押しても駄目なら

風が吹けば、と共に非線型現象の第二例でしょう。

「正しい戦争」は本当にあるのか 藤原帰一 その3

2006-12-23 17:35:01 | 齧り書き
第四章の小見出しには
「経済がだめだったから冷戦が終わったわけではない」とか「ゴルバチョフの外交革命」「ゴルバチョフはなぜ江沢民になれなかったのか」・・・とあり、中身もとても面白い。しかし、ここでは端折ることにする。

その2で書いたように大切なのは中国は共産党政権で市場経済の国家である、と言う点である。

第六章 アジア冷戦を終わらせるには
小見出しは
・アジアの冷戦は中国から始まった
・アジア冷戦は中途半端に終わってしまった
・70年代、アメリカに見捨てられたアジア
・アメリカにとって中国は敵であり味方である
・日本のばら撒き外交を評価する
・ベトナム,カンボジアでは日本外交は成功した
・でも北朝鮮はうまくいかなかった
・・・・

・アジアの冷戦は中国から始まった
ーー・・・まず、アジア全体でなにが起こっているのか、その辺から教えていただけますか。
「・・・まず社会主義国が残っているでしょ。北朝鮮、中国、それにベトナムとか。体制の違いも、軍事的緊張もまだ続いている。だとすると、冷戦終わったヨーロッパなんかとは違って、抑止が必要。ということはアメリカを頼りにするしかないってことになるわけです」
・・・
「アジアで冷戦と言うとどことどこの国になるのでしょう」
ーー???
「アジアの冷戦はアメリカと中国との関係が中心にあるのです。その源は中国の革命です。少し遡ると、辛亥革命で清朝が倒れ、軍閥、国民党、共産党が出て来て内戦になり、日本が攻め込んで、負けると、また内戦になり、最後は共産党が支配する。そうしたことが周辺にも影響を及ぼし、朝鮮、ベトナムで共産党をはじめとする独立運動が起こる。
・・・
だから、冷戦、対立構造は一国ずつ解決しなければならない。そこがヨーロッパとソ連の場合と異なる」

・アジア冷戦は中途半端に終わってしまった
「・・・アジアでの冷戦終結は米中対立の終りということで、社会主義体制はこわれない。1971年にキッシンジャー補佐官の北京訪問と翌年のニクソン訪中で対立は終わる。しかし、北朝鮮、ベトナムとの対立は残る」
・・・
ーーアメリカは中国と戦争になるの避けたかったから(ベトナム戦争から米中戦争・・・朝鮮戦争がそうだったとの認識)、敢えて敵に近づいてったといいうことですよね。まさにキッシンジャー的権謀術数の外交というか。

次の小見出し
70年代、アメリカに見捨てられたアジア
「この米中の接近は、東アジアの資本主義国に大きな衝撃を与えます。・・・米中頭越しの接近ってやつですね。・・・実際、ニクソン大統領はアメリカがアジアから撤退する方向を打ち出した。グアム・ドクトリンって呼んでいます。こうなると、韓国もASEAN各国もアメリカが自分達を見捨てようとしているんじゃないか、どうしようって考え始める。
ことに韓国が大変混乱しましてね。米中の接近によって孤立すると考えた韓国・朴正熙政権が独自外交に動いていく。もともと、朴正熙大統領とアメリカの関係はよくなくて、すでにジョンソン政権の頃から在韓米軍を撤退させる構想があった。
<ちょっとここで私の意見を差し挟む。ここらの事実が今日の盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権がアメリカとのある種の距離をとろうとしている背景にはこうした歴史的な経緯があるのかァ、と言う印象>
・・・米中接近で、韓国はもうアメリカに守ってもらえない、どうしよう、ということになる。そこで、外交面では北との関係改善に動き、南北の赤十字会談を実現するんですが、国内では反政府運動を押さえ込もうと、戒厳令を施行します。維新体制の始まり、72年ですね。
 北朝鮮は逆に元気になっちゃって、アメリカがアジアから撤退して、北朝鮮の影響力が拡大する大きなチャンスになったと考えます」
<1.社会主義国が倒れて西側に合流すると言う西欧型の冷戦終了ではない。
2.米中だけの戦略的、権謀術数的な和解ですから、状況に変化で関係は悪化する事もある、
3.中国以外の社会主義国はこの権謀術数的和解からは取り残されている。
4.アメリカ以外の資本主義国もこの権謀術数から取り残されている。
5.従って、アジアは基本的には不安定と言う事になる>
これが私の理解。この本が書かれたのは2003年だが、その時読んでいたら、これ程の説得力を感じなかっただろう。三年経って、今回の六か国協議の終り方、決裂に近い終り方などは正にこの枠組みの中にある。グアム・ドクトリンで北朝鮮が勢いを得たという理解の延長上に核開発があるのだろう。
そうしたことを踏まえて日本がどうすべきかについても藤原帰一先生は意見を述べている。が、一旦ここで終る。この本は買うことにした。


続く・・・