サーファー院長の骨休め

“ビッグマッサータハラ”のライフスタイル

サーファー院長の骨休め 「ヘルニア闘病記 その3」

2023-09-25 | サーファー院長の骨休め by 毎湘通信
「ヘルニア闘病記 その3」                 2023.5月

 昨夜の激しい雷鳴と脚の痛みで、とうとう5日間一睡もできないまま手術当日の朝を迎えた。坐骨神経痛から逃れられる唯一の姿勢四つん這いを5日間続けてきたおかげで両膝は赤く腫れ上がった。いよいよ今日手術してもらえる。怖さより期待の方が勝っていた。「先生、ヘルニアってどんなものですか?」「エイヒレですね。」あの珍味酒のつまみに似ているという。「私のエイヒレを見せてください。」これで具体的なイメージがまとまり覚悟が決まった。覚悟と言えばもうひとつ。差し入れに忍ばせてあった私の長女の「ヘルニア闘病ノート」だ。実は、彼女も数年前私と同じ手術をしている。ノートには自分の症状やその時の気持ちが克明に書かれていた。「後に何かの役に立つから記録しておけ。」と私が勧めたものだったが、まさか自分の役に立つとは思わなかった。私と全く同じ症状。親子というのはこうも似るものなのか。親元を離れ、自分で病院を探し、決断し、不安と闘いながら、乗り越えていった。本人としては相当な覚悟だったはず。親には見せなかった辛い闘病の記録だった。治療師として助けられなかった。親としても支えてやれなかったことを反省した。闘病中何度も読み返し、参考になった。私もこれを乗り越えなければ。

 今日は回診の雰囲気がいつもと違う。飲水も禁じられ、時を待った。カーテンが開き迎えが来た。ストレッチャー上で四つん這い。ナースステーションを横目に見ながら廊下を進む。自動ドアが何枚か開くと煌々と照らされた白い部屋。医療機器が並んだその光景は、テレビで見たことがある。手術はうつ伏せの状態で行うのだが、突っ伏すなんて今の自分には不可能だ。腕から痛み止めと麻酔が注入され、知らぬうちに手術台に移された。手術は顕微鏡を見ながら、背骨にドリルで穴を開け、そこからヘルニアを摘出していく細かい作業だ。

 どのくらいの時間が経ったのだろう。麻酔で朦朧とする意識の中、耳元で誰かの声がする。主治医の先生だった。「田原さん、手術は無事に終わりましたよ。しっかりヘルニア取っておきましたからね。安心してください。約束のヘルニアです。見えますか?」まぶたが上がらなかったが、うっすらと見えたのは、プラスティック容器の透明の液体の中に浮かんだ金色のきらきらとしたきれいな繊維状の浮遊物だった。「あ~、これが俺のエイヒレですね。」と言ってまた気を失うように深い眠りに落ちていった。つづく。



 

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