエロスをはらんでいるが、月の光が浄化あ
 るいは荘厳している感じ。与謝蕪村の「月天心貧しき町を通りけ
 り」はいかにも画家らしい句で通り過ぎる自分を含めて俯瞰して
 いるようなイメージだけど、松男さんの歌は自分はその画面の中
 にはいなくて、月と一体化して風景を俯瞰している感じ。蕪村の
 月はすさまじく冷たい光を放っているようだけど、松男さんの月
 はやさしくやわらかい印象を受ける。とても深々とした安堵感の
 ある歌。(鹿取)  

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