⑧ 2階に一組の男女(池貝さんとchikako takemotoさん?)と、1頭のクマが登場。
男性(池貝さん?)に対し、 chikako さん(?)とクマが並んで向かい合う構図だが、着ぐるみを脱いだクマは、何と一人の女性:田中真夏さんだった!
男性はショックを受けた様子で、田中さんに再度着ぐるみを着せると、chikako さん(?)と田中さんは手を取り合ってエレベータに向かい、1階に降りていく。
私は、このシーンは、直観的に映画「シャイニング」の”犬男”(初見ではクマにしか見えない)のパロディであると感じた。
というのも、クマのぬいぐるみを着た人間とエレベータが登場すると来れば、私くらいの年代の映画ファンであれば、「シャイニング」しか思いつかないからである(ちなみに、一般に言われている”犬男”は本当はクマではないかという問題については、
いずれにせよ、「饗宴」に出て来るのは、”犬男”ではなく”クマ女”である。
ここの解釈は非常に難しいし、一義的な解釈など存在しないのだが、「『愛』の対極にあるものを浮き彫りにする」という一連の文脈からすると、私見では、「人間が持つ”獣性”に対する根拠のない嫌悪や恐怖」を「愛」に対置させ、それを克服する試みが表現されているのかもしれない。
但し、ここは私も自信がないところである。
⑨ 2階に1組の男女、次いで今村さんが登場。
男性(池貝さん/野坂さんのどちらか不明?)はピアノに近づくが、もはや演奏しようとしない(芸術の”支配”の断念?)。
3人は上着を脱いで、テーブル、椅子、レコードプレーヤーを撤去する(「表象の世界」の消滅?)。
すると1階で唐沢さんが床のパネルを3つほど外した後、パイプ椅子にスマホを設置する。
すると、What's Up のメロディーが流れ出し、”STOP the GENOCIDE in GAZA”という文字がスクリーンに表示される中、唐沢さんが自身の足首に針で四角いタトゥーを入れると、突然、パネルの下から炎が立ち上がる。
もちろん、炎は「戦火」を表しているのだろう。
こうなるともはやダンスでも演劇でもない次元に突入するが、私見では、(歌詞と映像を手掛かりにすれば、)「"What's going on?” :『一体どうなってんの?』という抗議」及び「『解放』に向けた祈りの儀式」ではないかと思う。
⑩ ピアノ(と音響・照明機材)しかなくなった2階に、今村さんが登場。
上方を見上げ、深く息を吸うところで終幕となる。
「息を吸う」というのは、What's Up へのオマージュだろう。
And I wake up in the morning and I step outside
I take a deep breath and I get real high
And I scream from the top of my lungs
"What's going on?”
I take a deep breath and I get real high
And I scream from the top of my lungs
"What's going on?”
それで翌朝目が覚めて,ベッドから起き出して
大きく息を吸い込むと,やけに気分が良くなって
体の中から大声でこんな風に叫ぶんだ
「これって一体どうなってんの?」
大きく息を吸い込むと,やけに気分が良くなって
体の中から大声でこんな風に叫ぶんだ
「これって一体どうなってんの?」
以上のとおり、「饗宴」は、「愛」の対極にあるもの(反対物)を次々と提示していくことによって、「愛」について語ることがおよそ現在の状況にはふさわしくないということを示した。
「饗宴」は、
「私は評価の代わりに、変化を望みます」
という橋本さんの言葉のとおり、ダンスでも演劇でも、いや(評価の対象となる)芸術作品ですらなく、一つのメッセージにほかならないということが明らかになったと思う。
ということで、私自身も、「愛」について語る前に、「変化」に向けた行動を起こす必要があるわけである。
だが、言うまでもなく、非力な一市民に過ぎない私に出来ることは限られている。
ということで、まずは、ガザ人道危機緊急募金から始めようと思う。