
2003年の『 Standard of Language 』以来,3年ぶりになるケニー・ギャレットの新作『 Beyond The Wall 』がNonesuchから発売になりました。なんて,冷静に言っている場合ではありません。これ,ほんと最高です。このところ一日一回は聴かないと眠れない程,心酔しています。
前作『 Standard of Language 』も凄いと思っていましたが,今回は激しさという点では前作に一歩譲るとしても,アルバムとしての完成度からしたら文句なしに彼のベストの出来ではないでしょうか。
前作は兎に角,ケニーのワン・ホーンで吹きまくる作品で,激情型の彼の個性が最大限に発揮できた傑作だと思います。これに対し新作は万里の長城をジャケットに使用しているようにテーマは中国。とは言っても一部の楽曲では二胡や声明曲からのサンプリングなどを取り得れて東洋風サウンドを演出してますが,全体のカラーはむしろ中期コルトレーンの世界です。どうも2005年暮れの中国訪問がきっかけになったようで,コルトレーンがインド音楽なら,俺は中国民族音楽だと閃いたのでしょう。
僕はクラブ系ジャズには全くの無知ですが,こういうのを“スピリチュアル・ジャズ”と呼ぶのでしょうか。でも内省的な暗いサウンドではありません。コルトレーンを今風にポップにアレンジした感じす。もともとケニーはアルティストとしては大変珍しいコルトレーンのフォロアーで,“アルトでコルトレーンを”をテーマに1996年に『 Pursuance 』というコルトレーンの楽曲に挑戦したアルバムを制作しています。これが僕の一番の愛聴盤なんですが,世間的には『 Triology 』や『 Songbook 』の方が評価が高いのでしょうかね。
いずれにしてもケニーは95年の『 Triology 』を転機として『 Pursuance 』,『 Songbook 』と充実した内容の作品を連発していくのですが,今回の新作は『 Pursuance 』以来の久しぶりのコルトレーン路線で,僕の最も好きなベクトル上の作品となりました。そうそう,ブライアン・ブレイドも『 Pursuance 』以来の競演ですね。
メンバーはマルグリュー・ミラー,ロバート・ハースト,ブライアン・ブレイドの最強リズム隊に,フロントがボビー・ハッチャーソンと,なんとファラオ・サンダース。昔,ファラオ大好きだったんですよ,僕。今でも好きですが,コルトレーン路線のコンセプト作品にファラオを起用するのもちょっとベタな感じもしますけどね。
コルトレーン,ファラオと聞くと,どうしてもImpulse末期のエルビンもマッコイも逃げ出した宗教色の強いコスミック・サウンドを連想してしまいますが,その点は大丈夫です。ご心配なく。フリーは演ってませんから。ファラオもいたってノーマルです。昔から僕は何故かファラオを見るとスズメバチを連想してしまうのですが,最近のファラオは歳のせいか往年の破天荒さはなくなり,ちょうと毒針を抜かれたスズメバチのようです。ファラオ嫌いのジャズ・ファンはおそらくコルトレーンとの競演盤や彼の死後のImpulse作品しか聴いていないじゃないでしょうかね。80年代のTheresaの作品群,たとえば『 Journey to The One 』や『 Live 』など,とっても聴きやすいですよ。僕の所有するアルバムの中で最新のものは92年の『 Crescent with Love 』 (邦題:愛のクレッセント)(Venus)ですが,これなんかコルトレーンの呪縛からすっかり解き放たれた精神性の薄いあっさりしたスタイルで《 lannie's lament 》,《 Crescent 》,《 after the rain 》などを演奏しています。聴きやすい半面,ちょっと寂しい感じもします。Love is Everywhere~と叫んでいた頃が懐かしいです。
話がわき道に逸れてしまいましたが,本作は全9曲で全てケニーの作曲です。東洋色が色濃く表現された楽曲はM-4 《 realization 》とM-5 《 tsunami song 》の2曲のみ。《 realization 》はチベット仏教の声明曲(お経に音階を付けた音楽?)のコンピレーション・アルバム『 The Heart of Dharma 』からの1曲,《 ngontog gyan 》をサンプリングしていて,お経が永遠とループされる中,ケニーが静かに瞑想的なフレーズを奏でる不思議な曲です。《 tsunami song 》は二胡がテーマを奏でる静かな曲で,ここでケニーはピアノを弾いています。89年の『 Prisoner of Love 』でもピアノを弾いてましたし,ライブでも時々弾くらしいです。
最後にNonesuch Recordsについて少し説明を付け加えておきます。
最近特にこのレーベルの作品を目にしますが,元々は64年に発足したElektra Recordsのsub-labelとして立ち上げられたヨーロッパ・クラシックのディストリビューターでした。しかし,2004年のWarner Music Group(WMG)の再編リストラ策の一環として,WMGの中核であったWarner Bros. Recordsのジャズ部門は閉鎖され,同時にWMGの子会社であったElektra RecordsもWarner Bros. Recordsに吸収合併されました。この再編リストラ策によって両レコード会社所属の沢山のスタッフ,ミュージシャンが解雇されてしまったわけですが,業績が良かったミュージシャンはWMGの一部として存続を許されたNonesuch records(もともとはElektra Recordsのsub-label)に再雇用されたのです。このNonesuchに名を連ねるのは,ブラッド・メルドー,ジョシュア・レッドマン,パット・メセニーなど,いずれも会社に利益をもたらすビック・ネームばかりですね。Nonesuch印は,今や最も安心して購入できる音楽業界のJISマークみたいなのもです。
前作『 Standard of Language 』も凄いと思っていましたが,今回は激しさという点では前作に一歩譲るとしても,アルバムとしての完成度からしたら文句なしに彼のベストの出来ではないでしょうか。
前作は兎に角,ケニーのワン・ホーンで吹きまくる作品で,激情型の彼の個性が最大限に発揮できた傑作だと思います。これに対し新作は万里の長城をジャケットに使用しているようにテーマは中国。とは言っても一部の楽曲では二胡や声明曲からのサンプリングなどを取り得れて東洋風サウンドを演出してますが,全体のカラーはむしろ中期コルトレーンの世界です。どうも2005年暮れの中国訪問がきっかけになったようで,コルトレーンがインド音楽なら,俺は中国民族音楽だと閃いたのでしょう。
僕はクラブ系ジャズには全くの無知ですが,こういうのを“スピリチュアル・ジャズ”と呼ぶのでしょうか。でも内省的な暗いサウンドではありません。コルトレーンを今風にポップにアレンジした感じす。もともとケニーはアルティストとしては大変珍しいコルトレーンのフォロアーで,“アルトでコルトレーンを”をテーマに1996年に『 Pursuance 』というコルトレーンの楽曲に挑戦したアルバムを制作しています。これが僕の一番の愛聴盤なんですが,世間的には『 Triology 』や『 Songbook 』の方が評価が高いのでしょうかね。
いずれにしてもケニーは95年の『 Triology 』を転機として『 Pursuance 』,『 Songbook 』と充実した内容の作品を連発していくのですが,今回の新作は『 Pursuance 』以来の久しぶりのコルトレーン路線で,僕の最も好きなベクトル上の作品となりました。そうそう,ブライアン・ブレイドも『 Pursuance 』以来の競演ですね。
メンバーはマルグリュー・ミラー,ロバート・ハースト,ブライアン・ブレイドの最強リズム隊に,フロントがボビー・ハッチャーソンと,なんとファラオ・サンダース。昔,ファラオ大好きだったんですよ,僕。今でも好きですが,コルトレーン路線のコンセプト作品にファラオを起用するのもちょっとベタな感じもしますけどね。
コルトレーン,ファラオと聞くと,どうしてもImpulse末期のエルビンもマッコイも逃げ出した宗教色の強いコスミック・サウンドを連想してしまいますが,その点は大丈夫です。ご心配なく。フリーは演ってませんから。ファラオもいたってノーマルです。昔から僕は何故かファラオを見るとスズメバチを連想してしまうのですが,最近のファラオは歳のせいか往年の破天荒さはなくなり,ちょうと毒針を抜かれたスズメバチのようです。ファラオ嫌いのジャズ・ファンはおそらくコルトレーンとの競演盤や彼の死後のImpulse作品しか聴いていないじゃないでしょうかね。80年代のTheresaの作品群,たとえば『 Journey to The One 』や『 Live 』など,とっても聴きやすいですよ。僕の所有するアルバムの中で最新のものは92年の『 Crescent with Love 』 (邦題:愛のクレッセント)(Venus)ですが,これなんかコルトレーンの呪縛からすっかり解き放たれた精神性の薄いあっさりしたスタイルで《 lannie's lament 》,《 Crescent 》,《 after the rain 》などを演奏しています。聴きやすい半面,ちょっと寂しい感じもします。Love is Everywhere~と叫んでいた頃が懐かしいです。
話がわき道に逸れてしまいましたが,本作は全9曲で全てケニーの作曲です。東洋色が色濃く表現された楽曲はM-4 《 realization 》とM-5 《 tsunami song 》の2曲のみ。《 realization 》はチベット仏教の声明曲(お経に音階を付けた音楽?)のコンピレーション・アルバム『 The Heart of Dharma 』からの1曲,《 ngontog gyan 》をサンプリングしていて,お経が永遠とループされる中,ケニーが静かに瞑想的なフレーズを奏でる不思議な曲です。《 tsunami song 》は二胡がテーマを奏でる静かな曲で,ここでケニーはピアノを弾いています。89年の『 Prisoner of Love 』でもピアノを弾いてましたし,ライブでも時々弾くらしいです。
最後にNonesuch Recordsについて少し説明を付け加えておきます。
最近特にこのレーベルの作品を目にしますが,元々は64年に発足したElektra Recordsのsub-labelとして立ち上げられたヨーロッパ・クラシックのディストリビューターでした。しかし,2004年のWarner Music Group(WMG)の再編リストラ策の一環として,WMGの中核であったWarner Bros. Recordsのジャズ部門は閉鎖され,同時にWMGの子会社であったElektra RecordsもWarner Bros. Recordsに吸収合併されました。この再編リストラ策によって両レコード会社所属の沢山のスタッフ,ミュージシャンが解雇されてしまったわけですが,業績が良かったミュージシャンはWMGの一部として存続を許されたNonesuch records(もともとはElektra Recordsのsub-label)に再雇用されたのです。このNonesuchに名を連ねるのは,ブラッド・メルドー,ジョシュア・レッドマン,パット・メセニーなど,いずれも会社に利益をもたらすビック・ネームばかりですね。Nonesuch印は,今や最も安心して購入できる音楽業界のJISマークみたいなのもです。
こちらもさっそくTBさせていただきます。
僕は★3つかな。まだ「至上の愛」や「eternal」の方が良かったな~。
インパルス時代のコルトレーン大好きなんですけど。。。ねぇ。。。
なんか、取り憑かれたように凄いですねぇ。。
気合いはいりました。
おふたりで、さけんでなかったら、、ふところ具合からして、、買ってなかったとおもいます。
ありがとうございましたぁ。
でも、しばらく、クリスマスを検索しなくては。。季節は、、近い!
これの#2「like it is」で聴かせる中国風ストリングス(自身のアレンジ)が美しくてしょうがありません。
他にこんなような曲調のCDご存知でしたらお教えください。
でも,あれですね,ケニーの中古って安く出回っているんですよね。人気ないんでしょうね。
クリスマス・アルバム,今年も期待しています。頑張ってください。
今,昼休み中です。先日買ってきたボラーニの「I VISIONARI」聴いています。なかなか良いです。
ユーゼフ・ラティーフって,キャノンボール絡みで何枚かリーダー作を買ったことがありますが,マルボロさんがお示しされたアルバムは知りませんでした。試聴しましたが,僕の知っているユーゼフとは全然違いますね。
ユーゼフって,最近はクラブ系で人気があるんでしょうかね?意外な人がクラブ系で人気があるので,びっくりしますが,ユーゼフなんか,全く忘れ去られているテナーかと思ってましたけど。
中国民族音楽を取りいれたジャズマンって,ごめんなさい,僕は知りません。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/B000FZESVW/sr=1-1/qid=1159268808/ref=sr_1_1/503-7549846-6343909?ie=UTF8&s=music
#5が特に美しい曲です。
よろしければcrissさんオススメのyusefをお教えください。
僕はほどほどに民族的なジャズが好きですね。
中国で、中国色をほどほどに出した、ジャズマンが現れてくれることを
期待せずにはいられません。(僕がしらないだけですかね。)
では。
正直,僕がユーゼフを聴いていたのはもう20年も前の話で,その頃はあまりユーゼフのレコードも手に入らず,「into something」や「cry/tender 」とか,あとは忘れたけど,Prestigeのアルバムが中心だったように思います。そう「eastern sound」もそうですね。ユーゼフが段々,カルト的になっていってからは,全然聴いていないんでわかりませんが,今の僕の耳なら,いわゆる異端児ユーゼフの東洋サウンドも結構すんなり楽しめるんじゃないかな,と思ったりもします。これを機会に中古で最近の録音CDを見つけたら聴いてみたいと思います。
それにしても,やっぱりマルボロさんはクラブ系がお詳しいようで。僕,全く無知なので,いろいろそちらの面白い話,聞かせてください。
では,また。
そういえばyusefは最近クラブアーティストのアルバムに「声」で参加していました。
AMMONCONTACT / With Voices
http://www.juno.co.uk/products/219260-02.htm
#10 Beautiful Flowers での翁な声がたぶん彼だと思われます。
僕は田舎在住のためクラブでいわゆるクラブ系は聴けず、詳しくもないですが、
クラブ発信のジャズの恩恵は少なからず授かっています。
未発表の音源を日の当たる所まで掘り出してくれたり、
過去の偉人たちに新アルバムを作るきっかけを与えたり。
いつかはクラブで大音量に身を任せてみたいですね。
yusefにも是非新譜を作ってもらいたいです。
逆に最近のジャズには興味はあるものの疎いので、
crissさん達の記事は非常に助かります。
ネット上でももっと試聴ができるといいのですが。
これからも記事拝見します。
それでは。
トラバしました。
いや、他のアルバムにはまっても、
また、簡単に戻ってこれちゃって。。
何度もおいしい思いしました。