matta

街の散歩…ひとりあるき

女客あけびの前で横を向き…

2013年10月31日 | 自然
LeicaM8.2/summilux 75mm

さらに、昨日からの文章引用がつづきます。

「あけびの実はなかなかに風情のあるものであるから、
俳人も歌よみもみなこれを見逃さなかった。
昔の連歌に山女(あけび)を見て
「けふ見れば山の女ぞあそびける野のおきなをぞやらむとおもふに」
と詠んでいる。
この「野のおきな」はところ
すなわちよく野老と書いてある蔓草の根(地下茎)をいったものである。また
「いが粟は心よわくぞ落ちにけるこの山姫のゑめる顔みて」
とよめる歌の返しに
「いが実は君がこころにならひてや此山姫のゑむに落つらん」
というのがある。
すなわち山姫はあけびを指したものである。
また山女と題して
「ますらをがつま木にあけびさし添へて暮ればかへる大原の里」
の歌もある。
また俳句もかずかずあるがその中に子規のよんだのに
「老僧にあけびを貰ふ暇乞」
がある。
霜月の句に
「あけび藪へわれより先に小鳥かな」
があり、李圃の句に
「ひよどりの行く方見れば山女かな」
がある。
また箕白の句に
「あけび蔓引けば葉の降る秋の晴」、
蝶衣の句に
「山の幸その一にあけび読れけり」
がある。
また「口あけてはらわた見せるあけびかな」
という句があった。
これは自分の拙吟だが
「なるほどと眺め入ったるあけび哉」、
「女客あけびの前で横を向き」
これはどうだと友達に見せたら、
そりゃー川柳へ入れたらよかろうと笑われた。」
   (『牧野富太郎選集3』さまざまな樹木・アケビ(昭和11年)より)


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