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街の散歩…ひとりあるき

23-24…早く愛着の絆を断ち、無為の気楽を極めたまえ…『釋迦尊御一代記圖會』巻1 

2024年08月05日 | 宗教

我と我身を焼き亡(ほろ)ぼし、執着の悪念滅する期(ご)なく、生々世々(せゝ)御身に纏(まと)わり
恨みをなすならば、御身もその障碍(しょうげ)のために佛果を得たまう事能うまじ。故にしばらく
その調伏にまかせ、出産の期を延ばすは姉夫人の悪念を永く断たしめ、却って
大道心の善女となさん方便なれば、心苦しくも今しばしのおわせませ。かの
呪詛せし二人の道師は天神地祇の怒りに触れ、すでに生きながら地獄へ堕落(だらく)し
無量の呵責を受けて、苦患(くげん)少時(しばらく)も止むときなし。然りはあれども菩薩の戒業
には、予(われ)、冦(あだ)する者とても憎み捨つることなく、却って彼が愚昧にして己が罪己
を責むるを憐れむこと深し。よって憍曇彌夫人が悪念消滅の期(とき)を待ち、予(われ)、世に
出生し、難行苦行の功を積み、成道正覚を得、至来作佛の時節には必ず
渠們(かれら)が呵責の苦患を救い、佛果に至らしむべし。唯、何事も因果の
道理にて悟るときは誰をか好(よみ)し、誰をか悪(にく)むべき。日は朝(あした)に出でて夕べに没
し、月は望に満ちて晦(みそか)に尽き、春夏秋冬の四序易々(えきえき)として押し移り、火
の熾(さかん)なるも久しく、燃ゆること能わず。水の溢るゝも暫時に流れ落つるならい。
増して人間の命の不定なること是らよりも猶甚だしく。花を折りて日中に

置くが如く幾ばく時が麗しきを得べき。この理をよくよく悟り無常を観したまえ。
母夫人いま金殿玉楼に傅(かしづ)かれ錦繍羅綾(きんしゅうらりょう)に纏われたまう栄花も只是(これ)
春の夜の夢に等しく、終には楽しみ尽きて悲しみ生じ、閻浮(えんぶ)の塵となたまうべし。
されば早く愛着の絆を断ち、一心に佛果を願い一佛浄土の臺(うてな)の上三明(うえさんみょう)
六通を具足して無為の気楽を極めたまえ。必ず夢とな思したまいそ。先刻よ
り説きし事を淨飯王はじめ、誰々にも洩らしたまう事なかれ。かりそめにも人に告げ
たまわば、憍曇彌はじめ月景城に仕える男女悉く刑(つみな)はれぬべし。しかあり
ては御身も予(われ)もその罪七百生を経とも、滅する期(とき)なくそうろうそ。努々(ゆめゆめ)この
戒(いましめ)を忘れたもうな。そも親となり子となること、梵天より糸を垂れ蒼海の
底に沈みし針の孔を通すよりなお得(え)難き契りなれば、御為悪しくははか
らいそうらわじ、と、いと懇(ねんごろ)ろに説法したまい、亦、ささやかなる御手にて胸の間を
撥(かさ)開き胎内に入りたまいけり。其の時摩耶夫人は年来の病苦、旭に霜の消ゆるが
ごとく心清々しく、身体初めて健やかになりしを覚えたまい、偖(さて)もさても有り難き御こと
かな。名残惜しき御事かなとて、自ら胎内を見たまへば、光明赫々(かくかく)として
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