とうとう、出発させてしまいました。
稲田防衛大臣がたった7時間しか滞在しない中で、「落ち着いた状態」だと太鼓判を押し、
安倍首相が「戦闘ではなく、ただの衝突」だと詭弁を弄しても、
政府の主張を妄信せず、少しでも他からの声に耳を傾ければ、
南スーダンの状況がどれほど混乱しているかは
世事に疎いこの私にでも分かります。
2011年に独立したばかりの南スーダン国の国づくりを支援するとして
日本政府は2008年から自衛隊を国連指揮下のPKO部隊として派遣してきました。
(当初は2名だけ)。
しかし、はじめの活動目的は国連施設の整備や道路補修、
国際機関の敷地整備など、情報・インフラ整備だったはずなのに、
今回、日本政府はPKO平和維持活動の範囲を遥かに逸脱した「駆け付け警護」などと、
軍隊でもない自衛隊員に危険極まりない任務を与えました。
南スーダンでは今年7月、約300人の死者を出した「衝突」の時期に、
国連やNGOの職員たちがビル内に立てこもっていたのを襲われて、
女性職員たちが何度もレイプ、暴行され、記者1人が殺害される事件も起きました。
しかし、なんと襲った暴徒たちは
「南スーダン政府軍の制服を着た兵士たち」だったというのです。
これは、一体どういうことなんでしょう。
国造りの手伝いのために派遣された自衛隊員は、NGOや民間人を守るために
南スーダン政府軍と戦う可能性もあるじゃないですか。
こんな敵味方が分からなくなって混乱している状況にすっ飛んで行ったら、
内戦に参加することになりかねず、
即ち、それは当初の目的とは全く異なる「戦争参加」になっていまいます。
下の二つの興味深い記事で、
1:PKO部隊が南スーダンで何かできるような生易しい事態ではないこと、
2:そもそも、南スーダン人の多くは国連PKO部隊を「外国の介入・国家侵略」と見ていること、
を確認することができると思います。
CNN.co.jp 『AP通信や人権団体のヒューマン・ライツ・ウォッチが15日に伝えたところでは、事件は南スーダンで大統領派と副大統領派の衝突が起きていた7月11日に首都ジュバで発生。外国人職員などが滞在していた施設が、制服姿の南スーダン兵80~100人に襲撃された。
同施設の周辺では数日前から衝突が続いていたが、11日午後3時ごろ、兵士らが鉄鋼製の扉を1時間以上にわたって銃撃して2階建ての建物に侵入。現金や貴重品の略奪を始めた。
米国人女性によれば、浴室に隠れた約16人は、国連や大使館に電話やメールで助けを求め続けたという。
しかし兵士らはドアを破って室内に乱入し、女性を1人ずつ連れ出して暴行。米国人女性は自動小銃で殴られ、銃口を突き付けられて脅されたと話している。
国際機関職員の別の女性も、ほかの数人の女性と共に、複数の男に何度も強姦されたと証言した。
援助団体のフィリピン人男性職員はベッドの下に隠れ、室内を荒らし回る兵士たちを目撃した。兵士たちは「お前たち外国人がこの国で問題を起こした。これはアメリカ人が南スーダンに対してやったことだ」と主張していたという。(中略)
目撃者らの話では、襲撃された施設の近くには国連の拠点があり、国連南スーダン派遣団(UNMISS)は同施設から何度も救援要請を受けたにもかかわらず、対応しなかったという。このため救助は民間警備会社や南スーダン軍に頼らざるを得なかったと目撃者は話している。
一方、UNMISSの広報は当時の同国の状況について、「極度に困難かつ予断を許さない治安環境」にあり、「危険にさらされた人員の救助を実行できる能力に重大な限界があった」と説明。UNMISSは事実関係や経緯について調査に乗り出すと表明した。』http://www.cnn.co.jp/world/35087633.html
また、ニューズウィーク日本版には別の詳しい記事もあります。
こうなったら、もう何が何だか、どちらを向いて誰と戦うのかさっぱり訳わかりません。
南スーダンで狙われる国連や援助職員10月12日 19:30
<日本の自衛隊もPKOに参加する南スーダンでは、国連職員や外交官、援助職員らが政府軍に襲撃される事件が相次いだ>
エジプト人のハレドは、国連のマークが入った白のトヨタ・ランドクルーザーに乗り込むと、滞在先のエジプト大使館へ急いだ。時刻は午後8時15分を過ぎたところ。外は雨が降っている。大使館へと続く最後のでこぼこ道に入ると、暗闇の中を行き交う歩行者を避けるため、車は速度を落とした。
大使館の入り口まで約25メートルの地点まで来たとき、通りの向かいのパノラマ・ホテルに設けられた軍検問所から、私服の男が突進してきた。車の助手席側から銃弾が浴びせられ、ドアや窓を貫通する。銃弾4発の欠片がハレドの左脚や腕、手に突き刺さった。
敵も味方もわからない
アクセルを踏み込み、なんとか大使館の入り口ゲートをくぐり抜けた。車内には割れたガラスが散乱していたが、これでひとまず安全だ。しかしその後2時間、検問所の南スーダン治安部隊はハレドの救護に駆け付けた国連の救急車に銃を向けて追い返したり、PKO部隊がジュバ中心部にある国連施設内の診療所にハレドを運ぼうとするのを妨害した。南スーダンの大統領警護隊が介入し、治安部隊を説得してハレドを診療所に運ばせてくれたのは、夜も10時を過ぎてからだ。
ハレドが生き延びたのは「奇跡だった」と、ある国連職員は言う。
この事件は地元メディアで報じられたが、駐米南スーダン大使は知らないと回答。ユネスコは事件の容疑者についての推測を差し控え、調査中だと米フォーリン・ポリシー誌に語った。だが、ある米国務省当局者と国連当局者は、南スーダン政府軍がハレドを銃撃したのは間違いないと述べている。
7月7日のハレド襲撃は、南スーダン政府軍による一連の外国人襲撃事件の端緒を開いた。1時間後には、南スーダン大統領サルバ・キールの警護隊が、外での食事から戻るところだった米外交官7人と南スーダン人の運転手に向けて発砲。ハレド救護のために検問所の治安部隊と交渉したのと同じ大統領警備隊が、である。
さらに4日後、80〜100人の南スーダン政府軍がジェバのテレイン・ホテルを急襲し、同国のジャーナリスト1人を処刑、5人の援助団体職員を集団レイプした事件があった。アメリカ人が選び出されたという。
国連安保理の専門家パネルが先月まとめた報告書は、「(テレインでの)襲撃を境に、南スーダン兵士による国際援助団体職員攻撃の残忍さが増した」と結論付けている。「犯人らはよく組織されており、偶発的な暴力・強盗とは考えられない」
国連にとって厳しい現実を象徴する事件だ。2011年7月にスーダンから分離独立した、世界で最も若い国家である南スーダンが内戦に陥ったのは3年前。以来、国連と南スーダンの関係は日増しに緊迫したものとなってきている。国際援助団体の職員や外交官らが今、まさに南スーダン政府軍の主要な攻撃対象となっているのだ。
政府軍と反政府勢力との戦闘が再燃し、事態が緊迫化した今夏以降、アメリカなど各国が和平を実現しようとしてきた。しかし紛争当事者である南スーダン政府が外国勢力に敵意を向け、最近ではPKO部隊や外交官を攻撃対象としたことで、戦闘終結は一層困難になっている。
PKO部隊を4000人増派しようというアメリカの計画に基づき、サマンサ・パワー米国連大使らが9月にジュバを訪問、増派受け入れをキールに認めさせた。
大統領より強い部族長老会議
ところがこの約束は、キールの出身部族であるディンカ族で構成する「ジエング長老評議会」の圧力で、あっという間に反故にされた。同評議会は長年、外国勢力によるいかなる介入にも反対してきた。7月18日にはキールの腹心であるアンブローズ・リーニ・ティークが、PKO部隊の配置は事実上の「宣戦布告であり国家侵略」に等しいと警告した。
さらに翌19〜20日には、ケニア、ウガンダ、エチオピアから新たに部隊を派遣するという国連の計画に反対するため、長老評議会が抗議集会を組織。ジュバから北方200キロに位置する都市ボルでは、国連南スーダン派遣団(UNMISS)施設付近で、4名の国連職員が抗議に参加した数人の若者から刃物で襲撃された。
安保理の専門家パネルは、キール陣営が故意に市民の間に排外感情をかき立てた結果、一連の武力衝突に発展したと指摘した。
「危険の及ぶ範囲が国連や国際機関で人道支援を行う職員まで広がり、被害件数も増加。暴力の度合いも増している。サルバ・キールを含む南スーダン政府の高官は、国連や国際社会に対して民衆の敵愾心を煽るレトリックを強めている」
ここ数カ月、国連職員は政府軍の検問所で殴られ、拳銃で撃つと脅されるなど、日常的に虐待行為に遭っている。戦闘が再燃した7月には、政府軍の兵士が国連世界食糧計画(WFP)の物流拠点で22万人の1カ月分に相当する食料を略奪し、被害額は3000万ドルに上った。
8月2日には出産間近の妊婦を搬送していた国連の救急車が、15カ所の政府軍の検問所で次々に足止めされ、医療施設への到着が当初予定より2時間も遅れた。国連の機密報告書によると、「赤ん坊は生まれた時すでに死亡していた」。AP通信が最初に伝えた。
その3日後には、自動小銃を持った南スーダン政府軍兵士が国連施設の外で車両を止め、2人の外国人職員に「言いがかりをつけて激しく暴行」、殺すと脅した。8月16日にも南スーダン兵が国連の事務所近くに設置された検問所で、国連車両に乗っていた運転手を電気コードで打ちすえたうえ、解放のために賄賂をよこせと脅迫した。
「7月にジュバで戦闘が起きて以来、国連職員を標的にした襲撃は、残虐さも、暴力が及ぶ範囲もエスカレートしている」と、国連の専門家パネルは報告書で指摘した。
もっとも当の国連も、武力衝突が起きた最中に市民の保護を怠ったとして、痛烈な批判を浴びている。7月に大規模な武力衝突が起きた際、中国のPKO部隊は数千人の市民が避難していた国連の保護施設の持ち場を放棄して逃走した。
7月にテレイン・ホテルで援助職員が南スーダン兵士に襲撃された事件では、現場から何度も救助要請を受けたにも関わらず、中国とエチオピアのPKO部隊が出動を拒んだ。南スーダンにおける国連の活動状況について調査した米NGO「紛争地域民間人センター(CIVIC)」が、今月5日に公表した調査報告書で明らかにした。』
http://news.goo.ne.jp/article/newsweek/world/newsweek-E178558.html
≪PKO部隊の配置は事実上の「宣戦布告であり国家侵略」に等しいと警告した。≫
・・・・・・国連は、南スーダンの国内では欧米の手先であり、
アフリカをめちゃくちゃにしたグループに属するとみなされているのですね。
そう思うには、それなりの根拠があるのでしょう。
そこを直視することから私たちはスタートすべきじゃないでしょうか。
それなのに、今日午前の産経ネットニュースでは、
「人々は【日本のために頑張ってきてください】と送り出し、
【笑顔で元気に】自衛官たちが出発した。日の丸の旗を振る姿も見られた」と。
これ、まるで、
「立派に死んで来いよ~!」と日の丸振って送り出した
あの忌まわしい戦争の時と同じではありませんか。
戦闘要員でもない自衛官を内戦現場に無理やり放り込み、
一人でも死者や怪我人が出たら、
「やはり、今の憲法では自衛官の命を守れません」
などと言って、憲法改定する政府のシナリオが余りにも露骨に見えるのです。
どこが「日本のため」ですか?
「安倍のため」と言い直してほしいです。
こんな、国民(自衛官は日本の民です)の命を犠牲にして当然だとする政府、
まだ支持を続ける人がいるのが、情けない・・・Σ(-□-;)