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街の散歩…ひとりあるき

03-04 御腹の長大なるは定疾病の所為にてそうろう…『釋迦尊御一代記圖會』巻之2

2024年08月11日 | 宗教

婇女(こしもと)も初めのほどは心着(つか)ざりしが果は覚り、夫人に斯(かく)と告るに后妃駭(お
どろ)きたまい、さればこそ初めより妖しと思いし事よとて、愈(いよいよ)身を慎み。他の医官が
調せし薬とても敢えて用いたまわず、ことごとく流れにぞ捨てさせれける。

老翁 夫人を相して胎中皇子の高徳を奏す

朝廷には、日々、摩耶夫人の容体を訪わせたまうに、さして変わりしこともなく、病も癒えず、
降誕もなければ、淨飯王、叡慮を悩ませたまい、又、群臣を召し聚(つどへ)て詮議あり。
已に医薬、効を奏せざる上は百計尽きたり。この上は四天下に触れわたし、観相に
堪能なる者を撰(えらみ)出し、夫人を相させ患病か妊娠か定めしめよと宣旨ある。
緒臣、王命を畏まり諸国へ勅命を傳えて相者を召さるゝに、看病に名を得し輩(ともがら)、
年来の琢磨(たくま)を顕すは此の時なりと、我も我もと召し応じて迦毘羅城へ
参り集まる者已に百人におよびぬ。淨飯王、此よし叡聞あり忝(かたじけな)くも堂上へ諸相者を
召され、侍臣を持って詔ありけるは、摩耶夫人の胎中真(まこと)の孕(みもごり)か患病(いたづき)の
所為(わざ)か精しく看相せよ、能く見究めたらん者には若干の荘園を下し与うべし
との御ことなり。相者一斉に拝伏し、王命を領掌して官使と俱に青陽城

の宮中に至る。官使は烏将軍に対面し云々の旨通達しければ、烏将軍後宮に入て夫人に斯く
と言上するに、后妃また憂いたまい躬(みずから)こと深閨(しんれい)に引き籠もり、年久しく沐浴
せず、梳(くしけず)らず、然るに多くの相者に見えんこそつらましけれ、此のことのみは勅許
を願いたまえと辞(いな)みたまう。烏将軍聞きて、仰せさる事にそうらえども大王御身の上を
案じ煩わせたまい、あるいは高徳の賢者に祈祷させ、或いは諸国の名医を需(もと)め、今また
天下の名だたる相者を召し聚(つどい)たまうも偏に御身を愛幸したまう帝恩なり。然るを辞
みたまうは違勅の科を免れたまわじ。何事も君の御為、御身の為と思し召し相者に見(まみ)え
たまえと夫婦言葉を尽くして諫めけるにぞ、后妃、已むを得ず然らばとて玉傳に立ち出で
帳を垂れ、相者を一人づゝ召し納れて観相させたまう。よって百人の相者代わる代わる后妃
の御前に出でて、その玉貌を相し奉る。天のなせる美人にて久しき御悩みにやゝ面瘦たたま
えども素雪の肌あざやかに、桃李の面麗しきことことふる物なく、后妃の顔に向かうどの者、
其の国色に眼を奪われ恍惚として碎るが如く痴なるが更に懐妊か病痾か見分けかねたるが思
い返して熟(つらつら)看相し烏将軍に対し、后妃を相し奉るに妊娠の表(ひょう)そうらわず。
御腹の長大なるは必定疾病の所為(わざ)にてそうろうべしと告ぐ始め一人より九十
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