長電話

~自費出版のススメ~

失言実行内閣

2010-11-20 | 政治
マスコミの、前後の脈絡や発言した状況などを無視して、言葉尻だけを捉え批判をうながすという、繰り返されるこの珍奇な現象が現政権にも見られだし、民主党もまあ与党らしくなったもんだと感心しております。

古くは森氏の「神の国」、柳沢氏の「女は生む機械」、麻生氏の「アルツハイマーでもわかる」、などにぎやかですが、いずれも上記のように、どれも軽口で大した悪意もない他愛のないものです。

仙石官房長官の「自衛隊は暴力装置」発言も、政治用語ではないので、法律を扱う国会の場では不適切といえばはそうなんですが、彼の左よりのインテリたる経歴を彷彿とさせる、微笑ましいものです。

たしかに、国家=階級的暴力装置というマルクス主義的印象をいまだに引きずること、また「装置」とか「制度」という言葉使いもなかなか国会においてはセンスのないもので、政治的に利用されても仕方のないものです。そしてセンスは実力と直結するものでもあります。

そして、さらに、それがゆえに柳田法務大臣の「二つの答弁さえ覚えておきゃそれでOK、楽なもんよ」です。さすがにこの発言はいただけません。なぜなら、実際彼はこの発言を実行しているからです。

ユーチューブにもこのうすらトンカチの国会での間抜けで愚かな様子が数々アップされており、特に、自民党の石破氏の「起訴法定主義」と「起訴便宜主義」に関する投げ掛けに対するすっとこどっこいな答弁は、菅総理の失笑音も入っており、誰もが「これは・・・」と思えるものになっております。

彼自身「法務畑は初めてで何故私が選ばれたのか分からん」とのたまっており、参院会長の輿石がねじ込んだ自民党的図式で就任したという経緯を考えると少々気の毒ですが、検察に問題を抱え、さらに尖閣を国内問題と捉える現政権の法務のかじ取り役として不適格であり、国辱的な無知であることには変わりなく、国益を損ねていたこと、これからも損ね続けることは明らかであり、更迭を補正予算通過へのカードにする、なんて悠長ななことを言っている場合ではないのではないでしょうか。

マスコミは、自民のあの貧相な幹事長みたいに「煽る」だけのテレビ向け質問だけにスポットを当て、この法匪大臣の無能さが明るみになる石破さんとのヤリトリはいっさいとりあげず、やり過ごしていました。(それ以前に石破さんの検察に関する質問と持論も相当重要なものでしたが、もちろんスルーされました)

国会の場ですでに明らかだったのに、具体的な失言っぽい発言があるまで、醜悪な大臣に気付かず、非常時にその能力を問わず、失言さえ出れば自動的に批判しはじめる同様にポンスケであるマスコミもそうとう傷んでいるようです。

中立・公平が走り始めるとき

2010-11-17 | アート
月曜日の「モリのアサガオ」金曜日の「SPEC」。これが私の今クールのドラマのルーティンです。いずれも、ちょくちょくコメントをくださるシオシオさんのオススメということ、男優に間違いがないということで見始めました。

「SPEC」の方は女優に難があって、見続けるのは少々負担ではあったのですが、先週の回(第5話)は、アクションが充実しており、メインストーリーにいよいよ取り掛かったなという様子に、テレビにしては随分お金のかかった演出もあって、それはそれで楽しめました。

両ドラマとも、偶然のイタズラという作用の強い、どうしようもない悲劇的な事実を、公的な支援や判断に頼らず、「どう解決するか」ではなく、「どう折り合いをつけるか」がテーマになっており、テレビ局、スタッフともに、よくもまあこんな面倒くさい話を引き受けたもんだと思います。

当事者が常に価値相対化をしてしまう「宇多田ヒカル」や「椎名林檎」も内包するテーマ。「離人症」の傾向のある人間にとって、このような鳥瞰的なドラマは快感です。

ドラマには、最初はつまらなくても、途中でいきなり「ドライブ」しはじめることがありますので、油断できませんね。

われ、いまだ木鶏たりえずとも

2010-11-15 | スポーツ
横綱白鵬は、九州場所2日目で稀勢の里と対戦し、初場所13日目の魁皇戦以来の敗北を喫し、連勝記録が63で止まりました。初日さえクリアすれば、終盤まで上位陣との取組みはないということで、勝った結果、7日目で達成される双葉山の69連勝の記録更新は間違いなしと言われていただけに、大いに驚いてしまいました。

会場に足を運ぶ相撲ファンにとっても、マスコミにとっても、もちろん私にとっても、プレッシャーのかかる6日目から中日にかけてが見所と考えており、今場所の焦点をそこに備えていたので、すっかり油断していました。

しかし、平日の月曜日という何も特別なことは起こらないはずの日常、他愛のない、週の始まりという以外、なにもない日に事件は起こったわけです。それは土俵を去る白鵬の背後に映るがらがらの観客席に、我々の呑気な姿勢がみてとれ、さらに『油断』を強調していました。

平幕とはいえ、稀勢の里や栃煌山、安美錦など「かつての」大関候補がひしめく関取の意地もありますし、また、どれだけ強かろうか「連勝」というものには、ノーヒットノーラン同様「偶然」というファクターがある以上、いつ負けてもおかしくはありません。「強い」から記録を達成できるというものでもないはずです。

中日やイチロー同様、白鵬は色気を感じない強さでひとり勝ちを演じ、朝青龍なきあとの相撲人気の低迷に一役買ってきました。白鵬さえいなければ戦国時代を演出できるのに、と臍を噛む向きにとっては、溜飲を下げる事態でもありましょう。

白鵬は破れた後、飄々と「ま、こんなもんでしょう」と言いました。悔しさももちろんあるでしょうが、それは双葉山の悲劇の匂いのする求道的シリアスさとは違う、現代っ子らしいそのセンスで、周囲の期待を置き去りにしながら「連勝」に対するこだわりの少なさを明かしています。

その態度は連勝は止まったとはいえ、白鵬は目指す木鶏とは違う「軽み」のある悟りの境地にいるのでは、と感じました。双葉山は連勝が止まった後3連敗し、大鵬は発熱で休場しています。

さて白鵬の連勝への反動はどう出るでしょう。あるいは明日からまた日常が始まるのでしょうか。

現実感のないゲーム

2010-11-08 | スポーツ
中日が日本シリーズでロッテに破れ、「完全な優勝」は今回も果たされず、プロ野球の今シーズンが終わりました。

「相手が強いかどうか判らない」と優勝を逃した落合監督は言いました

新人でいかにもB級の監督に率られた、ロッテの印象は相撲でいうと「平幕」。せいぜいが「小結」。優勝はラッキーな平幕優勝。私と落合監督の印象は変わりません。それは手応えとともに結果は「悔しい」ではなく「残念」。つまり問題は相手ではなく、中日にあったということです。

ま、それはさておき、

山岸涼子の「日出処の天子」で自分でも自分を救えない者が仕方なく見る幻視について「それが≪信じる≫ということなのか」と珍しく逡巡する(うろ覚え)というシーンがありました。

合理性だけを追求し、なんに対しても「愛情」をもたないという自覚がある人間にとって、敗北の事実を受け入れられないこういった感覚は、もしかして自分は「中日ファン」かと、あるいはそれなりに対象に愛情のもてる人間なのか、と疑い、これは感情的な現象だと思い、少々笑いました。