「メディカルブース」
宮崎に着いたその日、練習していたら右足がつった。
一人で海の中で「痛てぇー、痛てぇー。」言って自分で揉んで引っ張って治した。
長旅の疲れか、緊張してるのか。
明日の試合に向けて、風呂でよく温まり、セルフマッサージとストレッチで就寝し、翌日には、足のことは、忘れていた。
試合に負け、カラダのケアと勉強を兼ねて、このブースに行ってみた。
医師、看護師、理学療法士が待機していて、選手のケアに当たっていた。
昨日の足のつりを中心にマッサージとストレッチを施してもらいかなり楽になり、2日連続でやってもらった。
そういう時、自分は、選手だが、マッサージ師であることも言う。
プロは、プロを見抜く。
それは、症状を訴える時に口から出る、言動から察知できる。
「なんだぁ~、それなら早く言ってくださいよ~。」
と、そういう会話に絶対なるから、自分から言うようにしている。
彼らは、サーファーの動きの特徴をよく分かっているので、疑問には、適格に答えてくれる。
全日本には、子供から高齢者まであらゆる世代のサーファーが集まる。
サーファーの進化の縮図がここにあるのだ。
サーファー独特のあの歩き方、立った姿勢。
それには、どこを緩め、どこを鍛えるのか。
今まで、自分で考えるしかなかった、ことをこういう共通の患者を扱う者同士の情報交換ができて、とても有意義だった。
ここ数年は、湘南西支部の専属マッサーとして全日本に帯同し、支部テントで選手のコンディショニングをした。
今回は、選手として行ったのだが、選手の方が大変なのが分かった。
あの酷暑の中でマッサージをやるのも大変だと思うかもしれないが、そうではない。
毎朝3:50に起床し、ストレッチで体を起こし、顔を洗って、道具の用意をし、みんなで車に乗り込み出発する。
会場に着くなり、自分のヒートが行われるポイントで波を確かめるべく、練習をする。
東に向く宮崎の海は、正面から陽が昇り、早朝から暑い。
直射日光と熱風が吹く中、一日中海で過ごす。
試合中は、状況判断が必要となるため、頭は常にクリアーにしておかなくてはならない。
この過酷な環境に耐えられる体力がないと務まらないのだ。
「第56回全日本サーフィン選手権大会」 宮崎県木崎浜海岸
全日本は、予選一回戦で敗退した。
ALIIの活躍に感化され、「自分ももう一回。」と挑戦した。
昨年12月の腰の手術からリハビリを経て、トレーニングを積み重ねた。
入院中、「これだけの痛みに耐えたのなら、今度は絶対いいことが起きる。」
5月、全日本行きの切符を掴んだ。
直後、サーファーズイヤーを患い、耳が聴こえなくなり。
それがやっと治ったと思ったら、今度は、親知らずが化膿し、抜くことになった。
「もう、何もないだろう。」と思って、朝起きるたびに痛い箇所を探す日々。
どこも痛くない状態で宮崎に行けることが目標になった。
10年ぶりに出場した全日本。
R1敗退で、合計得点1.9。
やるだけのことはやった。
自分としては、満足している。
写真は、ヒートが終わって負けて上がってきたところ。
この時、頭の中で考えているのは、「甘くない。」