「パドボーに魅せられた男」 2024.6月
19年前に鵠沼で立って漕ぐサーフィンを見て衝撃を受けた。「これだ!」すぐにパドルを買い、ビーチの端で練習した。他に誰もやっていないから自力で習得した。できなかったことができるようになっていく過程が面白かった。とにかく長くて浮力のあるボードを調達してきて試した。当時パドボーと呼んでいて、SUP(スタンドアップパドル)は後に付いた名前だ。板に立ったまま長い柄の櫂で漕いで沖に行き、立ったまま波待ちし、漕いで波に乗る。この新しい波乗りに夢中になった。
一年後鎌倉で初のスタンドアップパドルの大会があるという。会場には全国からこの新しい波乗りに魅せられたサーファーが集まった。まだ専用のパドルが出回っていない時代。皆が自作のパドルを持ち寄った。カヌー用のブレードを塩ビのパイプで繋いだものや、木製で形が長細いものから幅広いものまで様々だった。「俺はこんなふうに工夫したぜ。」と品評会のようだった。乗り方も皆個性を発揮していたが、やはり鎌倉のサーファーは上手かった。重くて長い板をパドルと足を使って巧みに操っていた。「ああやって乗るのか。」と勉強になった。大会の結果などもうどうでもよかった。目の付け所が同じだったサーファーが日本中にこんなにいたのか。それが分かったことが大きな収穫だった。
それから10年後にもこの大会に出たが、またも予選で敗退した。そして今年9年振りにまた出てみようと思う。目標に向かって努力することが好きだ。自分がアスリートであることで体を鍛え健康になることに繋がる。