知らない世界へ帰りたい(日本探求)

自分の祖先はどんなことを考えていたのか・・・日本人の来し方、行く末を読み解く試み(本棚10)。

「足尾から来た女」

2014年07月11日 05時52分56秒 | 戦争
NHK土曜ドラマで2014年1月18/25に放映されました。

作:池端俊策
音楽:千住明
視聴率:前編10.4%、後編9.0%
出演:尾野真千子(サチ)鈴木保奈美,北村有起哉,岡田義徳,松重豊,藤村志保、柄本明(田中正造)原沙知絵(与謝野晶子)渡辺大(石川啄木) 國村隼(原敬)



概要
 明治末。栃木県谷中村は足尾銅山の鉱毒で田畑を汚染された。田中正造の闘いもむなしく、村は16戸にまで激減。国は住人に村を捨てるように命じ、残った家の強制執行に踏み切った。
 この谷中村の娘が田中正造の仲介で社会運動家・福田英子宅に家政婦として派遣された史実をもとに、一人の女性が見知らぬ東京の地で石川三四郎や幸徳秋水ら社会主義者たち、さらに石川啄木や与謝野晶子など多彩な人物と交わる中で成長する姿を描く。
 故郷を失う苦しみを味わいつつ人間としての尊厳を守り、たくましく生き抜くヒロインを、NHKドラマでは連続テレビ小説「カーネーション」以来の単独主演となる尾野真千子が演じる。



ストーリー
 谷中村に住む貧しい農家の娘・新田サチ(尾野真千子)は、兄の信吉(岡田義徳)の仲介で「東京に出て雑誌『世界婦人』を主宰する福田英子(鈴木保奈美)の家政婦をしてくれないか」と正造先生(柄本明)に頼まれる。時は明治39年、政府は足尾銅山の操業を守るため、渡良瀬川下流の谷中村を池にし、鉱毒をそこに沈殿させようとしていた。東京に向かうサチには、国の監視役・日下部錠太郎(松重豊)が同行し、正造と福田家に集まる知識人をスパイさせようと言葉巧みに命じる。
 住み込み先の福田家には、美貌の女主人・福田英子と年下の恋人・石川三四郎(北村有起哉)を中心に、幸徳秋水、大杉栄など時代を代表する社会主義者たちが出入りしていた。明治40年2月。足尾銅山の賃上げ闘争を支援する社会主義者達の言論活動は警察の弾圧に繋がり、石川三四郎も投獄されてしまう。三四郎の逮捕に罪の意識を感じたサチは福田家を飛び出すが、戻り着いた故郷で目にしたのは国の強制執行で打ち壊される自分の家だった。しかも強制執行の中心にいたのは、兄の信吉だった・・。


 小野真千子演じる新田サチは足尾ではなく栃木県谷中村出身ですから、正確には「谷中から来た女」ですよね。
 私も栃木県人で、渡良瀬川の辺の住人です。
 足尾に関してはいろいろな情報が入ってきます。
 子どもを連れて足尾へ行ったこともあります。
 今回も興味を持って視聴しました。

 田中正造の筋の通ったポリシーが素晴らしい。
 当時、日露戦争の勝利に沸く日本では、都市の発展を優先する政治がまかり通っていました。
 田舎の村は、日本の発展のためには犠牲になっても仕方ないという風潮。
 しかし正造は「都市は街からできた、街は村からできた、村を大切にしない政治はいずれ滅びる」と宣います。
 現在でも通用する概念だと思いました。

 サチの兄、信吉の独白も当時の日本が抱えていた矛盾をあぶり出します;
 「自分の田んぼを、村を大切にしたいのは当たり前だ、しかし戦争に行って命を助けられたのはこの銅でできた弾丸だ、足尾銅山で作られた弾丸だ。」
 足尾銅山がなかったら、戦争に負けて国がなくなっていたかもしれない・・・。

 日本がどんな国を目指すべきなのか、そこがぶれると何も決められないと感じました。
 今の日本のように。

 演技では田中正造を演じる柄本明、福田英子の母を演じる藤村志保、国の監視役・日下部錠太郎を演じる松重豊が秀逸でした。
 石川啄木が出てきたのは意外な展開でした。史実なのかな?