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昔話の文法

2017-07-31 | 文章・文芸
【2017.07.31(mon)】
昔話が意図する処は?

・図書館に置かれていたチラシが目に入り、講演会を聞きに行きました。
グリム童話をはじめとするドイツ文学や日本の昔話の研究者である<小澤俊夫>氏の講演です。

・世界的な指揮者<小澤征爾>氏のお兄さんであり、ミュージシャン<小沢健二>さんのお父さんでもある方。
そんなことで名前は耳にしていたものの、講演を聞くまでは文学の研究家としてそこまで有名な方とは知りませんでした。
桐生操さんの「本当は恐ろしいグリム童話」など目にするものの、
ドイツ文学の研究者がグリム童話をどのように分析されているのかが興味の対象でした。

・事前予約だけで満席とのこと。ビックリしました。
平日ですが夏休みに入っている学校関係者の方が多かったようです。

・講演は午前、午後合わせて3hでしたが、もっともっと話して欲しいと思うほどに面白い内容でした。
午前中のテーマは「昔ばなしが語る子どもの成長」
昔話を考証すると世界的な傾向として、生きていく上での教訓的な話となっている。但し道徳的ではなく、むしろその逆である。
そこでは子どもに“強く生きろ”というメッセージを発していると…。

・昔話を語って聞かせるのはいつもお爺さんやお婆さんである。何故か。
お父さん、お母さんは仕事で忙しい。語る暇がない。
一方爺婆はリタイアして暇があるし何よりお父さん、お母さんを育て上げた実績があると…。成程、なるほど。

・日本の昔話の一つとしてあげられたのは「三年寝太郎」の話。
大事なことは、“寝太郎は一生寝ていた訳ではない” “たっぷり寝ていたからいい知恵が出せた”

・グリム童話からは「灰かぶり(シンデレラ)」を例にあげて
グリム兄弟はこの話をマールブルクの救貧院で一人のお婆さんから聞き書きしたとのこと。
これが1812年の初版として残っているが、これは兄弟にとっては試みであり1819年版では大分筋が変わり整理されている。

・どちらの話にも白いハトが出てくる。古今東西いろいろな民族で白い鳥は死者の魂の化身と考えられていて重要な役割を担っている。
だがよく目に触れる絵本でのシンデレラの物語では魔法の杖に変わってしまっている。

・昔話では3という数字が好んで使われる。原作では“灰かぶり”が実母の墓で服をもらい宮殿に出向くのは3回で、その3回目に王子の計略によってガラスの靴を残してしまう。3回の繰り返しはリズムを作り、耳で聞く文学が主であった頃には大事な技術であった。

・そしてもう一つの側面は、自立しようとしながら振り子のように振れる若者の心理を象徴しているのだと。
昔の語りの文法に過ぎないが、その文法を壊してしまったら、物語に秘められた大事なメッセージも壊れてしまう。
私の講演を聞いて頂いたのを機にディズニーだけでなく、ぜひ原著に触れて頂きたいと…。 

・午前中に話された内容は自らの著になる<ろばの子>に書いているとのこと。
昼休憩中に著作の販売+サイン会を催されたので、一冊求めました。


・午後からのテーマは「昔ばなしの残酷性とは?」
結論を言えば「残酷なこと」は語るが「残虐には語らない」とのこと。
主人公が最後に幸せになる。そこに至るまでの試練としてエピソードは残酷に語られる。
幸せの形は “身の安全” “富の獲得” “結婚” のいずれか。

・昔話には独特の文法があり、語り手が意識していなくても一定の法則が存在している。
子供が耳で聞いた時に頭の中に情景を思い浮かべられるように、又その能力を養えることも大事なポイント。

・例として “孤立的に語る/1対1の法則” “リアル(写実的)には語らない” “図形的(平面的)に語る” “時間や場所の一致” “一次元性” “重要人物、物を狭い空間に置く” “話の経済性” “姿・形が大事” “色は原色” “同じ場面は同じ言葉で語る” 等々。

・入門者に特に読んでほしいと言われたのは<こんにちは、昔話です(小澤俊夫の昔話講座―入門編)>でした。
図書館の所蔵品。昔話が持っている法則性や、発せられるメッセージについて解説してある本。
昔話とは子どもの成長を願うものという考え方が印象に残ります。

・小澤氏はグリム童話の研究から出発し、マックス・リュティの口承文芸理論を日本に紹介。
その後、日本の昔話の分析的研究を行い昔話全般の研究を推進。
1992年から全国各地で「昔ばなし大学」を開講されていて、この前日にも島根県で講義をされていたそうである。

<最後に氏が語られたこと。>
子どもに対して親がやるべきことは何だろう。“自分が愛されているという自覚” “自分が信頼されているという自覚” “自分の価値が認められているという自覚” が子どもに確認できれば良いのではないだろうか。

We can learn important things from several fairy tales.
See you.

I.O
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