かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 256

2024-05-09 11:01:13 | 短歌の鑑賞
 2024年版 渡辺松男研究31まとめ(15年9月)
    【はずかしさのまんなか】『寒気氾濫』(1997年)107頁~
     参加者:S・I、泉真帆、M・S、鈴木良明、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:泉 真帆 司会と記録:鹿取 未放


256 おおきなる幻日を背にうつくしき舞踏病なりこの枯れすすき

   (レポート)
〈解釈〉 「幻日」は、太陽の両側にあらわれる光輝の強い点、空中に浮かぶ氷晶による光の屈折でおこる暈(かさ)の一種で、白色または薄い色彩を帯びる、と広辞苑にある。空に大きくひろがった幻日を背に、枯れすすきが風にゆれているさまは美しく、淋しくも美しい舞踏病のようだ。
 〈鑑賞〉この一首は、ただ素直に哀愁きわまる美しい景を味わえばよい、とも思ったのだが、正直にいうと「舞踏病」という語に戸惑った。「うつくしき」と修飾し、「舞踏病」という悲痛な病でもって芒のさまを表現することに抵抗を感じた。それできっとこれは、「赤い靴」を履いたように風に踊り止まない枯れ芒のさまだ、とも曲解してみたが、豊島与志雄の短編小説『舞踏病』にであい、こういう病をモチーフにする表現もゆるされるのかと、いまは文字通り病気の「舞踏病」だと鑑賞している。(真帆)


    (当日意見)
★病気の舞踏病にあまり拘らなくていいのではないですか。すすきが風になびいてしき
 りに揺らいでいる様子を舞踏病だと形容したので、だからこそ「うつくしき」って形
 容詞も活きるのでは。「幻日」というとても幻想的な風景の中にすすきも優美に揺れ
 動 いている。(鹿取)
★あまり病気に拘りすぎると困るけど、舞踏病は不随意筋が動くようだけど、ここは随
 意筋が動く感じなのかな。ここは風のままにすすきが動く感じかなと。(鈴木)
★枯れすすきが風によってなすがままに動いている、それが美しいと言っていらっしゃ
 る。全体が情景描写だから、踊るという文字もなびている様を想像させます。(S・I)

コメント
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