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かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

改訂版 渡辺松男『泡宇宙の蛙』の一首鑑賞 2

2022-04-04 11:47:32 | 短歌の鑑賞

 ※本日、2回目の投稿です。
  既にアップした『泡宇宙の蛙』2の1~2の5までの鑑賞を大幅に変更した歌について、
   改訂版を1首ずつ1回目の記事に追加して載せてゆきます。

  改訂版 渡辺松男研究2の1(2017年6月実施)『泡宇宙の蛙』(1999年)
    【無限振動体】P9~
     参加者:泉真帆、T・S、曽我亮子、A・Y、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:渡部慧子 司会と記録:鹿取未放


2  倒木を埋めつくしたるうごめきのイヌセンボンタケ食毒不明

       (当日意見)
★食べる食べないは関係なく、ものすごい数の茸が無限のように蠢いているって想像するだけで楽
 しいですね。森の光りの中で茸が揺れている、その風景だけで素晴らしい。(A・Y)


         (まとめ)
 イヌセンボンタケを図鑑で見ると傘が白くてつりがねのようなかわいい形をしている。センボンというけれど、倒木に群生して千本どころではない圧倒的な大群落をなしている。その大群落ご とうごめいている風景に〈われ〉はただただ感嘆しているのだろう。ちなみに、イヌセンボンタ ケは食べられるが、あまり美味しくないそうだ。(鹿取)


        (歌集評)
 倒木を埋めつくすイヌセンボンタケ。食べられるか否かは問題外。ただひたすらに渡辺松男は森の生命的起源を確認したいのである。(鶴岡善久)
 「森、または透視と脱臼」(「かりん」2000年2月号) 

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渡辺松男『泡宇宙の蛙』の一首鑑賞 42

2022-04-04 11:29:05 | 短歌の鑑賞
  渡辺松男研究2の6(2017年11月実施)『泡宇宙の蛙』(1999年)
    【夢監視人】P32~
     参加者:泉真帆、T・S、曽我亮子、渡部慧子、A・Y、鹿取未放
     レポーター:泉 真帆    司会と記録:鹿取未放
     

42 透りたる尾鰭をみれば永遠はすずしそうなり化石の石斑魚(うぐい)

       (レポート)
 星尾峠から30㎞ほど離れるが、群馬県には神流町恐竜センターがある。化石の発掘体験もできるのだという。薄い尾鰭の部分はべっ甲のように透けているのではないか。「永遠はすずしそうなり」がとても効いている。永遠という言葉から重さや強さやあてどなさやロマンはイメージできても、「すずしそう」には虚をつかれる。壮大な恒久的静けさが広がる。(真帆)


         (まとめ)
 一首には化石になった石斑魚が提示される。それはレポーターがいうように神流町恐竜センターに展示されていたのかもしれないが、どこで見たかは問題ではないだろう。ともかく化石の石斑魚があって、石の中に閉じ込められた尾鰭がくっきりと透けて見える。その透けぐあいからすずしいという語はなだらかに結びつくが、ここで「すずしそう」なのは石斑魚の尾鰭ではなく「永遠」という時間の方であるのがユニークだ。この石斑魚が生きていた遠い時間を思ったのだろうが、想像している時間のベクトルは〈われ〉の死後も続く未来にも伸びているのかもしれない。「すずしい」という語は渡辺松男のキーワードの一つで、たいていは遙かな時間と結びついて感覚的な把握に使われるようだ。(鹿取)
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