長電話

~自費出版のススメ~

コント55号ホームラン

2013-09-05 | メディア
ヤクルトスワローズのバレンティン選手のシーズンホームラン新記録更新の可能性から、記録阻止に走ったと言われる日本球界の過去の忌まわしい記憶が蒸し返される様子をみて、A級戦犯靖国合祀や、従軍慰安婦、南京大虐殺など、国によっては定着してしまった近代史を思い出すのは私だけではないでしょう。

日本人が誇る王さんの記録は、昭和39年、東京オリンピックの年に達成されました。高度成長期の入り口であり、敗戦を克服し世界にうってでるタイミングと重なります。キタの人である力道山や台湾国籍である王さん(あるいはロシア人との混血である大鵬)という、戦前は日本人であった旧日本人の活躍によって我々は鼓舞され、頑張ればなんとかなる、という当時を疾走していたのです。

王さんの記録を破る可能性のあった選手は3人、ランディ・バース、近鉄バファローズのタフィ・ローズ、西武ライオンズのアレックス・カブレラです。

その3人の記録を調べてみますと、バースは最終戦(対巨人)こそ敬遠気味ではありましたが、ダブルヘッダーだった昼間の試合では(怪物といわれた)江川投手が真っ向勝負していますす。ローズもカブレラも55本を打った時点で残りは5試合あり、全てではないにしろ、相手投手は普通に勝負を挑んでいました。

つまり、記録阻止のための過剰とまで言えるほどの敬遠責めは「無かった」し、そこそこあったとしても新記録へのチャンスはある程度開かれており、ルールにのっとった「汚いやり方」は全面的に展開されていたわけではありません、そして残り試合を数える段階での戦略は開幕当初とは違って当たり前なのです。

チームプレーを強調する野球というスポーツなのに記録に拘ってしまうのは、より個人記録に拘らないメジャーリーグでもロジャー・マリスの61年のHR記録更新が久しく参考記録になっていたがごとく、それぞれの国民の矜持からくるものなのでしょう、どの国にもあることです。

現在マスコミでは、バレンティンのHR記録に対して当時あったと言われるこうした「記録阻止」への動きが大げさに言われ歴史的事実のように言われています。大きく言えばそれほどでもないこと、小さな敬遠が強調されることで、ほんのちょっと前のことであっても、印象として大きく歴史に刻まれるのは、本当に怖いことです。

野球のように、事実がすべて記録として残るスポーツであったとしてもこの体たらくなのですから、言説に色がつけば、どんなことでも常識や節度をひっくり返し、さもあったかのように事実が脚色されてしまうことに、驚くような余地はないでしょう。

別に構わないのです。HR55とか、南京虐殺30万とか、慰安婦10万連行とか・・・。それはゲームなのです。