知らない世界へ帰りたい(日本探求)

自分の祖先はどんなことを考えていたのか・・・日本人の来し方、行く末を読み解く試み(本棚10)。

アインシュタインの眼 ー宮大工ー

2010年03月04日 19時59分49秒 | 民俗学
~番組解説より~
「“木の生命力を活かす”宮大工の仕上げの技、カンナがけに迫る。細胞より薄い5ミクロンのカンナくずはどう生まれるのか。カンナがけした木は本当に水をはじくのかを解明。
カンナ仕上げでツヤツヤとした輝きを放つ白木造り。宮大工はなぜカンナ仕上げにこだわるのか。その一つは、宮大工がカンナがけした木材は水をはじくため、腐食しにくいという説。顕微鏡カメラを駆使してガラスのように滑らかな表面を徹底調査。また、細胞より薄い5ミクロンという極薄のカンナくずを生み出す宮大工のカンナがけの技をハイスピードカメラで解明。“木そのものの生命力を活(い)かす”、宮大工のこだわりに迫る。」

 ゲストとして登場したのは宮大工の小川三夫さん。法隆寺昭和の大修復にかかわった西岡常一さんの唯一の弟子です。
 西岡常一さんに関する塩野米松氏の著作を以前読んだことがありましたので、雰囲気はわかりました。
 西岡さんの残した印象的な言葉は「樹齢1000年の木は建築材として1000年もつ」「修復のとき、大木・巨木が必要だったが近隣にはそのような樹木はすでに無かった。吉野から運んでくることになった。今後は外国から探してくることになるだろう」というもの。

 さて、今回は宮大工のカンナの技を現代の映像技術で解析する内容です。
 宮大工がカンナを掛けると削りカスが絹織物のように美しい・・・「削り花」と呼ぶそうです。
 目から鱗が落ちる瞬間が何回もありました。

■ カンナを掛けただけの木の方が、上塗りした木より長持ちする。
 プロがカンナを掛けると木の表面の細胞をつぶすことがなく、乾いて引き締まった木(孔が閉じたもの)を用いると水をはじくため、劣化が最小限で済む。

・・・これには驚きました。私の建てた家の柱は合材なので、3年ごとにニスを塗らないとみすぼらしい外観になってしまいます。皆そうだと思っていたら、「ホンモノ」はまったくの逆なんですね。
 プロの板前さんがマグロを包丁で切ると細胞がつぶれないので味が逃げ出さず、しばらく時間が経っても味が落ちないのと似ています。

■ カンナ掛けの最適角度は37.5度。
 これより浅くても深くても表面がざらついてしまう。最適角度でプロが掛けると表面が鏡面のようになり顔が映る!
 外国でもカンナはあるが押すタイプばかり。引いて掛けるのは日本式のみ。

・・・これも科学的に実験したわけではないのでしょうが、経験則として培った匠の技ですね。

■ 木の種類により建築材としての寿命が異なる。
 マツは500年、スギは800年、ヒノキは・・・現在のところ1300年以上(法隆寺の年齢)。

・・・昔の宮大工はどうしてこれを知っていたのだろう。

同時に「法隆寺」というNHK-BS番組を見ました。
前編・後編とも各2時間弱の圧倒的な内容。
法隆寺は聖徳太子の時代(7世紀)に建造された世界最古の木造建造物です。
中でも五重塔は30m以上ありますが、これが1300年前に建てられ、かつ現存するのは奇跡としか云いようがありません。

こちらにも小川さんが出演していました。
そこでも驚きの匠の技が公開されていました。

■ 法隆寺の芯柱は周囲に固定されていない。
 地震のときに建物とは逆に揺れて緩衝し、被害が最小限となるよう設計されている。

■ 法隆寺に使用されている釘は鉄の純度が高く錆びない。
 現在釘を作るときは鋳型に流し込む方法ですが、昔の釘(『和釘』と呼ぶそうです)は刀鍛冶がハンマーで叩いて鍛え上げた入魂の作品です。昭和の修復の際、同じ釘が造れなくて困り果て、結局古い和釘を再度溶かして過多な当時に叩いてもらい再利用したそうです。

■ 山の木は生育の方位のまま使え。
 古代工人の言い伝え。南側を向いて育った木を北向きに設置すると歪みが生じて長持ちしないということ。

■ 宮大工は300年先を見て仕事をする。
 将来修理が入ったときに「平成の宮大工の仕事はお粗末だなあ」と笑われないよう、過去から伝わった技を磨いて残すのが使命、それが宮大工の心意気。

・・・日本人ってすごい!
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