知らない世界へ帰りたい(日本探求)

自分の祖先はどんなことを考えていたのか・・・日本人の来し方、行く末を読み解く試み(本棚10)。

「アルキヘンロズカン」(しま たけひと著)

2014年07月04日 15時28分36秒 | 寺・仏教
双葉社、2012年発行。

カタカナではわかりにくい・・・ふつうに書けば「歩き遍路図鑑」となります。
まあ、四国遍路(八十八カ所巡り)を題材にしたマンガですね。

いわゆる「私小説」という分野がありますが、このマンガも多分に著者の思い入れがこもった「私的マンガ」という雰囲気。
売れないマンガを書き続けることに疑問を持ち、一念発起して四国遍路に向かい何かをつかんで帰ってくる、というありがちなストーリーです。
絵も二流かなあ。

先日、NHKの「クローズアップ現代」で「四国遍路に向かう若者が増えている」という内容を放映していました。
「フ~ン、そうなんだ、確かに“自分探しの旅”目的で外国を放浪するより安全かもしれないなあ」
と興味を持ち、しかしamazonで検索すると中年対象の書籍ばかり・・・。
比較的若者を扱っているらしいこのマンガを購入するに至りました。

そこそこ楽しめました。

何かを抱えて遍路に向かう人たちがいる。
彼らを“お接待”する地元の人たちがいる(もちろん嫌う人もいる)。
彼らを相手に商売する人たちもいる。

そんな人間模様や駆け引きがこと細かく記されています。
良い人も悪い人も出てきて、ストーリーに膨らみを持たせています。

旅先で出会った僧侶の言葉が印象に残りました;
「あなたは今の人生を後悔しているようだが、別の人生を選んでも必ず後悔する」
なるほど、一理あるかもしれない。

約1ヶ月半歩き通し、“結願”(八十八カ所を巡りきること)すると、憑き物が落ちたような穏やかに顔になるらしい。
世の中のあれこれを受け入れ、悪い人もまあ許せるような、おおらかな気持ちになるそうです。

この効用は如何に?
空海さんの御利益?

宗教的な探求はさておき。

著者はあとがきに「遍路を“病院”に例える人がいる」と記していますが、たしかにその要素はあると思います。
何と言っても遍路の基本は「歩き続ける」こと。
1ヶ月以上歩き続けると、人の体はとても健康になります。
当初は息が切れ、足が痛くて悲惨ですが、後半は体が慣れてきてしっかり歩を進める映像がクローズアップ現代でも観察できました。

「健康な肉体には健康な精神が宿る」

遍路とは、現代人が忘れてしまいがちなこの言葉を体感することに他ならないのではないか、と。
人間は、生きていくために汗をかいて労働し、お腹が空いて食べ、疲れて眠るという時代が長く続きました。
しかし現代社会では、汗をかかず(冷や汗はかく?)、食欲もあったりなかったり、不眠症がクローズアップされるほど熟睡することが難しくなってきています。
この視点からすると、遍路は健康な体を取り戻すためのリハビリテーションと捉えることも可能です。

そういえば先日の「ためしてガッテン!」でも、気分が落ち込むときはとにかく体を動かせば効果がある、と力説していましたね。
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