雨の日にはJAZZを聴きながら

FC2 に引越しました。http://jazzlab.blog67.fc2.com/

Sean Higgins 『 Sean Higgins 』

2006年09月03日 12時22分30秒 | JAZZ
窓を開けると涼しい風が部屋の中を吹きぬけ,すっかり気分は秋モード。
これから少しずつ,ジャズが美味しさを増す季節。
今日は久しぶりに仕事の入らない日曜日。ちょとビールでも。ふ~。
今,妻と息子はお昼寝中。
起きたら秋葉のヨドバシカメラに買い物に連れていく約束です。
何を買わされるのやら。
お気に入りのピアノ・トリオでも聴きながら,目が覚めるのを待つことにしましょう。

Sean Higgins(ショーン・ヒギンズ)という米国ピアニストです。聞いたことの無い名前です。ノース・カロライナ州,ウィルミントン出身で,最近ニューヨークに進出し,活動範囲を広げている,現在売り出し中の若手ピアニストのようです。本作がデビューアルバムです。とは言っても自主制作盤ですが。でも凄く出来は良いです。マッコイ・アイナー,ハービー・ハンコック,ケニー・カークランドらを尊敬しているように,モード系のフレーズ,オリジナル楽曲を得意とする人ですが,頭でっかちで無機質なモード・ラインを垂れ流すようなことはせず,モード手法を用いながらもその中で歌うことのできる技巧派です。テクニックに危うげな所は皆無で,音に自信があり明確。タッチも力強く,粒立ちが良い。10曲のうち9曲はオリジナルですが,どれも個性的なメロディでキャッチー。高速モードから哀愁バラードまで危なげなくしっかりこなす驚きの新人です。

実はこのアルバム,先日発売されたジャズ批評No.133『 ピアノ・トリオ Vol.3 』の78ページで,VENTO AZUL RECORDSの早川さんが紹介されていたのです。僕のディスクは数ヶ月前に秋葉の石丸電気の輸入盤フロアーで買ったものなのですが,早川さんの目にかなったアルバムということで,愛着も一段と増したアルバムです。

必ず愛聴盤になると思いますよ。僕は3000円も出して買っちゃいましたが,VENTO AZUL RECORDSさんからなら1750円で手に入ります。

お~と,息子が起きだした。
では,ヨドバシカメラ行ってきま~す。

Phil Woods 『 Play Henry Mancini 』

2006年09月03日 02時05分10秒 | JAZZ
最近のウッズでもう一枚,お気に入りのアルバムをご紹介。ウッズと仲の良さそうに写っている長身のおじさんはCarl Saunders(カール・サンダース)。トランペッターです。一見,ジャズ界の巨匠,フィル・ウッズ様の肩に腕を乗せて寄りかかるなど,なんて生意気で無礼なやつだ,と思っちゃいますが,アメリカ流のスキン・シップというやつでしょうかね。

この 『 Play Henry Mancini 』(2004 Jazzed Media)を買った時点(2004年)では,僕は全くカール・サンダースを知りませんでしたが,つい最近,クリスチャン・ジェイコブ参加のリーダー・アルバムをリリースしましたので,速購入しましたが,これもなかなか愉しいバップ・アルバムでした。

カール・サンダースは1942年生まれということですから,ウッズより11歳若く,今年で64歳。今まで名前すら聞いた事がありませんでしたが,ビックバンド出身のトランペッターのようで,スタン・ケントンやフランク・キャップ・ビック・バンドでのソリストとして活躍しているようです。テクニックは抜群なのですが,根っからのバッパーなので,これまたバッパーのウッズと相性は抜群で,昔懐かしい予定調和型のハード・バップ・アルバムですが,たまにはこんなスウィンギーな愉しいジャズも良いもんだと,ほっと一息。

ヘンリー・マンシーニの作品集ですが,《酒ばら》も《Moon River》もありません。僕の知らない曲がずらり。でも1曲目は《The Pink Panther》ですけどね。スッキリ爽やかな西海岸ハード・バップの好盤です。

Phil Woods 『 What Happens 』

2006年09月03日 01時17分50秒 | JAZZ
しつこくまたフィル・ウッズのお話です。ウッズは1967年にヨーロッパに渡り,1968年11月には,一世一代の大傑作『 Alive And Well In Paris 』を録音するのですが,その1ヶ月前の1968年10月12日に,ローマで,アート・ファーマー,マーシャル・ソラール,アンリ・テキシエ,ダニエル・ユメールらと吹き込んだのが『 What Happens 』(campi records)です。取り上げている楽曲が,ミッシェル・ルグランやジジ・グライス,それにドーハムの《ブルー・ボッサ》で,しかもアート・ファーマーが参加していることもあり,European Rhythm Machine のような狂気さは感じられませんが,もうちょっとで“あっち側”に行ってしまいそうな勢いのウッズ,ソラル,テキシエ,ユメールを何とかファーマーが抑えているような図式の演奏で,正にEuropean Rhythm Machine の孵化寸前の貴重な名演を捉えたアルバムです。こうして聴いてみると,European Rhythm Machineって,グルンツではなくてソラルでも可だったのかもしれません。ソラルがなかなかカッコイイんですよね。本作も密かな愛聴盤です。


P.S. レーベルのcampi recordsって,現CAM JAZZのことでしょうか?ロゴが同じような? もし同じならCAM JAZZって僕が思っていたよりかなり古いレーベルなんだな~。


Phil Woods 『 The Macerata Concert 』

2006年09月03日 00時20分05秒 | JAZZ
Philologyの話が出ましたので,関連してもう一枚。というか,実は以前からちょっと言いたかったこともあるので,ここでそのお話を。

Philologyは1987年にパオロ・ピアンジャレッリ氏によってスタートしたイタリアのレーベルですが,おそらく今でもピアンジャレッリ氏の家内工業的なレーベルではないかと思います。PhilologyのHPを覗くと,レーベルの歴史がピアンジャレッリ氏により綴られています。それによると,Philologyはチェット・ベイカー,リー・コニッツ,フィル・ウッズなどのヒーローへの敬愛心と,30年以上も深く愛してきたジャズに対して,自分も何か貢献したいという思いから,立ち上げたことが分かります。

フィル・ウッズのOfficial HPの素晴らしいジャケット入り“Complete Discography”は実は1987年に Philologyから発売になったウッズのライブ3枚組み『 The Macerata Concert 』(録音は1980年)に付いていた22ページに及ぶ豪華カラー・ブックレットの中に収められていたウッズのdiscography(当然ピアンジャレッリ氏が作ったもの)を元に,Jill Goodwinという方が補足して完成させたDiscographyなのです。ピアンジャレッリ氏は世界一のウッズ・マニアなのでしょうね。

この『 The Macerata Concert 』というLP3枚組Box Setは発売こそ1987年なのですが,録音は1980年。おそらくピアンジャレッリ氏所有のオーディエンス録音からのプレスでしょう。録音は決して良いとは言えませんが,ウッズの演奏自体はなかなかです。聴かないレコードはかなり処分してきたのですが,このアルバムを手放さずにいるのは,ひとつにはその豪華なブックレットが付いているからです。ウッズの演奏写真や彼の部屋,家族の写真。その他に今までの共演者達へのメッセージなど,興味深い内容が満載のブックレットで,最後にDiscographyが掲載されていて,これだけでも保存する価値のあるアルバムです。そしてもうひとつの理由は,本作がウッズのPhilology第一作にして,Philologyの記念すべき初のライブ録音盤なんですね。3枚組みなのでコード番号はw1/w2/w3 。ここからPhilologyの歴史は始まったわけです。

実はたびたび当ブログでも登場する僕の敬愛するジャズ評論家,杉田宏樹氏の名著『ヨーロッパのJAZZ レーベル』(河出書房新社)の中で《 ウッズのPhilology第一作が, 『エンブレサイブル・ユー』である。》と記されていますが,これはやはり誤りではないでしょうか。『エンブレサイブル・ユー』は録音も発売も1988年ですからね。正しくは《 ウッズのPhilology第一作が, 『 The Macerata Concert 』である。》でしょう。