Danchoのお気楽Diary

高校3年間応援団だった「応援団バカ」の日記。スポーツ観戦や将棋等の趣味の他、日常感じる事を、「ゆるゆる」綴ります。

『大学全入時代』と逆行する薬学業界

2007-02-10 12:11:47 | 社会
受験シーズンも、国公立大学の二次試験の願書受付が6日に締め切られ、7日にはほぼ最終に近い、各大学の志願者数と志願倍率が発表されました。

受験生の皆さんにとっては、ライバルの数も具体的となり、いよいよ本番が近づいた印象を持っているのではないかと思います。

しかし、少子高齢化に伴い、今年から『大学全入時代』が始まろうとしている事実も、一方としてあります。
大学全募集者に対して、志願者数も一緒の時代…これは、同時に大学の経営にも陰を落とす、大きな問題でもあります。
つまり、定員割れが続く大学は、学生からの入学金や講義費等といった、本来経営に回る財源が得られなくなるため、体力のない大学は、容赦なく淘汰されていくという厳しい現実が待っている…ということです。

ところが…

大学経営側にとっては大きなダメージとなる問題が迫る現実があるにも拘らず、これと逆行する業界があります。


それは、薬学の業界です。


あくまで薬学部を卒業している小生の憶測で恐縮ですが、以下の流れからもたらされていると推測されます。


現在、どの企業も、バブル崩壊時から比較すれば、体力は回復しつつあります。
よって、どの企業も、採用活動が活発化しており、より優秀な学生を採用し、確保したいとの思惑が働いているようです。

学生側からすれば、より多数の就職希望企業を選択する機会が与えられ、より優秀な学生ほど、多くの企業から内定を勝ち取る…という図式が発生します。
逆にいえば、力量に劣る学生は、何社受験しても失敗するという現実が待っています。

そこで、ものをいうのが…資格です。しかも公的でなく、「国家資格」です。

大学の理系の学部を卒業見込で、受験資格が与えられる国家資格で、思いつくものを挙げると…

・医師
・歯科医師
・看護師
・薬剤師

などです。

先見の明がある学生はもちろん、その保護者も、「手に職つければ何かと有利」と考えるのは、あって当然の心理でしょう。

先程挙げた資格の中で、最も取得しやすいのは、薬剤師資格と思われます。
現実は、そうは簡単ではありませんが、大学入試センター試験が終わってすぐ、合格のボーダーラインが予備校を通じて発表され、ボーダーラインが他の資格に関連する学部より低いことから、数字があたかも“簡単”なように見せてしまっています。

そして、無事卒業し資格も手にすれば、「調剤に従事する薬剤師」として、調剤薬局や、病院の薬剤部への就職の道が開けます。

仮に、薬剤師資格が取得できずとも、薬学部を卒業すれば、ライフサイエンスに直接関わる製薬企業への就職の道はもちろん、小生のような、総合化学メーカー等への就職への道は残ります。
所定の単位を取得すれば、教職への道だってありますし、もちろん、大学に残り、そのままアカデミックコースへ進むことも可能です。

とにかく、語弊はありますが「一番つぶしが利く学部」であることは、間違いなさそうです。

そこで、大学経営側と、志願者側との利害が一致します。

既存の大学(特に私立)は、学生を確保しようと、薬学部の併設申請をし、既に認可されたところもあります。
また、この利害一致のメリットだけの摘み食いで、新たに薬科系大学の設立に乗り出す動きも、小生が卒業してから驚愕する程の勢いで活発化し、私立薬科系大学が“乱立”している状況が、未だに続いています。
(正直、「こんな名前の大学があるんだぁ~」と、驚愕と唖然とが入り混じった、複雑な思いがしています。)

事実、この度の国公立大学二次試験の志願者倍率を見ると…薬学系の、特に後期日程の倍率が10倍を軽く超える大学が、数多くあります。
前期及び中期日程に着目すると、岐阜薬科大学,名古屋市立大学,静岡県立大学がそれぞれ10倍を超え、それに続いて千葉大学が8.2倍と、薬学人気を裏付けるデーターとなっています。

少し趣きは異なりますが、慶應義塾大学と共立薬科大学の合併による「慶應義塾大学薬学部」の誕生は、両大学が『大学全入時代』と真摯に対峙した結果としての産物と考えることはできます。
ですが、ちょっとひねくれた目で見ると、慶應義塾大学側の「総合大学としての学生の抱え込み」の戦略として、薬学人気をうまく捉えた動きと見ることもできます。


いずれにしても、これは、『大学全入時代』と逆行する、恐るべき実態です。


しかし、この流れは、短期的には続くかもしれませんが、やはり『大学全入時代』の突入の現実を見つめないと、その流れに瞬くもなく飲み込まれて行くと、小生は考えます。

何故か?

これまでは、国公立大学は、国や地方自治体からの援助で経営ができました。
ところが、今は、独立行政法人化されましたので、国公立大学でも研究業績がない大学は、資金援助が絶え、経営が苦しくなっていきます。
国公立大学でさえ、経営に汗水流す時代に突入したのですから、私立大学も、これだけ乱立すれば、それなりの業績が必要とされます。
私立大学は、薬剤師国家試験の合格率が業績の指標と一つとなりますが、それが高い大学が、「実績のある大学」と認知され、確固たる地位を築くことができます。
しかし、薬剤師国家試験の合格率が低い大学は、学生もシビアに評価しますから、当然不人気となり、経営もままならなくなるでしょう。

こうした状況から鑑みても、薬科系大学乱立や薬学部の併設は、小生には、どうしても「砂上の楼閣」に見えてなりません。


薬学の業界も、『大学全入時代』と冷静に対峙し、大学経営側と志願者側の両者にとって、何が一番大切なのか…これを見直す時期に来ていると考えますが、いかがでしょうか?

いつの時代も、どんな問題も、『本質の見極め』が肝心なのではないかと、自戒も込めて、改めて感じます。

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5 Comments

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TB有難うございます (mitamura)
2007-02-10 20:08:39

 「大学全入時代」という時代の流れに逆行するとは、薬学業界恐るべしという感じですね。

 時代の流れを無視した経営を続けた組織は必ず、新時代の潮流によって淘汰されるというのは、歴史的必然です。

 大学にも時代感覚や経営能力が求められる時代になってきたというところでしょうか。

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おっしゃる通りです! (Dancho)
2007-02-12 14:23:23
mitamuraさん、こんにちは。コメントありがとうございます。

mitamuraさんのご指摘の通りです。
大学側も、足元をしっかり見つめた経営をする、またそれが必要な時代になったのでは?と感じます。

薬学人気だから、薬学部や薬科系大学を作ってしまえ!は、あまりに単純すぎる考え方で、これが恐ろしい。
mitamuraさんのブログを初めて拝読させていただいた時、本件は必ず記事にするつもりでいました。
それがようやく実現できた…といったところです。

薬学部卒業の小生から見ても、不思議でならない実態なので、これが警鐘となればいいのですが…。

きっと大学経営側は「尻の青い若造の戯言」ぐらいにしか思わないのかも知れないけど、それが問題なんだよなぁ~…と思う次第です。
返信する
Unknown (振られ飛車)
2007-02-13 20:48:22
なにやらしばらく前の私立大学医学部をみるようです。採用側はやはり大学名のブランドを見てしまうのではないでしょうか。
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知らなかったなあ (sadakun_d)
2007-02-16 23:43:01
薬学部卒業でも、薬学部卒業+薬剤師国家試験合格でも進む道があるとは。



そうそう2月から3月にかけて厚生労働関連国家試験毎日曜日にありますね。

医師・歯科医師・獣医・薬剤師。



免許には柳沢伯夫大臣の名前がありますね。自慢になったりして(笑)
返信する
コメントありがとうございます。 (Dancho)
2007-02-17 17:46:05
振られ飛車さんへ。

コメントありがとうございます。レスが大変遅れましたこと…深くお詫び申し上げます。
(大ファンのお方に対し、大変失礼な事を…。)

医学部も、確かに似た感じがしますね。
受け皿が用意されれば良い…というのは、ちょっと考えものです。結局、自分で自分の首を絞めるようなものと思うのですが…。
しかも、日本に根強いブランド志向…。
この大学だから間違いない!っていうあまりに単純な考え方での採用は、企業にとっても損害と思います。
NHK将棋講座の前講師・谷川先生の『本筋を見極める』じゃないですけど、実はこれが大切と思っています。


sadakun_dさんへ。

はじめまして。拙い内容の小生のブログに寄って頂き、大変感謝しております。
まだまだ文才がなく、読者の皆さんにとっては読み苦しい点が多々ございますが、どうかよろしくお願いします。

そうなんです。薬学部って、理科系の学部で一番と言っていいかもしれないほどつぶしが利きます。
別に薬剤師免許がなくても、企業に進めば良いし、免許を持ったら持ったで、調剤に従事する立派な薬剤師になる資格ができます。
卒業したら、一生薬剤師国家試験の受験資格は消えませんので、極端な話、何度失敗しても良いって事です。

国家試験ですが、小生が学生の時より、半月ほど早くなっている様で、ご指摘の通り、これから3月中旬までが、国家試験のシーズンですね。
このままですと、合格し、直ちに免許交付届をすれば当然、柳沢大臣の名前で免許を受ける事になります。

どうなんでしょ?自慢…かなぁ?
迷惑って思う人も、中には居たりして…。
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