ケパとドルカス

『肝心なことは目では見えない』これは星の王子さまの友達になったきつねの言葉。

歴史性を無視するのではなく、生かし切った名画

2017年05月29日 | 映画•映像
先週、アンテオケのブログは「私のおすすめ映画」だった。

そこで私のおすすめは「ヤコブへの手紙」だったが、本当はもう一つあった。

それは「KINGDOM Of HEAVEN(キングダム オブ ヘブン)」だった。後者の作品は十世紀の聖地奪回運動、十字軍の遠征により実在したエルサレム王国の滅亡を描いた作品である。

最近の歴史大河ドラマや武士の映画などの傾向をみると、あまりにも歴史性を無視したあり得ない作り話が多く、鼻白む思いがする。今は過去のものとなったとしても、かつて自分たちがどのような社会規範を持って、人間関係はどんな対応をしていたのか、全く分かってない。現代人にとってそれはどうでもよく、ただ面白おかしくて売れれば、それだけで良いのだろうかと思う。

それを今週の直虎で言えば、小名とはいえ、殿様が領内で財布を盗まれ泥棒を追っかけ回した上、盗賊に囚われて人質になったり、盗賊の首領と1対1で腹を割って話す(そんな馬鹿な話しがある?…男性領主だって単独では決して会わないよ)が堂々と放映されている。

これとは反対に、ドラマである限りは創作部分は避けられないが、それでもごく自然に挿入され、リアル感のある物語作りには引き込まれる。それがこの「KINGDOM Of HEAVEN」だ。
キリスト教についての知識があり、聖地でのキリスト教王国が敗れたハッティーン(ヒッティーン)の戦いを知れば、実に興味深いものだ。特に敵対したイスラムのアイユーブ朝の祖、一代の英雄サラディンを私は知っていたので非常に興味深かった。サラディンは実は、今現在も迫害されているクルドの出身である。(このハッティーン古戦場は、イスラエル派遣で毎年カイザリヤからガリラヤ湖畔のティベリヤへ行く途中にある
「HATTIN」という看板で見ることができる)

ところでこの映画の醍醐味は、十字軍の結果誕生したイスラエル王国の歴史と背景にある。実在の人物の王妃(シビーユ)と、エルサレム防衛の英雄(バリアン)とのラブストーリーが実に巧みに入れ込んであるところがすごいと思う。史実の中にフィクションがリアルに入れ込まれ、そこにいるかの如く夢中にさせられるのだ。
現在はビデオでしか観れないが、この二作品、是非皆さんにもおすすめしたい映画である。


ケパ





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