長電話

~自費出版のススメ~

本と箱、あるいはジョセフ・コーネル・トリビュート

2009-05-30 | アート
6月2日から「本と箱」をテーマにした展示会が、渋谷の珈琲&ギャラリー「ウィリアムモリス」で開催されます。主宰のフラグメントの西山孝司氏をはじめ、デザイン業界で重きを置く面々が集い、ジョセフ・コーネル・トリビュートといった趣きで出品、私も末席ながら参加させていただきました。

展示は
6月2日(火)~6月30日(火)12:30~18:30(日・月・第3土休)
105-0002 東京都渋谷区渋谷1-6-4 THe Neat青山2F
渋谷から行く場合、宮益坂を昇りきったところに八千代銀行があり、そこを左折し、最初の角を右折したところに看板がでています。

参加の打診があってから、2ヵ月間適当に苦しみ、途中、周囲には奇異な視線を送られながら、搬入当日になっても結局作品は仕上がらず、本当のアーティストはこんな毎日かいな、と思いつつ、深夜のCLの決勝を見た翌日のボロボロな状態で、3度目の最初からのやりなおしを始め、搬入直前に仕上げたという苦し紛れのものですが、とにかく私以外の作品は素晴らしいので、渋谷近辺にいらした場合は覗いてみてください。特にちっちゃいもの、活字、澁澤龍彦、四谷シモンのお好きな方ならオススメです。

それから、制作に関し、多くの示唆を与えてくださったR子女史と、G女史に感謝します。彼女達のフォローがなければ、参加は挫折していたでしょう。
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L字経済

2009-05-29 | 政治
子供の頃、父親が2年毎に車を買い替え、道路を走る他の車もモデルチェンジの季節の度にきっちり更新されているのを見て、なんてもったいない贅沢をするのかと不思議に思っていました。当時はスーパーカーブームでヨーロッパの名車に興味を持ってはいましたが、それは古い絵画や映画を鑑賞するような視点であり、運転や車のもつ経済的な意味など考えてもみませんでした。

日本の好印象を海外に演出し、経済を支えてきたのは、政府ではなく、トヨタやソニーといった民間の大企業の製品の良さと丁寧な営業にありました。

しかし景気が悪かろうが良かろうが若者は車に乗らず乗られず、買い替えも習慣ではなく「環境に配慮」など明確な動機がないと、それもしないようになっています。業界それぞれに営業の達人がいるものですが、その神通力も通じることなく、自動車業界の日本での業績はもう好転せず、エコ(ノミック?)ポイント効果も一時的で、産業構造の転換を迫られるような不況に定着してしまうのかもしれません。

私は車が嫌いですが、今回の「100年に一度の経済危機」は、そんな他人事の自動車業界すら意識させる深刻なもののようです。
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祝 バルセロナ3冠

2009-05-28 | スポーツ
キリンカップ・サッカー日本代表の思わぬ大勝が、本田という強いオーラのある選手の活躍によってもたらされました。日本人のFWタイプでは珍しくゴール前の迷いがないエゴイスティックなセンスの持ち主がようやく現われ、中村俊輔が参加するゲームとは風合いの異なる(彼がいるとボールが止まる)、縦へ縦への試合が展開されました。本番ではまだ今日のメンバーが起用されることはないかもしれませんが、ゴール前を固めてくるアジアのチームには有効な、とにかく蹴り込んでこぼれ球を叩き込むという、泥臭いプレーも見られ、セリエAでの森本の活躍といい、俊輔後の日本代表にも目処がついてきました。

試合が終わり、6時間、今度は世界最高峰の舞台、欧州チャンピオンズリーグの決勝が始まり、くだびれた体に鞭うっての観戦。この大会は去年の成績をもとに選出されるし、国内リーグの優勝争いの激しかったチームには不利なので、その年に優勝したピークにあるチームが覇権を争うことはあまりなかったような気がします。ところが今年は両チームとも自国リーグを余裕をもって制しているので、まさにクラブのチャンピオンを決めるに相応しいカードの実現となりました。

試合はバルサが前半10分までのマンUの猛攻に耐えた後は、終始圧倒的なポゼッション、特にイニエスタとシャビのボールキープ力は素晴らしく、クリスチアーノロナウドにほとんど仕事をさせない、攻めて守るというスペインのスタイルを貫いての優勝でした。相手の攻撃が理詰めに見えるほど、比較するとバルサは複雑な位置取りと流れからの得点を重ね、終盤の時間稼ぎのパス回しすら華麗で、終始余裕ともとれるメッシの笑顔が絶えないように、相手は本当に無敵のマンUなのかと疑うほど試合を支配していました。

研究され、破れ去ったロナウジーニョのときのチームとは違う、1年でスキのないチームを作り上げたグアルディオラ監督の手腕に脱帽。モウリーニョが率いたマンUとの再戦も今から楽しみです。
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横綱にはなれねども

2009-05-27 | スポーツ
よもやと思った日馬富士の優勝で幕を閉じた大相撲五月場所。日馬富士はまるでピークのような躍動感で疲れの見える白鵬を制し、モンゴル勢全盛の大相撲をさらに印象づけました。

日馬富士というと、時々優勝してもいいけれど、幕内最軽量の体格から、傍役で長く相撲を取る金星の多い平幕というイメージで、主役の風格ではないと思っていたので、優勝は本当に意外でした。ただ、初場所から、朝青龍、白鵬、日馬富士とそれぞれ優勝力士は変わりましたが、その間白鵬は2敗しかしていません。優勝や連勝記録は名誉ではありますが、今後も白鵬の強さはゆるがないでしょう。

また、前頭上位にいっては負け越し、下位では勝ち越すというを日本人若手力士のリフレインを見ていると、互助会、枯れ木も山の賑わい、などと揶揄されるベテラン大関陣は横綱候補でなくとも、やはり強いのだと認めざるをえません。強さをキープし続けている状態で8勝以上をあげることがどれだけ大変か。やる気まんまんの若手をここ数年退けてきた(鶴竜は除く)のですから、横審は騒いでいますが、それはそれでたいしたものです。

それにしても場所を盛り上げた影の主役「安美錦」。勝ち越さなくても殊勲賞はもらえないものですかね。
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ノイローゼのために

2009-05-26 | 政治
お互い牽制しあうだけで、決して開戦しない知性と節度を持った敵との静かな対立状態の醸成を「抑止」といいます。昨日核実験を行ったキタは、果してそういった見識ある敵たりうるでしょうか、と私が心配してもしょうがないうえに、他の事件同様、2・3日経つと忘れてしまいそうですが、もっとも地震やキタの核を心配していたら、黒澤の「生きものの記録」の主人公のようなノイローゼになってしまいます。

三浦和義といい、ホリエモンといい、小沢さんの秘書といい、逮捕時にインパクトがあり、マスコミもそこを重点におき、起訴、裁判、判決と次第に忘れ去られ、われわれにとっては「去るものは日々にうとし」状態となります。断罪はすでにマスコミによってなされ、国民の溜飲をさげたり、報復感情を満たすという効果が終われば、それで十分なようなのです。

キタの核実験や弾道弾発射も日常となり、非難は自動的にコメントされ、マスコミや軍事評論家のメシのタネとなる作用しかなく、金さんは放置プレイのごとく国際社会に実態として無視され続けるというのも、キタが崩壊するよりも経済的には安全なのかもしれません。暴発するほど彼等が阿呆だとも思えませんし。

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盧武鉉氏の選択

2009-05-25 | 政治
週末に韓国の前大統領盧武鉉氏の訃報が届きました。地域コミュニティーがしっかりとあり、家族の絆が強いコネ社会であるかつての韓国社会と、決して譲ることのない気の強い韓国人の国民性に詳しい人ほど、「日本人みたい」「いい人だったんだ」と、そのらしくない自殺という対応を不思議がっていました。

しかし、昨今の韓国の自殺率はOECD加盟国で最高なんだそうで、昨年の自殺数も1万2174人と多く、芸能人の自殺もよく報じられている印象もあります。ITや経済優先の政策のせいで地域・家族が分断され、かの国でも人と人との繋がりが薄くなっているのでしょうか。

世帯に一つであったテレビ(パソコン)が部屋毎になり、電話は個人で持てるようになり、景気を左右する電化製品が家族を蝕んでいきます。経済的理由で生活が立ち行かなくなり死を選ぶ人の割合が世界でも増えていますが、心の拠り所を失って死に追い込まれるというのも元をただせば、それもまた経済的理由といえるでしょう。
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白鵬礼讃

2009-05-23 | スポーツ
ときどき、勝っていながらその取り口に「イケね」って表情をして舌を出すチャーミングな白鵬は、まだ24歳。昨日の全勝対決は1コ上の日馬富士との長くいい勝負をしたように見えましたが、実は慎重にコトを運んだに過ぎず、並の力士なら食らう日馬富士の練られた技を余裕で返し、最後は派手にすそ払いで始末。あらためて、彼がモンゴル相撲出身力士だと思いしらされ、寄り切り中心の、保守的横綱相撲の美意識の中だけに生きているのではないこと、才能が露骨に開花している状態を思いしらさせれました。。

かたや朝青龍28歳も、主役は譲らんと、前半での1敗にもめげずモチベーションをキープ、下手投げを乱暴に決め、今場所の高いテンションを維持し続けており、千秋楽本割で負ければ自身の持つ35連勝の記録を破られることもあってなのか、立ち会いの悪さは彼のただの個性ではないかと思われるほどの充実した土俵で、場所を盛り上げています。

スター、そしてライバルがあってこそが、業界繁栄の基本。あと2日、日馬富士が残りを連勝し、取りこぼしがなければ白鵬の優勝。明日朝青龍が日馬富士に勝つと、千秋楽が盛り上がります。ただ、結果はどうあれ今の白鵬は優勝にも連勝新記録にも相応しい横綱です。
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中日優勝説

2009-05-22 | スポーツ
先発のコマが揃ってきたし、交流戦でローテーションが楽になるということで、手薄だった浅尾が中継ぎに回り、中日本来の姿が戻ってきました。我慢を重ねて使い続けたブランコにも当たりがでてきて、このチームの今後が楽しみです。

ブランコは打率が上がらなくても、相手投手には十分脅威であり、和田の調子の良さも、森野、ブランコと続く打線による投手の神経の負担の重さに負うところがあると思います。打順は若干いじりましたが、王道のごとくスタメンを変えない落合監督の落ち着き払った采配は、調子が悪いとすぐにちゃちなアイデアを試したがる巨人・原監督に比べると、シーズンを長い目で見、選手の将来を考えると、働きやすい環境を提示しているといえるでしょう。

落合監督は3年の再契約の1年目、オーナーには「3年目で華を咲かす」と野村監督のヤクルト時代の発言のようなことを伝えたと言われています。しかし、安定した選手起用をみていると、その狙いは、先発投手のいい広島、抑えの林昌勇が安定しているヤクルトとともに争う、2・3位からの日本シリーズ出場権ではなく、5割を切っている勝率をみればまだ失笑の対象ではありますが、今季の優勝も視野に入れているのではないでしょうか。
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ウィルスと細菌

2009-05-21 | 政治
季節はずれのインフルエンザによるマスクの流行で、80年代に想起した近未来のような風景が繰り広げられるようになりました。そのうち水着にマスクとか銭湯でマスクとか、マスクでナンパとか、マスク依存による珍風景がみうらじゅんの「スライドショー」よろしく写真におさめられることでしょう。

ウィルスは細菌と違い、細胞を持たず、次々と変異するものだそうで、その存在は「実体」ではなく、「要素」に近い鵺のような印象です。寄生する、宿主と共存しようとしているだけなのに殺してしまう、という性質は宗教や恋愛に近く、マスクというシンボルによって結び付く連帯のような日本の風景もまた新興宗教や野球の応援団の様相です。

そういう意味でいえば、共産党は細菌(細胞)、この国に4年前に吹き荒れた「小泉インフルエンザ」、9.11米同時多発テロによって引き起こされた「ブッシュ熱」などはウィルスとなります。犠牲者の方が規模としては新型インフルエンザより大きいのですが、マスクマンの増殖を見ると、付和雷同ウィルスや同調圧力ウィルスはいまだ殲滅されていないようです。
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タミルイーラム 解放の虎

2009-05-20 | 政治
スリランカのテロ組織、タミルイーラム 解放の虎が、敗北宣言をし、指導者達も射殺され事実上壊滅しました。少数派であるヒンズー教徒のタミル人が分離独立を目指して72年に結成したといいますから、37年に及ぶ長い歴史を持つ組織です。名前が印象的(マレーの虎 ハリマオみたいだ)なことと旗がかわいいということで気になり、ここのところ頻繁に伝えられていた記事をチェックしていました。

彼らの主張は自治権の拡大、差別の撤廃であり、スペインの「バスク祖国と自由」(ETA)同様、圧政の中で生まれ、少数民族による主張の先鋭化という形をもってテロ行為に及んでいます。

7万人ともいわれる犠牲者をだした長年の内戦にピリオドをうったのは、話し合いによる解決でもインドの介入でもなく、政府軍による制圧でした。政府側の勝利で平和が訪れた、という構図ではありますが、白色テロともいえる弾圧、民族浄化、連邦の否定や仏教至上主義をもりこんだ憲法の存続、と多数派シンハラ人(74%)の横暴もまた、断罪にあたるものです。

息の長いテロ組織(国家)など、主張の前に組織の維持が優先され、時間とともに弱体化するに決まっています。勝利した側によって悲惨な歴史が書き換えられる例をいくつも見てきた私達の興味は、仏教国であるスリランカの「戦後処理」がどういったものになるのかに移っていきます。
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白鵬vs朝青龍

2009-05-19 | スポーツ
朝青龍は相手が相手だけに間抜けな黒星といえる脱力感を味わいながらもめげず、腰の低い取り口でベストをつくす相撲を採り続け、かたや、白鵬はゆとりのある「見切り」で苦笑いしながらも初場所11日目、日馬富士に破れて以来の連勝を29に伸ばしています。

両横綱の勝負は、初場所の本割、優勝決定戦は1勝1敗と五分でしたが、力対力のガチンコ勝負というより、立ち会いの甘さをお互いつけこまれたという印象で、雌雄を決するという程の相撲内容ではありませんでした。

東の正横綱という地位にありながらいまだ豊かな伸びしろをもつ白鵬、何をもって円熟か、あるいはピークなのかが分からない朝青龍。そして横綱候補として落ち着きを取り戻し、参戦する日馬富士。

期待の若手の成長、ベテラン大関の健闘。いつになく充実した土俵が続いています。
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バンド名不況

2009-05-18 | アート
昔からアーチストのデビューの実際は、(ポプコンなど)業界のお膳立てで実現するケースが多く、矢沢永吉やユーミン、達郎や大貫妙子のように、好きなことをやってるうちに自然に周囲が引き込まれ、デビュー、成功するケースは稀です。

最近では「そうたいせいりろん」だの「ON/OFF」だの、はては「世界一」だの、編集者が勝手につける本の「帯コピー」のようにインパクト主義でイージーなバンドのネーミングが増えてきているところをみると、その構造は変わらず、むしろ強まっているのかもしれません。

さすが一番人気のあるグループが「すまっぷ」というしまらない名前である日本だけあって、多くのバンドがいいかげんで業界丸抱えな雰囲気に満ち満ちていて、そんな眠い名前であるだけで、ラジオを消してしまいそうになります。

各々の趣味が島宇宙化され、興味のない他ジャンルへの批判もしなくなったことが、こうした退廃を招いているのかも知れません。まったく口にするのも恥ずかしい、バンド名の不作、いや凶作ともいうべき状況です。
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美貌の都

2009-05-16 | スポーツ
プロ野球というと、藤井寺球場でのデーゲームで顔の下に炭をぬったパンチパーマのおっさんばかりだった近鉄の選手のように、豪放磊落な人ばかりだったのも今は昔。大リーグの筋肉のお化けみたいな連中とも違う、日本独特の美しい選手があらわれてきました。

ダルヴィッシュをはじめ、西武の中島、楽天の岩隈と、WBCでは韓国の選手に美しさにおいて既に完勝していましたので、決勝でも負けるはずがないとタカをくくって見ていたものです。韓国選手も随分やりづらかったと思います。

WBCに出場してもおかしくない実力をもったソフトバンクの和田、ローテーションに入ってきた阪神の能見、勝ちゲームの後半に登板するようになったソフトバンクの久米勇紀と、演技力があれば俳優になってもおかしくない逸材です。特に歌舞伎役者のように上品な能見、ロックバンドのフロントマンのようにポップなセンスの久米は、そのユニホームの着こなしとともに評価をされ、人気がでてしかるべきでしょう。

WBCを見てはじめて岩隈を知ったなんて人も多い中、やりすぎるとコアな野球ファンは反発するでしょうが、人気商売でもあるので、球団ももう少し「美形選手」を「美形選手」としてプッシュしてはいかがでしょうか。
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ノルウェイの森とノーウェジアンウッド

2009-05-15 | アート
黒澤明が山崎努に「君はテレビに出過ぎだ」と忠告したことがあります。これは山崎のイメージが固定され、役者としての幅が観客によって限定されることに対する忠告です。職業としてではなく、作家としての監督であるならば、あらかじめ消費された役者など使いづらいことでしょう。

それを逆手にとった映画が「シックスセンス」。この作品が成功しているのは「ダイハード」はじめ、タフな印象しかないブルースウィルスのパブリックイメージに我々がまんまとだまされたからです。映画はフィクションであると同時に観客の出演者への先入観をも利用し構成されるドキュメンタリーでもあるということの好例です。

ノルウェイの森のキャストが発表されました。ついつい好きな俳優とのコラボを望みがちですが、作品はあくまで原作者の手を離れた「映画」であり、監督のものです。マーケットなど意識せず、手垢のついていない新人で固め「桜の園」や「リリイ・シュシュのすべて」のようにフレッシュに作りはじめてもよかったような気もします。
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すずやかな浅田彰

2009-05-14 | アート
朝日ジャーナル創刊50周年記念の復刻版に浅田彰が東浩紀、宇野常寛と鼎談していました(中森明夫が司会!)。かつて残間江里子女史に「童貞みたいな顔」と言われたその風貌もしっとりした大人の風情を漂わせ、いつまで助教授やってんのかと思っていた肩書も「京都造形大学大学院長」と随分レベルアップ(代表作は相変わらず「構造と力」「逃走論」と紹介されていましたが)しています。

浅田氏は秋葉事件を「どの世代にも阿呆はいて暴走するもの」、「オウム事件、宮崎事件がその世代を代表する問題とは思ったことはない」などと、世代論に拘泥し視点が日本に偏りがちな若い批評家達に対して常に超然としており、軽い貫禄(?)が文面から漂っておりました。

ニューアカデミズムのもう一方の雄、オウム事件を誘発したといわれた中沢新一も多摩美の芸術人類学研究所所長。お二人とも最初からアートよりの資質を持っていましたから、キャリアの終着点としては妥当なものなのでしょう。彼らは社会学者ではないのです。
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