M.シュナウザー・チェルト君のパパ、「てつんどの独り言」 

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ミラノのシスティーナ : サン・マウリツィオ

2016-12-04 | 2016 イタリア


 ミラノの美術館と言えば、サンタマリア・ディ・グラッツエ教会の「最後の晩餐」とか、ブレラ美術館を思い出される人も多いだろう。カナコロのダヴィンチは待ち行列ができて、ゆっくりは楽しめないし、ブレラはあまりにも作品が整理されていなくて、混然一体となって、どこか気に入らない。

 もし前回の僕の「ミラノ里帰り」を読んでいただいた方なら、そこで紹介したアンブロジアーナ絵画館(ほんとは内緒にして、静かなままであってほしいと思っている)をご存知の方もいらっしゃるだろう。僕が大好きなのは、やはりアンブロジアーナ絵画館だ。



 <アンブロジアーアナ絵画館>

 そんな話をしたら、ミラノの古い友達が、サン・マウリツィオに行ったかと聞かれた。知らないと答えたら、ローマ・ヴァチカンのシスティーナ拝堂に引けを取らない16世紀、ルネサンスのフレスコ画の殿堂だと教えたくれた。興味を惹かれて行ってみようと、カイロリでメトロを降りた。スフォルチェスコ城の最寄り駅だ。ダンテ通りで、工事をしていた人に聞いたら、一本隣の道を行けと教えてくれた。ミラネーゼによく知られた教会らしい。

 カイロリから10分も歩いたか、ちょっと不安になって、通りすがりの中年の女性に再度訊いたら、隣だから教えてあげるといわれて、ついていった。



 <外観>

 外観はロマネスク建築様式の、地味な変哲もない白い教会だった。えっ、ここなのと、扉を開けて内部に入ったら、天井、左右の壁、正面の全面を埋め尽くした、フレスコ画に圧倒された。これがサン・マウリツィオ教会だった。

 ここは、8世紀くらいからの教会で、16世紀になって、ルネッサンンス時期にダヴィンチの影響を受けたベルナルディーノ・ルイーニを中心とするロンバルディア・ルネサンス派のフレスコ画で飾られたと、案内のヴォランティアのおばさんが親切に教えてくれる。イタリア語で反応したら、表情か柔らかくなった。イタリア人は、イタリア語を話す外国人にとても親近感を持つらしい。表情がコロッと変わる。入場は無料。



 <主聖壇の全面>

 ヴォールトを含めて、全面を埋め尽くすフレスコ画に圧倒されて、見入ってしまった。入ったところは、一般の人が入れる公的な教会部分で、その裏側には女性修道院のままの別のホールが広がる。つまり、この建物は、完全に独立した二つの空間から成り立っているのだ。昔は、この二つのホールは壁で仕切られて、修道院と教会に分かれていたのだが、いまは主聖壇の左に小さな通路が作られていて、人が通えるようになっていた。



 <修道院サイドの全面>

 僕には、表の教会の公の顔よりも、裏の修道院を飾る絵の方が美しく、優しく見えた。中でも、ベルナルディーノ・ルイーニが描いた聖カタリナは、ラファエロの聖母にも劣らない優しさで、僕を迎えてくれた。



 <優しい聖カタリナ>

 同じく、ルイーニの最後の晩餐も眺められる。



 <ルイーニの最後の晩餐>

 ヴォールト様式がよくわかる裏側には、1500年代に作られたパイプオルガンもあり、今も演奏されているようだ。このオルガンを作ったのは、ミラノのドゥオモの大パイプオルガンを作った人らしい。



 <パイプオルガン>

 ヴァチカンのシスティーナ礼拝堂には、スケールも、迫力も劣るけれど、これはこれで、立派なミラノの誇れるフレスコのモニュメントだ。

 どのくらいの時間、このサン マウリツィオいたか定かでない。無意識の時間が流れていたようだ。外に出ると、7月の暑さが襲ってきた。



 <水飲み場>


 カイロリに戻る途中に、小さな木立の小公園があった。30℃を超える暑さの中では、水は欠かせない。鳩と一緒に、ミラノの水飲み場で、冷たい水を飲んだ。



 <木立の中の本屋>

 ホッとして周りを見たら、木立の中に古本屋が店を開けていた。こんなところに…と思いながら、眺めていた。なんだか、奥が深い街だ。