Don't Kill the Earth

地球環境を愛する平凡な一市民が、つれづれなるままに環境問題や日常生活のあれやこれやを綴ったブログです

「愛」を語る前になすべきこと(2)

2024年07月11日 06時30分00秒 | Weblog
 こういうテーマを含んだ作品である以上、真と偽が混淆する”情報(映像)の波”の中で、ガザで現在起こっていることを正確に把握しておく必要があるだろう。
  「モーリーの考察」は、これを一読した限りでは、大きく間違っていないようにも感じるのだが、それを含めて興味深いのは、この紛争の当初、欧米の当局や知識人の多く(ユルゲン・ハーバーマスを含む)が、イスラエル擁護の姿勢を明らかにしていたことである。
 おそらく、橋本さんは、この背景にある思考を問題にしたいのではないだろうか?

 「核心をついた考察を提示しているのが、イラン出身で在米の研究者、ハミッド・ダバシです。2023年12月29日に「イスラエルの対ガザ戦争にはヨーロッパ植民地主義の歴史全体が含まれている」という論考を発表しています。その中でイスラエルがパレスチナに対して行っている占領および占領地に対する攻撃、最終的にはその抹消まで視野に入れた今回のガザ攻撃は、ヨーロッパの植民地主義の延長であり、濃縮したものだとして、その特徴を3つ挙げています。 
 1つは、「セトラー・コロニアリズム(入植者植民地主義)」です。ヨーロッパの中で宗教的なマイノリティやアウトロー的な存在の人たちが入植地に集団で入植し、自分たちのコミュニティをつくり、最終的には国をつくることです。アメリカ合衆国が典型ですが、イスラエルもその1つです。ヨーロッパの中で迫害を受けたユダヤ人たちが、セトラー・コロニアリズムを実践してパレスチナの地でイスラエルという国をつくりました。
 2つめは「マニフェスト・デスティニー(明白なる天命)」です。アメリカ合衆国の西部開拓運動において、先住民を追い出して土地を自分のものにすることが、神に与えられた使命だとして正当化されました。イスラエル建国においても、「約束の地(神に約束された土地)」という言葉を政治的に利用し、先住アラブ人を追い出して国をつくることが正当化されました。
 3つめは「すべての野蛮人を根絶やしにせよ」です。これは、1899年にイギリスで発表されたジョゼフ・コンラッドの『闇の奥』という、アフリカの奥地に渡った武器商人の小説に出てくる言葉です。「野蛮人」とは先住民のことです。18~19世紀のアフリカや南北アメリカでは、先住民の大虐殺がホロコーストにさきがけて起きていました。ダバシはこのイデオロギーも、イスラエルが対ガザ戦争で持っていると言っています。
 これらの3つは欧米至上主義の特徴です。イスラエルはそれを共有し、反復しているのです。現に昨年10月からイスラエルのネタニヤフ首相、ヘルツォーグ大統領は、「ガザ攻撃は西洋文明を守る戦争なのだから、欧米はわれわれを支持し、支援せよ」という主旨の発言を繰り返しています。

 欧米諸国によるイスラエル支持の根底には、植民地主義の思考があるという主張である。
 このハミッド・ダバシ氏の主張に基づけば、現在ガザで起きていること、あるいはイスラエル建国宣言以降起こってきたことは、かつてピューリタンたちが北アメリカ大陸で行ったこと、すなわちインディアン(今のアメリカでは「ネイティヴ・アメリカン」と呼ぶ)の虐殺と同様の事態だということになる。
 ピューリタンたちは、ネイティヴ・アメリカンを「透明化・周縁化」、要するに「いないことにした」。
 これと同様、ガザでは、そこで暮らしているいわゆる”パレスティナ人たち”が、「いないことにされようとしている」というのである。
 現在の状況について言えば、「イスラエル国民の命を守るため、テロ組織であるハマスを殲滅する」という大義名分のもとに(いないことにされた)無辜のガザ市民の命が奪われている、というのは客観的にみて動かない事実だろう。
 これは、決して他人事ではない。
 私は、この種の「いないことにする」思考に直面すると、「アメリカ国民の命を守るため、日本を早期に降伏させる」という大義名分のもとに広島と長崎に原爆が投下され、多くの市民の命が奪われた事実を思い出すのである。
 
コメント
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