SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

TED ROSENTHAL 「CALLING YOU」

2007年09月07日 | Piano/keyboard

今どきのフレッシュな音である。
CTIレコードからの発売だからプロデューサーはクリード・テイラーだ。ここで納得する部分が大きい。クリード・テイラーの手にかかれば期待を裏切らない出来になることは間違いない。しかも録音はルディ・ヴァン・ゲルダーだから音質も最高水準である。
メンバーもこれまた魅力的。ボビー・ハッチャーソン(vib)、ドナルド・ハリソン(ts,ss,vo)、ジム・ピュー(tb)、ケヴィン・ユーバンクス(g)、ジョン・パティトゥッチ(b)、エディ・ゴメス(b)、デイヴ・ウィッケル(ds)といった人たちだ。
このアルバムがとてもフレッシュに感じるのはこうした要因がいくつも重なっているからだといえる。

最初にテッド・ローゼンタールの名前を知ったのはジム・ホールの「ユーカリ」である。この作品もまたクリード・テイラーのプロデュースによるものだった。アランフェス協奏曲の入った「Concierto」の成功によってその後いくつかの続編的な作品が制作されたが、「ユーカリ」はその内の一枚だった。
そこに参加してジム・ホール並びにチェット・ベイカーらの心意気を学んだローゼンタールは、それらを自分流に昇華したこの作品を作ったのではないかと思う。出だしのドナルド・ハリソンが歌う「CALLING YOU」でまずそう感じた。
続く「AVIANO」はリターン・トゥ・フォーエヴァーを彷彿とさせるエキゾチックなナンバーで、このへんにはチック・コリアの影響も見てとれる。ドナルド・ハリソンのソプラノサックスは、まるでチック・コリアの弾くエレクトリック・ピアノのように聞こえるから面白い。
ローゼンタールはクラシックも得意な様子で、ドビュッシーの「グラナダの夕暮れ」も取り上げている。曲想がこのアルバムに合っているということと、「ユーカリ」のイメージがここにも感じられ、彼の深層の一端を垣間見ることが出来る。

最近の彼はヴィーナス・レコードから組曲「王様と私」をテーマとした純粋なピアノトリオを吹き込んだり、ケン・ペプロフスキーのカルテットに参加したりと精力的に活躍している。そのどれもが実に個性的だ。
彼は明らかに注目株の一人であることに間違いない。