日記

Hajime

とても悪くない

2007年05月30日 | Weblog

地元にいる頃はよく夕暮れに海岸線を延々と走っていた

この時期、誰もいない日落ちの時間、波打ち際で私が見たものはそういえば大量のカマキリ
何百とも言えない無数のカマキリたちが防砂林から出て来て、ただひたすら波打ち際から夕日を見つめていた
私は目の前に広がるその光景がなんだかとてつもなく恐ろしくて、一匹のカマキリをそこに落ちていた棒でつぶした
その腹から一匹のハリガネ虫がうぬらうぬらと這い出したのである
もうそこら中に体を完全にハリガネ虫にのっとられたカマキリたちがただ狂気の目つきで落ちる陽を一斉に見つめていた


春と夏の間の季節といって強烈に思い出すのはその情景である
地下鉄も走っていない、高層ビルとも縁遠い地の誰もいないだだっ広い海岸線の夕暮れ時の事実
青々と、丸々と太った大量のカマキリがハリガネ虫に体を乗っ取られ、浜の防砂林からのそのそと這い出し、波打ち際に集まりうつろな目つきで夕日を眺める、その瞬間に出くわす


そこには誰もいなかった
彼とカマキリとハリガネ虫と波の音と日落ちの赤だけだった

それを強烈に覚えている

こちらの空はまだ薄く、むこうの空は深い夜の色が静かに広がっていた
ともに優しい空だった

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妹のブログにいくつか地元の写真が載っていているのを見て思い出した
とても悪くない
私の無意識的な思い入れと先入観を差し引いてもあそこは何か物語りのある場所だったと思う