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かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『泡宇宙の蛙』の一首鑑賞 47 

2022-04-09 11:30:33 | 短歌の鑑賞
     ※本日2回目の記事です。

  渡辺松男研究2の7(2017年12月実施)『泡宇宙の蛙』(1999年)
    【山鳥薇】P36~
     参加者:泉真帆、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
      レポーター:渡部慧子 司会と記録:鹿取未放
  
47 全世界音うばわれて完成す化石のわれのあおげる瀑布

       (まとめ)          
 珍しく「われ」という一人称が出てくる。われは音を奪われて化石になっているが、瀑布が見えているから場所は滝の近くなのだろう。滝は轟音を発しているが化石に閉じ込められたわれには何も聞こえない。全世界に音は充ち満ちているけれど、全世界の音がわれからは奪われている。
 前の章の42番歌「透りたる尾鰭をみれば永遠はすずしそうなり化石の石斑魚(うぐい)」では
「すずしそう」から開放感を感じたが、こちらは「うばわれて」でどうしても閉塞感を感じてしまう。
    (鹿取)
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改訂版 渡辺松男『泡宇宙の蛙』の一首鑑賞  26       

2022-04-09 10:56:16 | 短歌の鑑賞
 ※本日から改訂版を先にアップします。
  既にアップした『泡宇宙の蛙』2の1~2の5までの鑑賞を大幅に変更した歌について、
  改訂版を1首ずつ載せてゆきます。
この後、本日2回目になる通常の鑑賞を載せます。  


  改訂版 渡辺松男研究2の4(2017年9月実施)
    『泡宇宙の蛙』(1999年)【大雨覆】P24~
     参加者:泉真帆、T・S、曽我亮子、渡部慧子、A・Y、鹿取未放
      レポーター:泉 真帆    司会と記録:鹿取未放
     

26 ひかりより繊きおもいというものを鳥は知りつつ天翔るらん

        (レポート)
 太陽光が生き物へ与える慈しみより、もっと繊細な恩寵を天(そら)から身に浴びていることを、鳥は自覚しながら翔んでいるのだろう、と鳥への畏敬の情を詠んでいるように思う。(真帆)


        (まとめ)
 「ひかりより繊きおもい」というのは、大いなるものの意志、超越者から与えられているものなのだろう。鳥は天を翔けながらその恩寵のようなものを、思念ではなく直観として体に沁みて知っているのだなあと〈われ〉が思っている。これから鑑賞する歌に「白鳥はふっくらと陽にふくらみぬ ありがとういつも見えないあなた」というのがあるが、この歌の「あなた」と26番歌の「ひかりより繊きおもい」を発している主体はたぶん同じなのだろう。(鹿取)

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