ダンポポの種

備忘録です

あの川の名前は…

2008年02月17日 15時39分40秒 | 備忘録
西宮で過ごした小学生時代の思い出。

 ◇   ◇   ◇   ◇   ◇

3年生の三学期に、遠足で西宮神社と香枦園へ行くことになった。
三学期に行われる遠足は、ほかの学期のそれに比べると格段にスケールが小さくて、学校から歩いて行けるぐらいの近場へ出かけるのが常だった。

「こんどの遠足は、学校からみんなで歩いて行きます。西宮商店街(阪神西宮駅の周辺)を見学してから、西宮神社へ行きます。そのあと香枦園まで行って、そこで弁当を食べます…」

ある日の〝終わりの会〟で、担任の先生が、遠足の概略を説明してくださった。
T小学校から西宮神社あたりまでならば、子供の足でも十分に歩いて往復できる距離だ。

「ところで、みんな、香枦園って知っていますか? そこには川が流れています。その川の名前が、分かる人?」

遠足の説明だけかと思っていたら、いきなり社会科の問題が出された格好だ。

     ◇      ◇      ◇

香枦園がどんな所かを私は知らなかったが、阪神電車にその名前の駅があることは知っていた。
でも、そこを流れている川の名前までは分からないなぁ。

クラスメートたちも考え込んでいる様子で、教室内が急に静かになった。

阪神電車の香枦園駅は、西宮市の地図の中では〝西の端っこ〟に位置する。
私は、頭の中に地図を思い浮かべて、阪神電車と並行している阪急神戸線の路線図をダブらせてみたりした。
「阪急神戸線の〝西の端っこ〟って、どのあたり(駅)だったかな」
と、思いを巡らせたとき、パッ!とひらめいた。

次の瞬間、私は手を挙げていた。

クラスの中で、自分ひとりだけ手を挙げるという暴挙(?)であった。
ひらめきだけの〝見切り発車〟みたいな挙手ではあったけれど、これも小学3年生だからこその芸当だろう。

けれど、私の挙手に気付いた先生は、途端に気の毒そうな表情をして、おっしゃった。

「なんで、広島から転校してきた子が分かって、昔から西宮で暮らしている子たちが分からないんや…」

この場面は、相当照れくさかった。
今でもよく覚えている。
クラスのみんなを敵に回してしまった気がした。

手を挙げるんじゃなかった…とは思わなかったけれど、
逆に、先生からこう言われてしまうと、もはや私も間違った答えを言うわけにいかない-。

「それじゃあ…、答えてください」

困ったような表情のまま、先生は、私に発言を促した。

私は、もう一度地図を思い浮かべながら、言った。

「夙川です」

夙川沿いが桜の名所だという肝心な知識は、当時の私には備わっていなかったけれど、その名前だけは知っていた。鉄道ファンの駅名暗唱も、こういうときは役に立つ。