長電話

~自費出版のススメ~

佐野元春「ソングライターズ」

2009-09-29 | アート
「ソングライターズ」という佐野元春がホストを務める番組が、いつのまにか終わっていました。いつもコメントを頂いているシオシオさんに教えてもらったとおり、佐野氏の才能がいかんなく発揮される「ポエトリーリーディング」のコーナーをメインにしつつ、おだやかな「爆問学問」といった風情のスタティックな構成のよい番組でした。

文学、スタイル、そしてファイリングにも長けた人なので、インタビュワーとしてはうってつけなのでしょう。ミュージシャン同士の馴れ合いの対談になりがちなこういった番組には珍しく、しっかりと攻守が棲み分けられており、佐野氏の気恥ずかしいくらいの初々しい質問もあって、ゲストが番組が進むにつれ御機嫌になっていく様子は面白いものでした。

文学青年だったさだまさしの「檸檬」をとりあげたこともさることながら、矢野顕子がゲストの時に「ホームスィートホーム」の『古い家を壊した癖に、私達は今新しい家を作る』という男前な歌詞に着目し、矢野氏から曲の勘所をよくぞ指摘してくれたと喜ばせたシーンも印象的でした。

個人的には松本隆の回で「はいからはくち」のダダイズムっぽい歌詞や、「瞳はダイヤモンド」という楽曲の完璧さに触れてほしかったので少々不満は残りましたが、あまりにも短いシリーズなので仕方ありません。改めて単発でもいいので再開することを期待しています。

朝青龍を「けいこ不足」で裁く品格

2009-09-28 | スポーツ
いまだ朝青龍の時代だったのかと驚かされた秋場所の千秋楽でした。行司は指し違えを繰り返すわ、魁皇は勝つわ、安美錦は負けるわ、解説の北の富士さんはいい澱むは、と荒れた一日の最後は朝青龍の投げによって優勝、「けいこ不足」を理由に反感を持つ多くの人々の溜飲を下げることはかないませんでした。

理事長さえ指摘する「けいこ不足」が真実ならば、才能さえあれば努力など意味のないものになってしまう、という「品格のある」側の苦い思いと危機感は相当なものでしょう。また総理大臣杯を渡す鳩山さんも、麻生さんとの違いを際立たせるためにも初場所とは違う優勝者と絵に納まった方が比較の上ではよかったのかもしれません。歓迎されない横綱の優勝は奇妙な後味を残しています。

才能とは取組むものに対する観察眼であり、何が足りないかを見極め、不断に補充していくことのできる能力のことで、あくまで結果として他人と違う結果をもたらしてしまうのです。功なり名をとげた人達は、「努力をしようにも何をしてよいのか分からない」状態にはあまり陥らないものです。つまり高度なレベルの世界では「努力」と「才能」は対立概念ではなくなってしまうのではないかと思うのです。

無差別級である大相撲で、この関取としては184cmという小さな横綱は、2メートルを超す体力という才能をもつ琴欧洲や把瑠都に勝ち続けているわけです。これは「けいこ」という努力によってのみ克服されたものだと言い切れるでしょうか。相撲以外は親方やお上さんにまかせっぱなしの他力士とは違い、群がる周囲の海千山千の輩を捌ききる朝青龍の人たらしの力は取組みへの工夫、仕掛けとしてしっかり反映されていると思います。

2場所連続休場(謹慎)へ追い込んでも優勝。「品格」「けいこ不足」と言葉でもプレッシャーを与え続けても優勝。次なる手は初場所で「もう一度やったら沙汰がある」といわれたガッツポーズをネタにゆすりますか。

すでにひまわりな月見草

2009-09-25 | スポーツ
4位以上が5割を越えているパ・リーグ。リーグが違う以上比較はできませんが、セリーグの3位以下のふがいなさが強調される成績を維持しています。

今、勢いがあるのは楽天、西武です。日本を代表するピッチャーが2人もいる楽天(岩隈、田中)、西武(涌井、岸)がここにきて調子を上げているのは、日本シリーズで巨人がきても中日がきても、少なくとも二人で3勝は計算できるという意味で頼もしく、勝ち上がって欲しいチームです。

楽天はピッチャーに柱があり、打撃は一昨年あたりからずっと好調なチーム。勝ち癖がついていないだけで、結構いいチームなのですから勝てないのは、ひょっとしてこれは監督の責任? と思ってしまうほど戦力は充実しているのです。楽天は負けている方が自然という同調圧力でもはたらいているかのごとく、野村さんのコメントが負け組の悲哀として取り上げられてきましたが(これは決して相手を油断させる戦略ではありません)、これで優勝もしくは日本シリーズ出場がないのは、ほんとはおかしいのです。

左がでてきたら左とか細かくオーソドックスな戦法といい、マスコミを通した選手への叱咤激励といい、いまや長嶋さんよりひまわりな存在である野村さん。そろそろ指導者としても引退してもよいのかもしれません。

八ツ場ダムという墓標

2009-09-24 | 政治
「ゲッタウェイ」というスティーブ・マックイーン主演の映画は、「これだけ悪いことをしたのに、ハッピィエンドなんてふざけんな」とクレームがつき、ラストシーンの遠くに見える電信柱の十字の形は彼等の不幸な死を暗示しているのだ、などとクレーマーに解説したそうです。

すでに予算の7割が消化されているといわれている割に、ダムっぽさをちっとも感じない八ツ場の風景を見て、「ゲッタウェイ」の墓標としての電信柱を思い出しました。

賛成派、反対派、それぞれいい分はあるでしょう。利害関係の当事者というものはそういうものですし、御用学者によって裏付けられるデータも立場が変われば、それなりのものになります。水掛け論はこれからも繰り返されるでしょう。無駄な公共工事を非難しながら、田中康夫が「脱ダム宣言」をした途端、敵に回った朝日も地元の悲哀を伝える方に回りました。

地元の老人ばかりの代表者は、生活が継続的に補償されさえすればよい、というので主張の主旨であれば、工事をストップしつつ、観光地として維持できる、「前政権の無駄のシンボル」として、寸止めでこのまま残す方法があります。巨大建造物はオタクの心をくすぐりますし、全国区となった八ツ場の名前が呪いのように引き続き自民党を苦しめ続けることになります。こんなことになった関係者の像を建てて、ボウガンの的にするのもよいかもしれません。初めて経験する政権交代とはこういうものなんだ、という教訓としても有効でしょう。

それにしても「ゲッタウェイ」のアリ・マッグローはあんなにチャーミングだったのに、「ある愛の唄」ではなぜにあれ程散々に不細工なんでしょう。活かすも殺すも所詮は監督次第。一方で無駄なダムといわれたこのプロジェクトに対する印象も、日本の土地・風景に対するリスペクトを失った人々の哀れな末路を見る、といったところです。部外者は実に気楽でよいっすね。

アンチ巨人の困惑

2009-09-23 | スポーツ
とりあえず、セリーグのペナントは巨人の優勝が決定、あとはクライマックスシリーズの最後のチームにどこが入ってくるかが焦点となります。いずれにしろ5割を切ったチームですから、「日本シリーズ出場資格」も問われようし、短期決戦を勝ち抜くような勢いもなく、優秀な監督を戴いているわけでもないので、中日・巨人と勝ち抜くのは難しそうです。個人的には若い投手の多い広島に大舞台を経験させてあげたいのですが、阪神もここにきて先発のコマが揃ってきており、予断を許しません。

さて、優勝した巨人ですが、運気が人生最高潮にある監督以下、谷は素晴らしいし、阿部こそは打撃の天才、ベテランの小笠原とラミレスの安定感、坂本、亀井、松本らフレッシュな人材の健気ながんばり。そして3チーム分を集めたような抑えの選手層の厚さ。貯金40以上というばかげた数字を残して優勝というのもうなずけます。失敗を重ねたFA中心主義の反省と、選手だけではダメだとコーチも補強、いい加減懲りたスカウトの洗練もあったのでしょう。

しかし、マジック1で迎えた試合の先発はオビスポ。ホームゲームのこの大事なハレの舞台でオビスポ。オビスポWHO? MVPは普通に考えて14勝を挙げ、防御率2.07のゴンザレス。去年ヤクルトを首になったゴンザレス。ゴンザレスWHO?

巨人に巨人を見出せなくなってしまう昨今、アンチ巨人も非常に困っております。

岸辺のアルバム

2009-09-22 | アート
TBSチャンネルで終日、山田太一の「岸辺のアルバム」を放送していたので、仕事をしながら、ちらちらとですが最後まで見通しました。野外ロケが多く、昔の多摩川沿いや小田急線の駅、渋谷の街並が映し出された映像には、知ってる場所がいくつもありました。

「岸辺のアルバム」とは「家族の肖像」のようなもので、現実の生活にリアリティをもてない人達で構成される家族の理想を定着させただけの写真アルバムのことです。お話は家のことしか分からない母親と長男を求心力に、いつかでていく娘と外の情報にだけたけている父親を遠心力として始まり、主客転倒を繰り返しながら進みます。

山田太一の視線は、常にこの家族四人を突き放し、誰を贔屓にするでもなく中立と公正さを保ち続け、ハッピーエンドさえ与えていません。この作風にテーマソングのジャニス・イアンの自分すら突き放したように歌う「ウィルユーダンス」が響きあい、作品として記憶に残るものになっていました。

黒澤明の「隠し砦の三悪人」や「椿三十郎」すらリメイクされる「恐れを知らない」業界ですが、この作品に手を出す勇気はあるでしょうか。

大相撲秋場所展望

2009-09-20 | スポーツ
今回は青昇龍のスキャンダルもなく、何のまえぶれもなく始まった印象がある大相撲秋場所です。中日までに白鵬、琴欧洲が伏兵にあいついで破れ、それぞれ1敗を抱えるという意外な結果となっており、しばらくはおなじみの展開になると思い込み、すっかり油断していた私も慌ててしまいました。

ただ、日馬富士、稀勢の里も年間を通して勝ち続けるにはまだ馬力が足らず、やはり両横綱と上位に2大関1関脇を揃える佐渡ヶ嶽部屋が中心の土俵が続くと思われ、勢力図に大きな変化はなさそうです。

今場所の注目は琴欧洲を破った鶴竜です。この人は工学系の大学教授の父をもち、モンゴルでの相撲経験がないという変わり種。甘えん坊の子供のような顔のせいで貫禄はありませんが、非常に頭脳的な相撲をとり、技能賞も3回もらっています。日馬富士に絵画の趣味があるように、知的で文科系の関取の活躍はうれしいものです。

ちなにみわれらが安美錦は例によって三役になった途端1勝6敗という、いつものペースでやっております。

ジョンレノンは平和の使者?

2009-09-18 | アート
リマスターBOXセット発売に伴うビートルズのアルバム・シングルの人気投票がヤフーで行なわれていて、結果がでたようです。シングルではベスト10に「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー」や「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」が入っていたり、アルバムでもリリカルな「ラバーソウル」が「レットイットビー」を抜いて4位に入っていたり、20年前なら考えられない渋いランキングになっておりました。

「抱きしめたい」や「シーラブズユー」など、ストーンズなら「サティスファクション」「ジャンピングジャックフラッシュ」に当たる初期の名曲はスルーされ、バラードが人気の中心となり、ますますビートルズのロックンローラーとしての側面は忘れ去られようとしています。

特に死後、オノヨーコの熱心な平和活動によって、ジョン・レノンはほとんど「平和の使者」のような存在に祀り上げられ、彼のネガティブな部分にまったくスポットが当たらなくなり、若い人にハードな曲(例えばコールドターキー)を聞かせたりすると「ジョンってこんな曲も歌っていたんだ、びっくり」となるケースも増えているようです。「だいたいやなあ・・・」と説教のひとつもしてやるべきですかね。

私は好きな曲と言われれば、「ハッピネスイズアウォームガン」や「フォーノーワン」を挙げますが、決してベストだとは思いません。いいと思う曲と好きな曲は別だったりもするのです。この投票結果はいろんな人が逡巡しながら投票したんだなと思われ、それはそれで面白いものですね。

記者クラブ、全面開放ならず

2009-09-17 | 政治
と、いうわけでございまして、昨日の総理・閣僚記者会見では記者クラブ以外の人間は(少しの外国メディア・雑誌は容認)締め出されることになり、「記者クラブ開放」の公約は反故にされ、初日にして最も肝心な問題に対する約束は果たされず、終始、形通りのつまらない質問が繰り返されました。

ただ、フランクな鳩山氏自身はオープンにしたかったそうでコダワリはなく、今後序々にオープンになっていく可能性は残されています。生中継の入る会見で記者クラブ問題を取り上げられてはカナワンという、あちこちからの必死なプレッシャーもあったのでしょう。ただ首相の意思が反映されないのは怖いことで、まだまだ官邸掌握には時間がかかるということでもあります。

あれだけの記者がいながら大手新聞社ばかりが質問の指名がされたのは、同じ会社の人間が重複して入っているせいで、朝日新聞など10人以上の人を入れていたそうです。質の高い質問を担保するためには仕方ないとでもいうのでしょうか。これでは建設談合も非難できないことになります。

1社2名までにすれば、官邸のスペース(希望者全員が入れないとか)の問題は解決するし、今はないセキュリティチェックをしっかりやっていけば靴を投げる人はいるかもしれませんが、撃ったり刺したりする危ない人も防げるでしょう。

せっかく政権側が官僚作成の文書なしで応答しているのに、ステロタイプの質問しかできない愚かな記者たちはまだ政権交代についていけていないようですから、ここはひとつ入閣しなかったこの問題に詳しい田中康夫氏とか、乱暴でアピール力のある田中真紀子氏あたりに蛮勇を奮っていただいてはいかがでしょう。

記者クラブ制度で最も恩恵を受けているのは不思議なリークを匿名で繰り返す官僚です。脱官僚を旗印にするなら、民主党はここから始めなければいけないはずなんですがね。

記者クラブ解放ならずか

2009-09-16 | 政治
鳩山(宇)さんは駄洒落が好きでさらに自虐ギャグが多いのに、今回の組閣に関しては口が硬いそうな。マスコミからは様々な情報が流れてきますが推測の域を出ず、肩書すら明らかにならないところをみると、お調子者が今回ばかりは真面目にやってるという様子が伺えます。

今日にも人事は終わり発表される段取りですが、なにしろ気になるのはその発表の場となる官邸での「記者クラブ」問題。鳩山さんも小沢さんも「開放」をはっきり約束したのですが、民主党本部と官邸とは違うなどと、この後に及んで態度が定まらないようで、フリージャーナリストや外国メディアはデモでもしようかという勢いで怒っているとか。大手メディアは不利益な事柄は無視するので、国民も政治家もその事実を知らされていないので、懸案としてクローズアップできないのがこの問題の深刻なところです。

確かに発足したばかりの政権としては、故人献金問題や西松問題で大手マスコミを敵に回し、世論を誘導されてはたまらんのでしょうが、それはそれ。「記者クラブ開放」を確約させた上杉隆氏があちこちから陰湿ないやがらせを受けているという事実もあり(上杉氏のブログから)、こんな慣習(ただの慣習なのです)はとっとと石原都知事のごとく一蹴してほしいものです。

サラリーマンNEO シーズン5

2009-09-15 | アート
暴走といえば小島慶子ですが、そんな彼女も見ているという、サラリーマンNEOが暴走しはじめました。不条理もOKでありながら、新たに不景気というテーマを得たスタッフがいきいきとしていて、霊感商法すらネタにする、これでもかと様々な要素をちりばめた笑えない心理劇コントを繰り返しております。

コントをやっておいてコントを解説・解体するという、キングクリムゾンのリリカルなアルバムを出した後にテレコで録った乱暴な「アースバウンド」を出すという姿勢とも重なり、コント自体がそもそも批評解体的要素を最初から内包してしまっているにも関わらず、貪欲にコントを纏った風刺を追求するコンセプトは、いまやお金をかけたコント番組として唯一無二のものとなりました。

男優はあせって額に汗の似合う人達、女優は気が強くしたたかなのが持ち味の人達を配すことを徹底し、3~4でみられた中だるみのマンネリ感がなくなってきたシリースの今後が楽しみです。

ちなみに私はサラリーマン体操のピアニスト、石渕聡が好きで、彼が紹介されるシーンのキメのポーズを毎回楽しみにしております。

さよならアメリカ、さよならニッポン

2009-09-13 | 政治
鳩山ユッキーの論文がアメリカで「不用意」に公開され波紋を呼んでいるそうな。インド洋の給油活動停止を明言していたこともあり、日米のコンセンサスの不安定さが今になって蒸しかえされております。

論文の印象はかつての「大東亜共栄圏」構想に「近い」(あくまで似てるだけ)もので、アメリカ発の不況からブロック経済、大戦へと至ったシナリオを彷佛とさせ、記者クラブ問題でビビる大手マスコミにも取り上げられることも多く、さらに国益の観点からアメリカの御機嫌を損ねるということもあり、不評のようです。

ただ、アメリカでは日本で報道されるほど大騒ぎしている様子はなく、鷹揚に構えているようで、二重権力批判同様、政権交代に対するマスコミの哀れな動揺として、古い体質と報道姿勢がむしろ浮き彫りになっています。

また、アメリカにもの申すといった姿勢を評価する識者もおり、なんともはや、日本が枯れたのはグローバリゼーションのせいだという間違った認識が定着してるようで、これもまたヤレヤレといったところです。

ポピュリズム同様、自由主義も通過儀礼でいつかはおこることですので、経済優先が日本を解体したのは間違いないとしても、それをどう対処、処理するのかは社会の力量なのです。

問題は鳩山さんのこの単純なで浅薄な図式で捉える世界観ではなく、どういうわけかこのトラブルの元となる論文(口述?)が、漏れてしまったというか、掲載を許可してしまった側近・スタッフのゆるーいセキュリティにあって、今後の官邸の情報・印象操作に対する不安にあります。

就任までネタを切らさない「ためにする」もめ事なのか、図々しい社民・国民新党という図式も演出なのか。とにかく初めての政権交代、政権そのもより周囲のリテラシーにも興味が注がれます。

王貞治とイチロー

2009-09-11 | スポーツ
イチローの9年連続200本安打という大リーグ新記録の更新がまもなくです。大リーグでの2000本の安打のうち、内野安打が4分の1とか、単打が多いとか、大記録を揶揄する人も多いのですが、野球に内野安打というルールがある以上それは美意識の違いに過ぎず、だからといってイチローの記録が色褪せることはありません。

また、昔の日本の130試合で200本を打ち続けるのは難しいとか、試合数に対する記録の意義を問う人もいます(イチロー自身も言ってました)。しかしアメリカには時差があり、移動も長距離となり、その体調管理の難しさは日本の比ではない以上、試合数の多さはむしろ負担です。

同様に王貞治氏の本塁打の世界記録もまた、「日本の小さな球場だから」と大リーグとの比較を避けられます。王さんほどのホームランバッターは、ただやみくもに遠くに飛ばすことを考えているとか、ホームランはヒットの延長に過ぎないという認識の打者とは違います。狭い球場ならそれはそれで、広い球場ならそれもそれで順応・工夫し、求められる結果と自らの能力と照らし合わせながら、ここまでやればこの球場ではホームランが打てるという見切りをもってホームランを打っていたのではないでしょうか。

アメリカに渡ってホームランを諦めた松井秀喜が、謙虚に自分を限定し諦めることによって、有能ながら平均的なプレイヤーにモデルチェンジしてしまったように、「俺はホームランでいくんだ」という強い気持ちと意志がなければ、球場が狭かろうが広かろうが、記録は生まれません。ホームランは狙って打つものなのです。

イチローは「記録」を常に意識し、さらにそれを実現するというとんでもないアスリートです。トップレベルを維持し続けるという難しさを知っているという意味でも、13年連続ホームラン王の記録をもつ長距離砲の王さんに並ぶ実存をもった選手です。

負けることによる収穫もない

2009-09-10 | スポーツ
後半、はっきり試合をやめたガーナに勝ってうれしそうな岡田監督は、日本が負けている試合を見て文句をいうのが好きな私にとって不愉快そのものでした。岡田氏は不細工な上、声ももごもごしている典型的ないじめられキャラなので、誰もがサディズムをくすぐられます。それに森喜朗か総理についた時のような経緯で監督についた暫定感がいまだに拭えず、せっかく出場できるW杯を協会がなおざりにしているようで続投は残念、解任への世論も盛り上がりません。

移動を含む中二日の相手に大量失点し、動きの止まった相手にロートルの活躍で逆転と、カウンター対策も流れを読まないやみくもな攻撃への反省もないままのチームをどう評価すりゃいいんでしょうか。長友の成長以外収穫がない上、今後この間違った勝利が代表強化へ影を落とすことは、岡田監督の表情から見て間違いなさそうです。

「スーダン戦後、移動もあってチームは疲れていたが、それは言い訳にならない。日本はとてもいい戦いを見せた」とガーナの監督が余裕のコメントをしていました。日本は必死になって今のベストを尽くしましたが、ガーナにとってこれはエキシビションマッチなのです。

それにしてもガラガラの会場、日本のスポンサーばかりの広告と、試合以外の要素ばかりに目がいってしまいました。代表にとっても、見る側にとってもそれくらいお寒い内容だったのでしょう。

サッカーと外交

2009-09-09 | スポーツ
日本にとっての外交とはアメリカが対象であり、次に東アジア、3、4がなくてロシアと続くのですが、先進国の関心事は常に中東にあります。インド洋の給油問題など政争の具程度に考える余裕(?)のある国会を戴くということもあり、日本にとって中東は石油を依存しているにも関わらず関与への優先順位としては低く、ヨーロッパ諸国が北朝鮮に関心を払わないように、日本も実感をもって論点にあげることはありません。

これはサッカーにも言えて、日本国内で優雅で感傷的な試合をし続けていられるのは、トップレベルの実感としての情報が欠如しているが故で、そういう意味でいえば、地の利であらかじめ(圧倒的に)不利ということになります。

日本サッカーがダメなのは、サッカーに向いていない国民性であると言い切る人も多いのですが、Jリーグバブルの頃、ジーコを始めポンコツながらセンスを持つ選手を数多く獲得することによって飛躍的にレベルアップすることができました。一流選手と触れること、海外経験豊富な監督、コーチからもたらされる技術とセンスをもった指導、そして強力なライバルの存在がなければ選手は育ちません。つまり今は情報が足りないのです。

ただ、今や不況まっただ中の日本に、かつてのような往年の一流選手(今だったら例えば、ベッカム、トッティ、デルピエロなど)を呼ぶ余裕はありません。そうすると出口としては思い出されるのがオシムの言葉、「日本人の日本化」です。しかし岡田監督のチーム作りは「日本人の韓国化、欧州化」です。ベストを尽くせば敗戦の責は問わない日本人におもねる、という意味では、日本人らしい戦略かもしれませんが、このままだと展望はみえず、30年くらいたった後に、「日本代表の一番強かったのは中田のいた頃だな」ということになりかねません。

日本外交の一番良かった頃は、経済が一番良かった頃だとすれば、日本人は常にお金次第という烙印をおされても仕方ありませんね。戦略はフィットすること、戦術は二の次だと、いつになったら気付き、実践できるのでしょうか。