Don't Kill the Earth

地球環境を愛する平凡な一市民が、つれづれなるままに環境問題や日常生活のあれやこれやを綴ったブログです

観ていない映画について語る(8)

2024年07月02日 06時30分00秒 | Weblog
 「性的不能と宣告された夫は妻に事実を告げる。夫を励ます妻だが実は妻には既に若い恋人がいた。
 40歳の外科医ロマンは、同業の友人から性的不能になったと診断され、若い妻であるハンカと別れるべきではないかとほのめかされる。夫婦は診断結果を話し合い、お互いに別れる気はないことを確認するが、実はハンカは若い大学生マリウシュと浮気をしていた......。

 「デカローグ9」は、「ある孤独に関する物語」で、モーセの十戒で言えば「汝、隣人の妻を欲するなかれ」に対応している(と思う)。
 これも例によってMovie Walker Press のあらすじの方が詳しい(ややネタバレ気味ではあるが・・・)。

 「中年にさしかかった心臓外科医のロメク(ピョートル・マカリカ)は医師に性的不能を宣告される。彼は妻のハンカ(エワ・ブラシュスク)に正直に打ち明け、別れてもいいと言う。妻は肉体関係だけが愛ではないと励ますが、彼はそれも愛だと答える。果してハンカには以前から物理学科の学生マリウシュ(ヤン・ヤンコフスキ)と情事を重ねてきた。妻は早くこの関係を清算しようとするが、マリウシュが逢引きの時に車のダッシュボードにノートを忘れ、ロメクはこれを見つける。ロメクは電話を盗聴して二人の関係を確かめて妻を尾行。マリウシュと会うアパートに張り込み、妻が若い男の肉体を貪る姿まで目撃する。ある日。ハンカはアパートの衣裳棚にひそんだ夫に気づく。なじる妻に彼は自分には愛される資格はないと答え、ハンカは彼を抱きしめる。二人は冷却期間をとろうと決めて、ハンカはスキーに出かける。だが、マリウシュが彼女の後を追ったのを知り、悲嘆に暮れるロメク。ハンカはスキー場で彼に会い、胸騒ぎがして夫に電話。入れ違いで彼は出かけた後だった。急遽家路につくハンカ。それを知らず涙を流しながら、工事中の道路を全速力で駆け上がり、つきあたりで転落するロメク。ハンカは家で置手紙をみつけ、後悔と不安に泣き暮れる。そこへ九死に一生を得たロメクから電話が。妻は夫の声を聞いて微笑んだ。

 現在の日本の裁判実務において、性的不能は十分な離婚原因となり得る。
 つまり、(倫理的に正しいかどうかは別として)、法的観点からは、性的関係は、婚姻の中核的要素と見なされているのである。
 なので、ロマン(映画では「ロメク」)が自ら離婚の話を切り出したのは無理もない話であった。
 だが、妻:ハンカは、
 「肉体関係だけが愛ではない
とロマンを励まし、離婚を拒絶する。
 反面、彼女はその裏で、物理学科4年生のマリウシュと情事を重ねていた。
 このハンカの不貞がバレる過程においては、古いダイヤル式の電話が活躍する(つまり、携帯電話が普及した現在では、このストーリーは成立しない)。
 すなわち、
① ロマンとハンカの自宅の居間にある黒電話(ロマンとハンカが使用)
② ロマンの部屋にある子機の白電話(ロマンが使用)
③ 空家となっているハンカの母のアパートの白電話(主にハンカが使用)
④ 街角の公衆電話(劇中ではマリウシュとハンカが使用)
の4台である。
 ロマンは、ハンカとマリウシュとの間の会話(①とマリウシュ宅の電話の間でなされる)を子機(②)で盗聴し、次の密会の場所と日時を知る。
 ロマンは、密会の場所:ハンカの母のアパートに張り込み、ハンカとマリウシュの交合をドアの外から覗き見る。
 その後、ロマンはハンカからアパートに母の物を取りに行くよう頼まれたが、車の運転席の下に落ちていたマリウシュのノートから、彼の電話番号を知る。
 ロマンは、預かった鍵を複製して合鍵を作り、次の密会の際は、何とアパートの中の箪笥の中に入って待ち伏せする。
 密会する二人だが、ハンカはマリウシュに別れ話を切り出し、彼を冷たく追い出す。
 すると、箪笥の中から嗚咽が聞えて来て、ハンカは不貞がロマンにバレていたことを知る。
 ここからの展開は意外というほかない。
 ハンカは、
 「あなたと別れたくない・・・あなたをこんなに傷つけてたなんて・・・
 「もうあなたに隠していることはないわ。・・・養子をとりましょう!
と述べて、アッサリと関係を修復させてしまう。
 それからしばらくして、ハンカは、母が住むポーランド有数のスキー・リゾートであるザコパネに一人でスキー旅行に出かける。
 まだ疑いを抱いているロマンは、マリウシュの家に電話すると、彼の母親らしき人物が、
 「マリウシュはいません、ザコパネに行きましたよ
と答えたため、ロマンはまたしてもハンカに裏切られたと思い込み、自暴自棄となって道路を自転車で疾走し、転落して重傷を負う。
 実際は、マリウシュはハンカの会社の同僚から彼女の行き先を聞いて、追いかけてきたのだった。
 真相を知ったロマンとハンカは和解し、抱き合うところで幕切れとなる。
 ・・・この物語から分かるように、夫と妻の関係は、生物学的な親子関係とは全く異なり、その性質上極めて不安定である。
 というのも、夫/妻というものの本質は、当事者の、その場面場面における思考に応じて、相対的に定まるものだからである。
 どういうことかと言うと、ロマン(ロメク)が当初考えていた「夫」は「性的な能力を持った男性であること」を本質に含んでいるが(それゆえ、性的に不能となったロマン(ロメク)は「夫」たる資格を欠く)、ハンカにとっての「夫」はそうではなくて、「子どもを一緒に育てるパートナーであること」がその本質である、といった具合である。 
 ・・・というわけで、私がまだ観ていない映画版「デカローグ9」には、
 「ハンカに裏切られた絶望の余り、ロマンが、自殺目的で道路を自転車で疾走し、どんづまりで下に転落するシーン
が登場すると推測する。
コメント
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