月の岩戸

世界はキラキラおもちゃ箱・別館
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プルケリマ・12

2015-08-25 05:17:21 | 詩集・瑠璃の籠

真実の 雨が降ってくる
ファンデーションのような
虚偽の仮面が 溶けてくる

神さまが 風に流してくれていた
秘密の薬が もう流れて来ないのだ
あんまり人間が
馬鹿なことばかりするので
神さまが とうとう
薬を流すことをやめたのだ

人間の 馬鹿な人間の
正体がばれてくる
あれほど立派だった自分は嘘だったのだ
あれほど美しかった自分は嘘だったのだ
なにもかも
みんなが我慢してくれていたから
なんとかなっていた嘘だったのだ
だがもうそれはない

天使たちはくじを引き
偶数のくじを引いたものは帰って行った
奇数のくじを引いたものだけ残った
人間のために愛を注いでくれる存在が
どんどん 少なくなる

それでも 何にもきづかないのだ
人間は 未だにわからないのだ
愛の姿が 見えないからだ
愛の 姿が 

真実の雨が降り
ファンデーションのように
虚偽の仮面が溶けてくる
どこに行ったのだ あの自分は
だれなのだろう 今の自分は

風に首をつかまれ 引きずられていくように
運命の川に突き落とされる
ずいぶんと汚れた川だ
流されながら岸辺を見れば
見たこともないような変な格好をした女が
子供の襁褓を一生懸命洗っている

ここはどこだ
自分はだれなのだ
すると遠い声が鈴のように頭の中で跳ね返る

風に従っていきなさい
風がきみたちを導くだろう

風は川下に向かっておまえを流していく
ふと おまえは泳げることを思い出して
流れに逆らおうとしたが
強い水の力にすぐ押し戻された

もう終わりだ もう帰れ

だれかの声が
風の中から聞こえる





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