かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『泡宇宙の蛙』の一首鑑賞 256

2024-07-16 09:21:01 | 短歌の鑑賞
※4年ぶりに支部の勉強会を再開しました。 
 久しぶりの、リアル松男研究です。

   2024年度 渡辺松男研究2の33(2024年6月実施)
     Ⅳ〈白骨観〉『泡宇宙の蛙』(1999年)P164~
     参加者:M・A、岡東和子、鹿取未放、A・K、菅原あつ子(紙上参加)、
     司会と記録:鹿取未放


256 今日はむしょうに急須のなかに入りたし急須はとくに落ち着いている

         (事前意見)
 急須の中に入りたいと思う人は、この作者のほかにいるだろうか。たぶんいないし、そういう想像すらしないだろう(私も)。けれど、こういわれると、ああそれもいいな、確かに急須の中にすっぽり入ったらなんだかほっとするかもしれないなと感じさせるから不思議。上には、いざとなれば持ち上げられる、光の入る小さな穴が開いた蓋があるし、注ぎ口から風も入ってくる。ほのかな茶のかおりもして。リラックスできそう。(菅原)


        (当日発言)
★この歌好きなんですが、この着想には類型があって、藤枝静男の小説「田紳士有楽」
 っていいます。家の池に茶碗を沈めているのですが、池の金魚とその茶碗が恋をする
 話なんです。茶碗が生命をもっていて、空をとんでヒマラヤまで行ったりするんです
 ね。細部ちょっと忘れましたが、焼き物にはそんなイメージがありますね。無生物な
 のに生命感があって、温かい。悟りの世界へいくのかな。(M・A)
★ぶんぶく茶釜というのもありましたね。(鹿取)
★これは自分が小さくなりたいという感じなのでしょうかね。結句が渡辺さんだなあと
 思います。入りたいという所までは他の人にも書けてもね。(A・K)
★そうですね、急須なのに落ち着いていない日もあるのね。(鹿取)
★不思議の国のアリスだって入っていきますからね。(岡東)
★時計の中に、とか急須の中にとか、何かあるのでしょうかね。(A・K)
★時計の中には人間が入るわけではないけど、急須の中に入りたい、に何かあるのかと
 言われれば母体回帰願望とかいうことはいえますよね。でもそういうと歌がつまらな
 くなる。フロイト的に言えば急須だって女性の象徴だから、男性が女性の中に入りた
 い願望だとも分析できないことは無いけど、その解釈は好きじゃないです。A・Kさ
 んも同じ意見だと思うけど。この歌の小さくなって急須の中に入りたいって願望、人
 間は時にこんな感じでほっとするよね、くらいでいいかなと。別に結論づけじゃない
 けど。(鹿取)


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 渡辺松男『泡宇宙の蛙』の一... | トップ | 馬場あき子の外国詠 64 ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

短歌の鑑賞」カテゴリの最新記事