SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

PATTY McGOVERN 「WEDNESDAY'S CHILD」

2010年04月05日 | Vocal

この作品、ジャズヴォーカルのファンなら知らない人はいないだろう。
購買動機の半分以上はこのジャケットに違いない。
写っているのはパティ・マクガバンと、このアルバムのコンダクター兼アレンジャーであるトーマス・タルバートである。
逆光になっているため写りもそれほど良くないが、なぜか惹かれてしまう。
二人の立ちポーズが様になっているからかもしれない。
まるで名作映画のポスターのようだ。
パティ・マクガバンが何かをポツリと呟き、トーマス・タルバートが思わず視線を向ける。
そんなワンシーンのように感じるのである。
この何かを言いたげなトーマス・タルバートの姿が何とも粋で、それだけで酔ってしまいそうだ。
とにかくこのジャケットを見て何も感じられないようなら、ジャズファンの資格がない。
この味わいこそが50年代ジャズヴォーカルの魅力なのである。

こうした作品は雰囲気で聴く方がいい。
あまりディテールにはこだわらないことだ。
ひたすらパティ・マクガバンの清楚な歌声を楽しむのである。
とにかく丁寧に丁寧に歌っている彼女の姿が印象に残る。
それとバックに流れるフルートが全体のムードを高めていることにも注目したい。
この作品は、どの曲も聞きこめば聞き込むほどに味わいが出てくるのだが、私は個人的に「Lonely Town」で始まるB面が好きだ(CDなら7曲目以降)。
比較的曲の並びが自然で、すんなり入ってくる感じがするからである。
「ニューヨーク、ニューヨーク....」で始まる歌詞もジャケットの雰囲気にマッチしており、一気にその世界に引き込まれる快感が味わえる。
というわけで、これはジャズヴォーカルは何から入ればいいかという初心者にもお薦めできる盤だといえる。
理由は簡単。
視覚と聴覚、その両方をジャズ的に満足させてくれるからだ。